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「蓮姫」
第十一章 迎えた終焉

迎えた終焉 【肆】

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 「―――さくら!」


 第一声は、月夜が可愛がるための愛称だと言っていた呼び名だった。
 月夜の姿は、皇帝の職についてる時のものそのままで、暁人も朔龍も私服に近い格好だ。 本当に緊急に駆けつけてきた、と言っているようなもので。
 月夜は凄い殺気を放って、持っていた剣をまっすぐに投げてきた。 人間業とは思えないほどの速さで、そしてその剣は寸分の狂いも無く皇眞の目の前にいる男の腕を捥ぎ攫っていった。
 「うあああ!!!」
叫んだ男はがくんと膝をついて腕を掴んで激痛に顔を歪めている。 皇眞はすかさず、クナイを逆手に持って―――その男の首へと突き刺した。

 この男が元凶だ。

 憎しみに負けそうになったが、それでは楓有雅に示しがつかない。最後にもう一度クナイを心臓部に突き刺すだけで終わりにした。
楓有雅を囲った敵が、その死んだ男の名前を叫んだり、頭と叫んで、皇眞の周りを取り囲んだ。
 今度は、頭を殺した皇眞への復讐の殺意が浮かんでいた。


***


 そして、新たに現れた月夜たちの登場に緊張を募らせて。


 だが、皇眞は堪りかねたように叫んだ。

 
 「何で来たんだっ!!」


 「お前が俺に言わずに、馬鹿な真似をするからだ」


 皇眞の言葉に、月夜は言った。
 「お前の居場所特定すんのに、時間かかったんだぜ」
「そうだよ、ちょー心配したし、来てみれば死にそうになってるし」
暁人と朔龍も言う。

 「これはっ、わたしの問題だ!!」

 叫んだ言葉に、月夜が言った。


 「違う。 俺も背負うと言った。 だから、俺の問題でもある」


 月夜のほうも苦しそうに、堪りかねたように。


 「死のうとなんてするな、生きろ。 お前がいない俺は――――、俺をこんなに駄目に、滅茶苦茶にさせておいて、……死ぬなんて許さない」


 月夜は言う。
 その言葉に、皇眞も息を詰まらせるが。
 二人の関係を暴くようなその言葉に、周りの人間も目を見開く。 ただ、分かっている顔をしているのは甲珠とそして暁人だけだった。


 「……げつ…」


 小さく声にならない声で呟く。 枯れた声ではきっと音にすらなっていない。



 「このやろ!」
皇眞の後ろにいた男が剣を振り上げる。 だが、それと同時に月夜は暁人の剣を奪い取ってそれを投げた。また、もの凄い速さでその剣は男へと突き刺さって後ろへと倒れる。


 月夜は周りの現状を確かめるように目を泳がせた。
 死にそうな怪我を負っている皇眞を囲う刺客の男たち。 楓有雅と刃を向け合っているひとりの刺客。 皇眞を人質に取られ、身動きの取れない甲珠たちを囲う刺客たち。
 そしてまた皇眞へと視線を戻す。
 月夜の中の何かが、怒りで切れそうになっていることは―――誰の目から見ても分かるものだった。


 だが、ひたすらに優しい声が響いた。
 その言葉は、こんな状況でも―――驚きを与えるものだ。


 「俺はお前を愛している。―――お前は?」


 公言するように。
 その全てと、感情を。
 今、見てもいられないような惨状で血臭の混じるこの場所ではあり得ないような声で。
 皇眞は知っていたが明確に伝えられていなかったそれを聞いて、心臓がドクンと高鳴る。 他の仲間たちも、びっくりして月夜を見たのが分かった。
 平然としているのは月夜だけで、そしてその彼は―――あの何でも言うことを聞いてしまいそうになる瞳でただひたすらに見つめてくる。

 妙にしんっと静まりかえっている気がした。
 その長いようなほんの一瞬で、月夜は確かに伝えてくる。

 今、ここで言え―――と。





 「―――……わたしもっ…」


 


 激情に駆られるように叫んでいた。
 今までこんなことなかった、頭の片隅で思ったけどもう遅い。 そんな自分も受け入れる、だってこんなになってしまうほど、もう自分の中に彼はいるのだから。



 そうして、また月夜は―――決して人前では見せないような笑みを一瞬見せた。



 「ああ、分かっている。 だから愛してくれ、これからも。 ―――お前を失ったら生きてゆけなくなる弱い俺を。 お前を助けるためなら皇なんて捨てそうになる俺を。 ………愛してくれ、」


 
 それは、誰もが赤面するくらいに甘い告白だった。


 それでも、悲しみと翳りを帯びそうな気配がして、それは現実になる。





 



 「―――――――俺が人ではなくとも」



 最後に続いたその言葉に、皇眞は疑問符を浮かべた。 きっと、他の者たちもそうだったろう。


 だが、それは次の瞬間に目に見えるものとなる。


 皇眞が見つめる月夜の瞳が―――綺麗な黄金色から、禍々しいくらいの赤黒い瞳へと澱んで変わった。 ボォッと、周りからどこからともなく黒い炎が生まれて月夜の周りを焼き尽くした。
 月夜の手からも発火して、その黒炎は禍々しさを放ちながら、月夜の背に黒炎の翼を創る。
 人間ではないそれに、誰もが言葉を発せずにいた。

 

 月夜の視線が皇眞へと向く。 ―――その紅い瞳が。

 
 愛してくれ、その言葉が悲しい色を帯びていたのはこういう訳だったのか。


 ―――ああ、月夜、平気だぞ。 わたしは―――…。
 どんなあなたでも愛せる自信があるんだ、馬鹿らしいくらいにそれはその胸の中心にあるのだから。


 月夜の翼の片方が創り上げられた時、彼はその腕を振った。 振った直後、黒炎は飛んでいって、もしくは月夜の意図するように発火して、敵の刺客を焼き尽くしていく。
 そうして、月夜は目にも止まらない―――人間ではない速さで―――瞬間移動のごとくその場から掻き消える。
 瞬時に移動したのは皇眞の前で、その間に楓有雅と刃を見えていた刺客を燃やしている。
 チリチリと燃える腕を刺客たちのほうに向けて、振った。 ばさり、ともう片方の羽が創り上げられて、彼の背に黒炎の翼ができたときには、刺客たちは悲鳴すら上げていた。
 黒炎は瞬く間に、皇眞の後ろにいた刺客たちを焼いてゆく。

 骨ひとつ残さずに。
 それが人ではないものの力なのだと、本能が直感した。
 

 そして、怖いくらいに禍々しいそして綺麗な紅い瞳は、皇眞を追い詰めたそのリーダーだった男へと向けられる。そこに存在することすら許せない、と言っているようなその瞳が細められる。
 月夜がそのまま皇眞を抱き締めた。
 何も区別がついていないような無表情だったが、皇眞だけは認識ができるらしい。
 片方の翼で皇眞を護るようにした彼は、ぎゅっと力を込めるようにしてきた。 そして、もう片方の翼で男を貫いた。そのままゆらりと黒炎はその男に燃え広がって、すぐに男は黒に飲み込まれた。
 その惨劇の最中は黒い炎に隠れたまま見ようとしても見えない。

 とうに、皇眞が抱き締めていた少年は気を失っていて、―――遠くにいた彩紅は耳を抑え目を瞑り、がくがく震えながら楓有雅にしがみ付いていた。



 ―――終わったのか……?


 「月……夜」

 誰にも聞こえないように、小さく掠れた声で囁いた。


 とたんに、揺らいでいたその瞳が元の黄金色に戻る。
 「……さくら!」
抱き締める腕に力が籠められて、小さく痛みに呻く。 だが、そんなことも気にならないくらいに月夜は焦っていたらしい。 平然を取り繕っていたのは、もしろそうしなければどうにかなっていたかもしれないからだったのだろうか。
 さっきの黒炎はまたあとで説明があるだろう。
 今は、―――仲間たちの安否だ。


 皇眞は月夜から離れて、その少年を寝かした。


 「甲珠、珠愛……。 お前たちも無事、か……」
「ああ、無事だよ」
「あなたこそ平気なの!? 皇眞!!」
甲珠と珠愛の返事、それぞれの部下の声を聞いて安堵する。 
 「誉も……」
背中を一閃されているが、意識はあるらしい。
「―――あんなの……見せ付けられたら、手、引くしかないじゃん……。ま、引かないけど……」
まだ冗談を言うのだから、とりあえずは死なないということなのだろう。 とにかくこちらも安堵だ。
「甲珠、あの少年を頼む」
皇眞は言いながら楓有雅のところへとよろよろと歩いた。 力が抜けるように膝をつく。
 「フウ、彩紅、無事か?」
楓有雅はいたるところに切り傷をつくっているが、命に別状はない。 彩紅にいたっては、最初につけられていた傷以外はほぼ無傷だ。
「―――フウ、よくやった」
皇眞は楓有雅を弱い力で撫でるとふっと笑う。

 「おねえさま!」

 彩紅は我慢を切らしたように皇眞へと抱きついてくる。
 「―――ッ…、彩紅……血で、汚れるぞ」
痛みを堪えながら皇眞は彩紅を受け止めた。
「……おねえさま、おねえさま、死なないで! ごめんね、ごめんね、おねえさま、だから死なないで」
自分が悪いとでも思ってるのだろうか、―――決してそんなことはないのに。
「彩紅は悪くない。 わたしは死なないぞ。 ―――偉かったな、ちゃんと目も閉じて耳も塞いでた」
そしてその上から楓有雅に抱き締められて隠されていたのだが。 だから、大量に人が死んでいる時も、リーダーだった男の醜い声も、黒炎も見てはいないだろう。
「うん、塞いでたよ! 偉い? あたしもいいこいいこしてっ…」
泣きながら彩紅は抱きついて、そう大声で嗚咽を漏らす。
「ああ、……偉い。 いいこだな」
彩紅に手を伸ばして、髪を柔らかく梳いた。



 「――――――――――っ…」



 皇眞はとっさに彩紅から顔を背けて口を押さえた。 こふっ…、と苦しそうに吐血をしたあと皇眞は顔を歪める。



 ―――…や、ばい。


 もう一度、血を吐いてぜえぜえと息をしながらふつり、と意識を飛ばす。



 最後に感じたのは、月夜の自分の名前を呼ぶ声と、月夜に抱きかかえられる感触だった。
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~ Comment ~

もうすぐ!(※ネタバレあり!)

すいませんでした~!
全然気づかず、タイトルとかもやっていなかったです~!

十一章で、
あれ、月夜……?なにこれ?
ってなりますね。

ですが、次のお話のフセンということで、ご了承くださいませ。

蓮姫ももう少しで終幕となります。
ついで、番外編を気が向いたら書いていく予定です~。

コメント、誤字訂正、大歓迎です(U^Å^U)

たかみや

ようやく、ですね

月夜がこんな力を持っていたとは。
やはり皇眞のような人を包み込めるのは絶対的な力を持つような人なんでしょうけど、それでも伴侶を得たら弱くなっちゃうんですね。
強くなるって何なんでしょうね。
でも無事に、とはいかなくてもやっと彩虹を取り戻せてホッ。
(気になるところを拍手のコメントに書いてます(^^ゞ)

dada様へこめ返!

おひさしぶりです。
毎回ありがとうございます。感謝です///

誤字訂正のほうも直させていただきました!
ご丁寧にいつもありがとうございます~!

高宮の話はこんな感じのものが多いのです。
お互いを想い合うからこその切なさとかシリアスが好きなのです。

こんな話を書いてほしいとかがありましたら、頑張って書きます!
是非(^ω^)ノ

謎の力も次の『それでも生き続けるこの世界で』で明かされます。

もう少し、蓮姫にお付き合いくださいませ。

高宮
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