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「蓮姫」
第十章 急変を駆ける

急変を駆ける 【壱】

 ←それでも、生き続けるこの世界で(説明) →そうしたら、
 ―――それからまた数週間。


 皇眞が女だと明かされて、数週間騒ぎから騒動へと変わる。


 女性進出の法律が制定され、皇眞が女だと明かされ―――皇眞に賛成する者と、皇眞を批判する者が現れた。
 賛成する者は東宮、藍園寺以外の名家。
 反対する者は、東宮の当主。
 皇眞に以前負けた貴族出の二軍の兵士たちのグループが、皇眞に批判を言ってくるようになったが、それ以外は、皇眞の権力やその名、威厳に圧倒され何もなしである。
 だが、皇眞もその情勢の変化は予測済みであったし――これはばかりは沈静化するのを待つしかなかった。

***
 
 皇眞は淘汰に用意してもらい、独自に入手した薬草で―――蓮の盛った睡眠薬の解毒剤をつくる。

 「母様にも飲ませないと」
ふたつ作ったうちのひとつは、皇眞の部屋に眠る少年に飲ませるものだ。
「―――母様……、すいません。 あとで、必ず行きますから」
呟くと、―――白吹の当主補佐として、ここのところいる甲珠から、壁に寄りかかっていたのをやめて、皇眞のところに来た。
「皇帝は仕事らしいよ。 他の特優隊の男たちを連れてこようか? ……烏摩に、藍だっけ?」
「ああ、頼む」
皇眞が頷いたのを見て、甲珠は笑んで頷くと―――数分後、暁人と朔龍を連れて皇眞の部屋へと戻ってくる。

 「あいっかわらず、お前の部屋は何もないなー」
「全くだ」
朔龍が言ったあと、暁人が頷く。
「……本当だな、俺もそう思う」
苦笑するして皇眞も頷いたあと、少年の腕の血管を捜して注射針を打ち込む。


 「その……注射針って…、毒…」
「馬鹿言うな。 毒盛るんなら、こんなややこしい真似しない。 もっと確実に殺すさ」
「っておい、そんなさらって言うなよ!」
「お前がいちいち反応しすぎなんだ」
皇眞は雷鳴と応酬しながら、その少年の首に手を当てて脈を計る。
「―――もうすぐだな」
通常の数に戻ってきたところで、皇眞は手を離してその少年を見下ろした。

 ゆっくりと目を開いたその少年に皇眞は口を開く。

 「目が覚めたか、少年」

皇眞は、眉を寄せながら目を覚ました少年を見下ろす。自分の寝台に寝たその少年は、まだ刺客の服を着ている。見つかったときの状態のままだ。
「―――…あ、んたは……」
苦しそうに眉をゆがませて、少年は呟く。
「白吹皇眞。 お前が気を失う前に出会っただろう男の息子だ」
「白吹皇眞……!? ……あんた、が……」
呆けたように見つめる少年に皇眞は悠然と問う。
 「お前に聞きたいことがある。 お前に拒否権は無い、答えろ」

 皇眞の後ろには暁人に、朔龍、皇眞が呼び寄せた甲珠がいる。
 後ろで、厳しい顔で見つめる長身の男三人に、少年は少しだけ気が引けた。

 「お前は、父に助けられた。 父はお前の中にある何かに興味を持って、俺へと引渡した。 お前に渡したピアスで、な」
「そう、だ……ピアス!!!」
「俺が受け取った。 ということは、お前はもう敵の刺客ではなく、白吹の者ということになる」
皇眞の言葉に、少年は苦い顔をした。
「―――お前の父と言ったその男は、……あんたに会えと言ってきた。 生かしてやる条件に、あんたの言うことを聞け、と」

 少年の言葉に、皇眞はふっと笑む。

 「少年、俺の言いたいことはそんなことじゃない」
皇眞が言いながら、立ち上がって少年の傍まで来て彼を見下ろす。
 「お前は何のために刺客になり、―――そして味方を裏切った?」
「俺は……、復讐のために刺客になった。 もともと、入った組織のリーダーを殺すために刺客になった。 今回の抗戦だって、俺には無意味だ。何故、白吹を殺す必要がある。俺には復讐以外のことなんてどうでもいいから」

 その言葉に、皇眞はそうか、と納得した。

 ―――父は、分かっていたのだ。

 この少年は、皇眞と似ている。
 そして、皇眞にはあって彼には足りないものもある。
 だから、蓮は皇眞に託した。 この少年を。
 
 「家族はどうした」
「全員殺された。 奴らに」
「東宮の刺客にか」
「―――!? 何でそれをっ……」
「お前はもうこっちの刺客ということになっているから、後で話してもらうぞ。 まずはお前の問題だ」
刺客のことをあとに置き、皇眞は少年を見つめる。
 「―――俺も昨日父を殺された。 仲間も部下も、家族のように思っていた使用人たちも数人殺られたな。 お前の気持ちは分かる。いや、俺よりもお前のほうが辛いかもしれないな」
皇眞は言って、ばっと顔を見上げた少年を見たままさらに言い重ねた。
 「その歳で、憎悪と恐怖を知ったか」
「―――それ、……お前の父親も言っていた」
小さな少年の呟き、皇眞は軽く笑って、「そうか」と呟く。 返答を待つように見つめると、少年は口を開いた。
「憎しみはいつもある。 恐怖は家族を殺されて、そして、お前の父親に会った時、―――今」
その言葉に、皇眞は面白いと笑う。

 
 「気に入った」

 
 それも同じこと言っていたぞ、少年は呟いた。
 

 「だが、お前は足りないものもある」

皇眞は少年に言う。
「―――?」
「お前は憎しみを知った」
「ああ」
「俺も知っている。 誰かを恨む気持ちも憎しみも、―――憎悪は俺もいつだってある」
「……」
「恐怖は無い。 とうに捨てた。 ―――だが、自分以外の恐怖があるとすれば、それは俺が護る者たちが死ぬことだ」
「―――」
「お前には足りないものがある」
もう一度皇眞は言った。
「だから何なんだ!」
「―――お前には、護りたいものがない。 大切なものがない。 自分を捨てでも、護りたいものがない」
「―――っ…!」

 図星だったのか少年は息を呑んで俯く。
 確かにそうだと、唇を噛む。

 
 「俺は憎悪があることを悪いとは思わない。 復讐に駆られることがあるのも、否定などしない。 俺にもある、それは分かる、痛いほどな。 それでも、護りたいものを見つければ、俺たちが見ている暗い世界は少しだけ明るくなるぞ」
それは自分が言えることだから、少年に言える。
 憎しみに駆られて、心を壊しかけたとしても―――皇眞はまだ自分を保っていられる。
 「憎しみも恐怖だ。憎んだら切りがない。――俺も、父を殺した相手を今この時も恨んでしまっている。それでも今すべてを擲ってでも仇を取りにはいけない。……父の残したもの、想い、護りたい家族、仲間、全てが俺を俺のままでいさせてくれている」
 そこには、月夜や、暁人や朔龍。
 甲珠に珠愛、白吹の家族のように暮らす使用人たち。 たくさんの部下。 全員がいるからだ。
 一緒に戦う者も、自分が護らないと行けてゆけない者たちも、全てが自分を支えていることを皇眞は分かっている。
 「俺には無い、そんなもの」
「見つけろ」
「無い! 俺には居場所だって無いんだ!! 家族を殺されて、親のいない子供はっ……こうやって生きるしかない! そこらへんの道でのたれ死ねって言うのかよ!!!!」
きっと、何も知らないままだったら――皇眞も、この少年のようになっていたかもしれない。

 痛いほど分かる。
 家族を失うことが、どれだけ心壊されることか。
 目の前で亡骸を見る衝撃と絶望が。
 きっと、この少年も何かを恨んでいなければ自分のいる意味すら見つからないのだろう。ましてや、年端の行かない少年だ。

 「お前にはっ……居場所があるだろ!俺はもう!……刺客じゃなくなったら、住む場所だってないし、生きてけな――!」
「だから聞け!!」
少年の言葉を遮るように声を張り上げてから、その少年を強く見つめて続けた。

 「俺がお前の面倒を見てやる。父はそう思ったからピアスをお前に渡して、お前を生かした。俺自身もお前に興味が湧いた。……だから、俺がお前を拾ってやる」

 「え……?」
簡単に言った皇眞に、少年は呆然と見上げてきた。その瞳はまだ子供だ。呆然としているその表情に皇眞はふっと緩む。――何だ、こんな顔も出来る。自分とは違う。
「お前が敵だったからなんだ。それに、お前がもし敵のままで俺を殺そうとしても、お前に俺を殺すことなんて出来ない」
くすくす笑いながら、皇眞は少年の頭に手を乗せる。
「お前、名前は何だ」
またもや少年は、似ていると思いながら皇眞を見上げる。――親子はこうも似るものなのか。
「楓有雅(ふうが)」
そんなことを思いながら、少年は素直にぽつりと名前をこぼす。
「そうか、楓有雅。 お前はまだ弱い。 確実に、東宮の刺客のリーダーは殺せないだろう。 俺とお前の仇は一緒だから、俺もお前と同じことをするだろう。――して、しまうんだろう――二人分の殺しくらい手の汚れた俺には容易いものだから、お前はしなくていい」
「俺はっ……でもそのために、刺客になって!!」
「お前は死に行くようなものだ。なら、俺が代わりにやる。お前が、奴らに命をくれてやることなんてない」
「でも……っ」
なおも反駁する少年の頭を強く撫でる。

 「これから出会う護りたいものために強くなれ。憎しみに勝つために、生きるために、強くなれ。―――お前は強くなりたいか?」

 ――憎しみに勝つために。
 自分もそうありたいと望むこと、それでも難しいことを知りながら――自分は目の前の少年に矛盾したことを告げるのだ。
 狡いと思う。
 皇眞の言葉に、少年―――楓有雅は強い意志の光を瞳に宿して頷いた。

 「―――なりたい!!! 強く……!!!」
「楓有雅、気に入った。 お前を俺の弟子にしてやる、俺のもとに住め」


 ―――父様、これでいいんだろう?



 自分に似た楓有雅を育てろと、きっと蓮は言っている。 
 父のことだから、自分のために部下が増えるとも思ったのだろうが、少なからず、こういう理由もあるはずだ。



 批判的な言葉を言おうとした暁人たちを睨むだけの視線で牽制して、皇眞は楓有雅に言う。
 ただ黙っているのは甲珠だけだ。



 「刺客なら分かるだろう、―――裏切りは許さない」
「分かってる」
「あっちはお前を殺そうとするだろうが、俺が護ってやる。 そこは心配するな」
「―――分かった……」
「白吹はもっと厳しい。 裏切ったら、容赦なく殺しにいく。 逃げても無駄だ」
「―――裏切らない。 もともと、俺はあっちを抜けるつもりだったし……」
「だが、裏切らず白吹のために賭してくれるのならば、俺はお前を死んでも護ろう。何事からも」
「――……あんたに会えと言ったあんたの父親の言葉の理由が分かった気がする」
楓有雅の言葉に、皇眞は興味深げに笑んで、「何だ?」と余裕そうに囁く。

 「あんたは人を惹きつける。ついて行きたいと思わせる。―――俺も思った……」

不満そうに少しだけ眉を寄せながら唇を尖らせてそういう楓有雅にくすりと笑む。
「不覚みたいに言うんだな」
「不覚じゃない、あんたの父親は俺がこうなることを分かってた」
楓有雅の呟きに、皇眞は笑った。
「父様には俺でも勝てない。 お前がそう言う俺が、あの人を尊敬するくらいなんだからな」
言った後、皇眞は楓有雅をまた見つめる。
「もう一度言う。―――だが、白吹の一員になったからには―――俺は死んでもお前を護る。 それだけは約束する」

 その強い言葉に、楓有雅の目からは涙がこぼれ始めた。

 「何だ、これ……俺…」
「泣け、泣いていいんだぞ、ガキなんだから」


 皇眞は笑んで、楓有雅の頭を撫でる。


 「俺はっ……ぅう」
嗚咽を漏らして泣き始めた楓有雅を見て、―――ようやく、暁人と朔龍は認めるように頷いた。 彼が裏切る可能性は低いと判断したらしい。
 もし、裏切ったとしても皇眞にはすぐ分かるし、殺されることも絶対にありえないと自負できるから心配はない。甲珠も珠愛もいる。――何より、楓有雅はもうその危険もないだろう。
 


 皇眞は思いついたように楓有雅に言う。
 「俺の弟子になるんだ。 敬語使えよ」
「―――分かった、…じゃなくて、分かりました」
なんだかこれでは過去の自分と淘汰義兄さんみたいだ、皇眞な回想しながら内心笑む。

 ―――楓有雅が持っていて、わたしが持っていないものもあるな……。

 自分はちゃんとした“感情”というものを持っていない。 今にして少しずつ理解できるようになったが、きっとまだ足りない。
 楓有雅よりも乏しいことは決定だ。
 欠けていたほうが人間らしい、月夜の言葉が皇眞にとっては勇気付けにもなっていた。
 
***

 「―――あなたのことはなんて、言えばいいんですか?」
拙いながらも敬語を使って皇眞の寝台に座った楓有雅は首をかしげてきた。
「何でもいい、気にしない」
「何でもいいってなんですか」
「お前の好きに呼べってことだ」
楓有雅の問いに――凛々しく整った笑顔が向けられる。


 皇眞の不敵で強引な雰囲気は、遺伝なのだと楓有雅が知ったとき。
 楓有雅は唸りながら、師匠になる女を見るのだった。
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~ Comment ~

ようやく・・・!(+名前の由来とか書いてみる)

お待たせしました。ようやく十章です~
刺客少年の楓有雅くん、やっと身内になりましたね。
高宮は彼が好きです。

シリアス展開になってきたので、気休めっぽく設定情報をちらつかせてみます。笑
まずは名前の由来から~

皇眞・・・この名前は作中にもあるように父の蓮が名づけてますね。
「真実の皇」です。皇されも超える強さを、みたいな願いが込められてる設定。

桜姫・・・皇眞が生まれた月が桜の咲く季節だったため。姫は、雅姫からとっています。

月夜・・・作者が大好きでずっと使っている名前(はは、すいません。ここだけ変な理由)もはや作者特権ですw
蓮姫の月夜が第一号の月夜です 笑

甲珠・珠愛・・・この双子の家は、白吹の子供に使えることが決まっていましたので。
掌中の珠(最も大切にしているもの)を守る甲(盾)になる、愛す。
という意味。

淘汰・・・刺客を生業とする時雨家ですので、障害を排除する家の当主ということで淘汰です。
ですが、本当はあまり名前に使ってはいけない熟語ですよ。
現実で子供に汰をつけたらかわいそうです、気を付けましょう 笑

暁人と朔龍はまた違った理由で名前をつけたので、
ちゃんとした由来的なものはかわいそうはことにないのです 笑

まだ設定段階のときに、ぜったいキャラの誰かにいれたい漢字として
暁と朔があったんですよね。
そして、いつくかの話を書いていたときに、「○人」という名前がいいなあとつねづね思っていたので、暁人ができました。
朔龍も同じ理由で朔龍になりましたね~。

まあ、こんなところでしょうか。
作者の暴露トークでした~。
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