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「蓮姫」
終章

終章

 ←蓮に誓う不変 【肆】 →蓮姫完結!

 「今日も清々しいほどのお天気ですね」

侍女になったれんかは彼女にそう言った。
「まったくね。 本当に困ってしまうわ」
彼女は憂いた表情をしながら、ふうと息を吐く。 その仕草は洗練された姫君の仕草であり、彼女を美しく見せる要因にもなってしまうものだった。
 れんかは広い部屋の衣装部屋から防寒防止の肩掛けを持ってきて、彼女に掛ける。
 「朝はまだ寒いです。 ですが、お食事会ですからあなたも行かなくてはっ! これ掛けて!」
「ええ、ありがとう。 本当に寒いわね、嫌になってしまうわ」
れんかの言葉に、心底嫌そうに呟いて彼女は立つ。
 その身体には綺麗な着物が纏われていて、気品溢れる佇まいだった。 
 彼女が足を進めるが、―――れんかは、少しだけ眉を寄せて耐えかねたように呟いた。
「い、いつまでなさってるんですか……!」


 「どうしたの、れんか。 時間が来てしまうわよ?」


 彼女は怪訝そうにそう首を傾げるが、


 「いっ、いつまで“それ”やってるつもりですかっ!!!」
「それ?」


 れんかの言葉に何が何だかわからないとでも言うように、彼女は首を傾げた。




 「おっ、桜姫様!!! か、からかうのもいい加減になさって下さいっ。 あたしっ、桜姫様にそのしゃべり方をされると違和感があってですね!!」
そのれんかの言葉に皇眞―――いや“桜姫”はくすくすと笑う。
「何でだ、―――今日は客人もいるから、少し慣れようと思っただけじゃないか」
桜姫はそう笑って、いつもの口調に戻った。
 二、三年ほど前の結婚から―――女である桜姫という名前を皇眞は明かした。 別に隠しているつもりはなかったが、桜姫という名前を明かしていなかったのも事実だった。
 そうして、月日は流れ今ではもう桜姫という名前で定着をしているのだ。
 桜姫はくすくすとまだ笑いながら、れんかを置いて部屋を出た。


 「蓮姫様!」
 「今日は軍へいらっしゃいますか!? 蓮姫様!」

 兵士が数人、桜姫のもとに集まってきた。
 もうすっかり、女の声で―――外見も髪が伸びて、綺麗な美姫(びき)へと桜姫は変わっている。 
 王妃となって月夜の政治を支え、国に立つようになっていくうちに―――やはりもともと皇眞が持っていた信念の強さと、民を護る意識と、その強い意志の―――天賦の才というものは遺憾なく発揮された。
 持ち前の雄弁さで、沈着さで、民の心をしっかりと掴んで、ほぼの臣下の心までを奪った。 初の女隊長ではあるが、桜姫が中心となってつくる軍は以前よりも大きな繁栄を齎した。
 そして、こうして桜姫は兵士に慕われている。

 
 そして、いつからか、桜姫は―――民から“蓮姫”と呼ばれるようになった。
 尊敬して、敬愛して、彼女を謳うために―――そうに。


 「今日は、行けんな。 王妃としての仕事がある。―――明日行く。 すまんな」
まだ二十前半という若さだが、その口調は抜けない。 だが、それが彼女で定着してしまっているのも確かだ。
「そうっすか……、分かりました。 みんなには伝えておきます」
「そうしてくれ」
笑顔で見送って、桜姫は先へと急ぐ。 れんかが後からぱたぱたとついて来た。
 皇族というものは話しかけられない雰囲気を持つが、それがなくて民でも気軽に話せるのが彼女というのも、民の意見であった。そう、だから、―――簡単に言ってしまえば、彼女は民に好かれる王妃になっていた。


 向かう先は、迷うことなく最愛のひとのところである。
 朝でも皇帝の職務がなくなることはなく、きっと暁人もいるだろう。

 「主上のところに?」

 桜姫が月夜のもとに嫁ぎ、王妃になってからはれんかが本家から侍女として皇宮で暮らしている。
 「月は忙しいだろうな」
桜姫は結婚をしてから、月夜のことをそう呼んでいる。
 人前では彼のことは名前で呼べないし、不便というのが理由だが。
 月夜も気に入った“月”という一単語を取って―――それだけですべての名前が当たることはないし、当たっても月夜と自分なら白を切れると話し合った上でそうなった。
 「でしょうね、最近は姿見せませんし」
「わたしには見せてるぞ、毎日」
「一緒の部屋で寝ているあなたが言ってどうするんですか! 当たり前ですよ! 大変でもあなたに会いたいんでしょう、主上は。まったく、ベタベタですよねー、はあーあ」
嫌味なことをいう侍女に桜姫は笑って、ふと首を傾げた。
 「永(えい)はどこだ?」
「どっ、どこでしょう!! 分かりませんっ、すいません、あたしの不注意でした!!!」
「ああ、平気だ。 自由にやってるんだろ。 何かに興味を持つ年頃だしな」
「と、年頃って永様は一歳ですよ!」

 れんかの言葉に、桜姫は眉をしかめた。

 永とは、桜姫と月夜の息子である。 本名は永久(とわ)というが、月夜同様本名を明かせないと言うこともあり、名乗っていいようにもうひとつの名前をつけてやることにしたのだ。 
 そうしたら不便もないし、月夜も賛成をしてくれた。

 「平気だ、どこかにいるだろ」
「あなたは放任しすぎですー!!!」
桜姫の言い分にれんかは後ろで騒ぎながらあたふたしている。 桜姫は笑って、月夜の書斎の中に入って行った。

***

 「ほら、いた」

 仕事をしている月夜の首にしがみ付いている小さな物体を指差す。
 月夜はそれを完璧無視して、おもり状態で仕事をしていた。 永はうーうーと唸りながら、月夜の首に小さな手を伸ばしてしがみ付いている。
 一歳にして、かなり月夜の顔に似てきたと思う。
 目つきの悪いのは父親譲りかとみんなに落胆されていたが、桜姫にとっては嬉しいものだ。そして、愛らしい。 愛しい子供が愛したひとに似るのはこの上ない喜びだ。

 「さくら、こいつを取ってくれ。 暁人がやっても離れん」

 月夜が言った。
 皇宮内や、知っている者たちの前ではもう愛称で呼びまくられている。 だが、誰一人として“さくら”と呼ぶ者は他にいない。
 月夜だけの呼び名だと周知の事実になっている。 

 「月に遊んでもらいたいんだ。 なあ、永」
言いながら、月夜の横へと行くと―――掠めるように唇が奪われて長い髪を撫でられた。
 子供を生むまでの月日が流れればそれに慣れるのも当然だと桜姫は思う。 柔和に笑んだその表情は昔のものとは比べものにならないくらい女のものだ。
 周りの者も、毎日のように繰り返されるその光景に慣れる者とそうでは無い者が現れている。
 「イチャついてないで、早く仕事終わらせてください」
少しだけ離れた机で、選別作業をしている暁人は慣れた人である。 きゃあ!と顔を手で押さえて恥ずかしそうにしているれんかは慣れていない……そうではない人だ。
 「――-あいさつだ」
キスのことを言っているのか、月夜は言いながらまた書類へと視線を落とす。
「頑張って」
隣で桜姫は笑んで囁いた。 すると、ふっと月夜は笑んでまた桜姫の頭を撫でる。

 「かーさま、かーさ」
母様、父様、とはしゃべれるようになってきた。 ママパパと呼ばせないのが、桜姫たちの育て方だ。
 ゆさゆさと永に揺すられて、桜姫は何だ?と問い返す。
 「えーにもして」
―――……?
 「えーにもっ」
と、月夜が代わりに言ってくる。
「俺にもキスしろ、と言いたいんだろ。 ―――口にはするなよ」
 何故分かるんだ、というか何だその最後の忠告は!
 桜姫は思うが、永の頭を撫でて額にキスを落とした。
 永にも、と言いたかったのか、と後から分かる。 何故、月夜に分かるのか不思議なのだが―――まあそれは置いておく。


 「朝から食事会だぞ、もう少しで時間」
「-――ああ、そうだな」
月夜は頭を掻きながら頷いた。
「もう行くか」
月夜は立ち上がって、疲れたのかほぐすように肩を回す。

 二人で、いや三人で先に部屋を出て行ってしまう。
 暁人はため息をついて後を追い、れんかも慌てて走るのだった。

***
 
 肩を並べて歩く月夜と桜姫の姿は、決してべたべたはしていないのに、甘い雰囲気を何故か漂わせている。
 ―――蓮姫―――
 何故、そう呼ばれるようになったか。
 “月夜”の“妻”であるから、“月夜”の最愛の“姫君”であるから。
 強いては、“柚蓮”の皇帝の“姫君”であるからだ。 だから民は、桜姫は敬愛してそう呼ぶ。 尊敬する皇帝の尊敬する姫であることを誇り、謳うために。

***

 「お前、“蓮姫”って呼ばれているよな」
月夜がそう言ってきた。
「ああ、そうだな。 まあ、民からの愛称は嬉しい」
桜姫は笑む。 すると、月夜はまたするすると優しい手つきで髪を撫でてきた。 撫でることが、彼の愛情表現の一つだと一緒にいる月日で分かるようになった。
 「民も分かったんじゃないか」
 「何を?」

 「蓮姫は……柚蓮の姫ということだろう? もしくは、柚蓮の王妃」

 「-――言われてみれば」
 月夜の言葉に桜姫は頷く。

 「“柚蓮の”皇帝は俺だ。 “俺の”姫だって、民が認めたことになるだろう」

 不敵に笑んだその表情は至って前と変わらない。
 桜姫は少し顔を赤らめて、言葉を詰まらせる。-――キスには慣れたって、慣れないことはまだまだたくさん、だ。

 「自意識過剰」

 ぽつり呟くが、彼には全く打撃がない。
 ふっと、笑って―――すぐに真剣な顔になった。

 「俺は女のお前が民に認められて嬉しいぞ。 お前が自分の性別を疎んでいたのは知っていたから」
「今は好きだぞ。 幸せだ。 月夜の隣にいれて、永にも会えて、毎日楽しいからな」
「ああ、俺も幸せだ」


 要するに、わたしは今―――皇眞から桜姫になり、幸せなのだ。

 もう、あなたに逢ったあの月下の下から、この不変は始まっていたんだろうか。

 「愛してる」
 「手放しはしない」

 そんな彼の言葉からは逃げられない。

 ――――――――――――――……わたしは、蓮に捕らわれた。






 桜姫は知らない―――後に皇帝である月夜を支えた自分が、女傑として生きる伝説になることを。
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~ Comment ~

終わっちゃったんですね

結婚して子供を産む事だけが女性の幸せだとは思いませんけど、桜姫がそれを幸せだと感じられているのが良かったです(^^)
miikaさんのイラストの月夜と桜姫の子供ならさぞかし永久くんはキレイな顔なんでしょうね(*^^*)
また新しいお話も楽しみにしてます。
お疲れさまでした(^^)/

ホームページ、リニューアルされたのもいいですね♪
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