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「蓮姫」
~蓮姫~番外編

暁人side 万年蝋の姫 ~【壱】~

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 「あ、あなたは……、烏眞の当主の―――」
ふと、どこかで聞いた声がした。 後ろを向くと、そこにはいつもは刺客の黒装束に身を包んでいる女の姿があった。確か名前は―――。
「―――お前は、珠愛だったか」
「名前覚えていただいていたんですか。 あなたは暁人様ですよね」
様、と付けられた自分の名前に眉を寄せた。
「その呼び方、いい。 呼び捨てで、めんでェからな」
「では、私も呼び捨てで構いません。 こんな時間に皇宮とは珍しいですね。 皇眞の様子を見にですか?」
「敬語も要らねェよ。 ―――そうだが、まァ……、逃げてきたともいう」
「―――逃げてきた……?」
暁人は、女に敬語で媚を売られるのが大嫌いだ。 だから敬語をむやみに使われるのは本当は嫌いである。 躊躇しないで敬語をやめた珠愛に感謝しながら、暁人は頷いた。
「イロイロ」
一言ぶすっと呟くと、珠愛も何も言わずに頷く。 察してくれるのは、良い。―――皇眞に関係する奴はみんな気が利くから不思議だ。

 「でも、逃げるついでに皇眞のお見舞いなのね……皇眞を主体にしてほしかったわ」
珠愛は冗談めかして言った。
「今ここにいるのが甲珠じゃなくて良かったわね。 甲珠だったら、本気でそう言うわよ」
そういえば、この双子は―――朔龍曰く、皇眞至上主義だったか。
「お前らは皇眞が好きなんだな」
「ええ、私と甲珠はあの子のために生きてる。 それに誇りを持ってる、それが本当に幸せ」
本当に嬉しそうに笑う珠愛に、今は眠っている皇眞のことを思う。

 どこか自分を捨てたような性格だな、と思った。 いや、あれは確実に捨てている。だから、今、数週間経ってもずっと昏睡という状態になっているのだろう。
 それでも、どこか憎めなく助けようと思ってしまう。 いつの間にか心の中にいるような、奴だった。
 あの初対面の日からもう一年が経とうとしている。 もう仲間という言葉で紹介できる仲になったが、眠っていたままじゃ紹介もくそもない。
 たくさんの人間を虜にするような何かを持っていて、天性の才能のようなそれで―――珠愛や、甲珠や、楓有雅もそうだ。 たくさんの至上主義者を作っておいて、このまま眠ったままなんて許さない。

 かつては、恋のような感情さえ抱いたが―――今は仲間だ。 仲間だが、絶対に失いたくはない。 朔龍と同様で、また皇眞も大事な自分の隊の仲間なのだから。
 「―――目を覚ました時は、さんざん罵ってやることにするか。 何で早く起きねェんだって」
「ふふ、そうね。 そうしたら、皇眞もきっと懲りるわ」
これからのことを珠愛とそう話しながら、暁人は皇眞の部屋へと向かった。

 皇宮には朔龍の姿もあって、途中で合流する。
 「まだ、目は覚まさないのか」
「全ッ然。 怜楊さんが、付いてるけど。 また着たの、珠愛ちゃん」
「ええ、まあ。 私が来ないと皇眞の身の回りの世話を誰がするんですか」
にこ、と笑うがその笑みが無理をしていることくらいわかった。 朔龍のニュアンスで言えば、珠愛はかなりの頻度で皇眞の様子を見に来ているらしい。
 珠愛は先に皇眞のところに言って、甲珠とよく似た柔和な笑みで皇眞を撫でていた。

  「朔」
「ん? 烏摩の仕事は終わったん?」
暁人の呼びかけに朔龍は逆にそう問うてくる。
「逃げてきた。 珠愛は昨日も来ていたのか」
「逃げてきた……? 珠愛ちゃん、昨日どころか毎日来てるよ。 夜帰るのも多いし、徹夜も多いみたいだねー」
心配そうに朔龍が言って、暁人も眉を寄せた。
 甲珠のほうは本家に籠りきりなのだろうか。 だとしたら、皇眞の仕事の代役をしているのが、普通なのだろう。そして珠愛が、皇眞の様子を見に来ているのだろうか。
 「珠愛、お前らも身体は大事にしろよ。 どうせ、甲珠だって忙しいんだろ」
怜楊の言葉に珠愛は笑む。
「私は平気よ。 まあ、甲珠は皇眞の仕事をできる範囲で肩代わりしているから……無理はしているけど」
「男と女じゃ身体の作りが違うってこと覚えておけよ。 だから、皇眞様だって倒れたんだ」
怜楊は言いながら皇眞を見て、点滴の調整をしている。
「……皇眞、……目を覚まして……。 早く」
囁いたその声は―――はっきりと悲しみの色を帯びさせていた。

***

 それからしばらくして、朔龍はいなくなって怜楊も帰ることとなった。 どうやら、何日か居て何日か帰るというサイクルを繰り返しているらしい。
 「では、烏摩様。 先に失礼させて頂きます。 楓有雅も、今日は帰るぞ。お前らも皇眞様につきっぱなしだろう」
怜楊の言葉に楓有雅少しの間だけ沈黙しながら、皇眞のことを見つめた。
 彼らもまた数多い皇眞至上主義のひとりである。
 「少しの間でも眠りなさい。 あなたたちまで具合が悪くなったら、皇眞だって悲しむわ。 皇眞も目覚めたときにあなたがいないと嫌よ、きっと」
その言葉に楓有雅は少しだけ顔を歪めて「はい」と不機嫌に呟く。 楓有雅はまるで野生の猫のようで、まだ皇眞にしか懐いていないというのが現状である。
 そして今、皇眞の部屋のもうひとつの寝台には、皇眞が命がけで助けた少年も眠っている。 どうやら、精神的にショックを受けたらしく、皇眞同様に昏睡のままなのだ。

 そうして、怜楊と楓有雅もいなくなった。
 事実は四人だが、二人きりとなった空間はやけに静かだった。
 本当なら、女と一緒というだけで嫌になるが―――珠愛が他の女と違うということは何となく雰囲気でもわかっているため、ひとまずは逃げるには値しないだろう。
 
 「お前は本家に帰らないか?」
「昨日帰ったばかりだもの。 まだここにいるわ」
皇眞の髪を撫でながら、珠愛は呟く。 その顔は誰にも分かるくらいに憔悴しきっていた。
 「その顔でよく平気って言えんな。 人の心配をするより、自分の心配をしたほうがいいんじゃねえのか」
呟いた暁人に珠愛はふっと笑んだ。 その笑みはどこか悲しそうでそれでいて何かを想うような表情だった。
「……私と甲珠は皇眞が好きって、言ったでしょ……? 甲珠は皇眞のことを本当にひとりの女性として好きなのはもうみんな知っていると思うけど」
くすりと兄のことを思って笑う珠愛はその後に続けた。

 「私の家は白吹の分家でもある、本家を護るために作られた家で親戚だから繋がりも深い。 私の家は家族全員が暗殺の家業をしてる。 子供の私と甲珠はそのための英才教育よ。 ―――心を殺せ、躊躇いなく人を殺せ、自分を捨てろ感情なんて仕事では要らないんだって。 小さい頃から家で勉強だったし、周りの子供たちが行く“学校”なんてところは一回も行ったことがなかった」

 語るように昔を思い出す珠愛の顔は何故か、切ない気持ちにさせる。 
 何も返答することが出来なくて―――思ったよりも深刻なその話は考えれば考えるほど嫌な深みにはまる気がした。
 黙り込んでいるとまた珠愛は喋り出す。

 「一定の感情しか表せなくなったとき―――本家に行くぞって言われたの。 お前たちが命をかけて護る存在だって。 私も甲珠もその時には周りに感情を表さないようにしていたし、それが身についてしまったから父にもあまり反応することができなかったわ。 でも、初めて本家に言って、私たちが護る存在……皇眞に会った時に、愛しいって思ったの。 護りたいって思った。 その時に、蓮様に言われた。 どれほど皇眞が運命を背負っているか、護らなければすぐに消えてしまう命だって」

 そうか。
 と、暁人は納得する。
 ずっと今まで、珠愛と甲珠は護ってきたのだ。 皇眞を。
 そして、皇眞にだけしかちゃんとした感情を伝えられない。 皇眞だけが特別なのだ。 だから、甲珠は皇眞にだけ愛情を感じたのだし、珠愛だって何より大切にしている。
 「皇眞が男として生きることになって、……私は男である皇眞の許嫁なのよ。 それで、甲珠は皇眞の女の子のほうの許嫁なんだけれど」
「甲珠は知ってる。 けど、お前も決められてたのか……?」
暁人は驚きながら言ったが、珠愛は笑った。
「双子だからなせる業だったりするわね。 皇帝と皇眞のことがなければ、こうなるつもりだったの。 ―――皇眞は男として外に立って、子供は甲珠と作るの。 そして、私が母ってことになる。 子供はどちらとも似てるし、ごまかせるし。 それで本家も皇眞も了承してた、もちろん私たちもね」

 それは俗に言う政略結婚ではないのか。
 そしてその時、ふと暁人は過去を思い返した。 皇眞が自分の家に来て、許嫁がいると言ったとき。 悲しそうな表情で顔を翳らせた。 何か辛いことがあるかのように、その一瞬は気付いていない人間のほうが多かったが。
 暁人は少しだけそれに違和感を持ったのだ。
―――こういうことだったのか。
暁人は納得しながら、珠愛は見つめた。

 「でも、私は女としての幸せを皇眞が見つけてくれてうれしいのよ。 甲珠はすっごく不満げだけど、私は嬉しいわ。 まあ、このまま皇眞と結婚しても私はよかったんだけどね」
「皇眞、女だぞ?」
「ふふ、だってあそこまで男らしい男は他にはいないと思うわよ。 一回は惚れる女性はたくさんいると思うけど」
珠愛の言葉に、一瞬止まって考える。
 皇眞の数々の所業と、実の姉のこと。
「そうだな、いるな。 男よりも男だしな」
「でしょ?」
ふふっと笑った珠愛は、感情が無いというほど無いわけではないのかもしれない、と暁人は内心思うのだった。
 「だからかな、私と甲珠は皇眞に依存しないと生きていけなくなった。 皇眞にしかちゃんとした感情を感じられないから。 皇眞の傍にいることで、私たちはやっと人間になれるから―――」
しんっとなった雰囲気に耐えかねて、暁人は呟く。

 「つーか、何故それを俺に話した?」

 その問いに、ふと珠愛は首を傾げる。

 「何でかしらね? あなただからかしら? ……皇眞をちゃんと仲間だと思ってくれてるみたいだし、女だって分かっても普通でいてくれてるから……話してみてもいいかな、と思ったのよ」

 それは、自分は―――他の人間より珠愛に近づいた、ということなんじゃないのか。
 そこで暁人は眉をひそめた。
 ―――あれ……俺、可笑しくないか……?
自分でもわからないところで、何かが変化しているような気がした。
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~ Comment ~

番外編です!

ひさしぶりに蓮姫の番外編です。

暁人が主人公のお話ですねー、お楽しみくださいませ。

女嫌いの暁人が幸せになるまでのお話です。


それと


このサイトのメインはたぶん刹那になります~
「グランディア」と「それでも、~」も随時upしていきます。
気長にお待ちくださーい(^ω^)

それでは!
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