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「蓮姫」
~蓮姫~番外編

暁人side 万年蝋の姫 ~【弐】~

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 その数日後の夜だった。
 また逃げるようにして、烏摩の本家から出てきた。
 自分の部屋に行って、どさりと寝台へ横たわる。  身を固めろ、縁談を受けろ、女嫌いで断れるほど甘くはないんだぞ、父親に散々小言を言われ、姉たちにも色々言われた。
 それで、久しぶりにブチッと何かが切れた。

 父さんに何が分かる!! 男は俺だけで、もう俺の未来なんか決まってて―――女嫌いになったのだってお前らのせいだろうが! 周りが女ばっかで、こんな環境で育ったからだろ!? それでも、文句言わずに俺はやってきてんだよ、ちゃんと当主にもなった!皇眞とだって交友を持てたし、地盤も固まってきてんだ! なのに、お前らはまた俺に言うのか! どれだけ女が嫌いかわかんねえだろ、見たくねえくらいに嫌いなんだよ! そんな女と、俺が一緒になれるわけがねェだろうが!!!

 さすがに、反抗という反抗をしたことがなかった暁人の反抗は―――父も、姉たちも面食らったようで、言い返せなかった。

 こんな家でも我慢できたのは烏摩が俺も好きだからなんだよ。 ―――はァ、駄目だわ。 今、お前らの顔見たくねえ。 しばらく帰んねえから。

 そう言って、本家を飛び出してきたのだが何故か足は皇宮へ来ていた。 もう一年近く経つと、ここは第二の家のような気さえしてくるのだ。
 しばらくもんもんとその嫌なことを考えていた。
―――家、帰りたくねえわ。 あんなに反抗しておいて、報復が待ってんぞ。 今度は父さんも参加だしな。
後のことを考えて、嫌なため息をついて、暁人は首を横に振ってその記憶を無理矢理飛ばす。

 その時。

 コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
 「誰だ」
「―――私よ……珠愛。 少しだけ匿ってくれないかしら。 家に帰るのには遅いし、今邪魔できないから」
「―――?」
暁人は疑問に思いながらも珠愛を招き入れる。
 もうそこで、普通の女とは珠愛は“違う”のだと気付きざるを得ないのだが。
 他人に、皇眞に依存しないと人間になれないと笑った珠愛。 もう、傷つくという感情すら忘れてしまったのだろうか、と不安になる自分はやっぱり可笑しくなっている。
「皇眞どうしたんだ」
「皇帝がいらっしゃってるのよ。 私、皇眞の服の調達に少し出かけてたんだけれど……」
「主上が……?」
「心配なのね、皇帝も。 皇眞が、目を覚まさないから」
珠愛は呟く。 やっぱり、その声は悲しいと泣いているような気がした。
「皇眞が心配なら、その顔どうにかしろよ。 主上だって、弱いところは皇眞にしか見せないしな。 ―――皇眞が心配なら、お前も毅然としてねえといけないだろ」
暁人がそう言うと、珠愛はきょとんとしながらもくすりと笑う。
「私にそんなこと言ってきたのは、あなたが初めてね。 ……私、やっぱり悲しい顔をしているかしら」
珠愛は暁人のほうを見て、首を傾げてきた。
「俺から見てそうなんだから、そうなんじゃねえか?」
「―――分からないのよ、私」
暁人が女嫌いだと知っているのか、扉の場所から動こうとしない珠愛はそう言って笑った。
 
 「あなたは何で、この皇宮にいるの? 本家に帰っていたんじゃないの?」

 ここのところ皇宮にいる珠愛には、自分の行動は推測できているようだ。
 暁人は自嘲気味に笑って、飲み物を取り出す。
 「―――反抗期が今きたみてぇだ。 何か飲むか」
「反抗期……? ええ、ありがとう」
疑問を持ったのはやっぱりそこらしい。 だが、一瞬立ち止まって珠愛はこっちを見てくる。
「話は続けたいんだけれど、あなた……女性が嫌いなんじゃないの……? 私、近寄ってもいいのかしら」
その質問に、暁人は黙り込む。

「知らねえけど―――――お前は平気みてェだわ」

 「その言葉、他の女の子に言ったら殺し文句ね。 じゃあ、私は皇眞の次くらいに、あなたのテリトリーに入れてもらえたってことになるのかしらね」
冗談めかしく珠愛は言って、椅子へと座った。 だが、まだ暁人とは距離を取っている。細かい配慮も欠かさないようだった。
 ―――やっぱり、他の女とは違う、みてえだな……。
再度確認した暁人は安堵を覚えて、飲み物を珠愛に渡す。
「それで、反抗期って何が起こったのかしら。 私、反抗期っていうものはしたことがないから分からないわ」
珠愛と話していると、刺客というものがどういういものなのか垣間見えてくる気がした。 感情が殺されているから、ある程度の模範的感情しか分からない、などはその例だ。
「―――婚約、見合い、結婚、身を固めろ、それしか親も姉妹(きょうだい)も言ってこねえから……嫌んなって逃げてきた。女嫌いだって知ってんのにな、……まァ、俺の度合いは、皇や朔にしか分かってねえけど」
コップをゆらゆらと揺らしながら、暁人は吐き捨てるように言った。
「女嫌いなら、お見合いも結婚も嫌でしょうね。 ……たいへんね、だってあなた当主だもの―――絶対に通らないといけない道だものね」
一瞬で当主というものを理解したのも、彼女の傍に皇眞がいたからだろう。 皇眞も時期当主として、許嫁を決められて、今まで来ているのだから。
 「女と一緒んなって子供作るんなら、死んだほうがマシだな。 それをお前に話してるっつーのも、迷惑な話だよな。 すまねェな」

 俺は何を彼女に話しているんだ。
 
 「――――――いいえ、私はいいのよ。 でも、大変ね……決まってしまうの、相手……?」
「反抗したから当分は平気だと思うけど……いつかは強制的に決まるんだろうな」

 諦めるように視線を落とす。
 俺は、今も決められた道しか―――結局歩いていないのだ。
 自由なんてなくて、家というものに縛られている。 この地位に、血に。 それでも烏摩という家を捨てることができないのは、やっぱり烏摩を護っていきたいと思う気持ちがあるからだ。
 それは、皇眞と似たようなものがあるから皇眞の気持ちも分かる。
 ―――俺は。
 いつか、大嫌いな、見ていても嫌な気分にしかならない女を前にして、「好きだ」と囁いて、この手で触れて―――子供まで作らなければいけないのか。 傍にいることすら辛いそれと、俺は。
 そんなことができるなら、今頃もう所帯を持っている気がする。

 名家や貴族の人間は結婚するのも早い、嫁ぐのも早い。
 なるべく早く身を固めて―――周囲を牽制することもしなければいけないからだ。 身を固めれば、縁談もやってはこないし、余計な話が舞い込んではこない。
 暁人の家には、今だにそれが来る。―――暁人宛てに。

 「そんなに嫌なの……?」
「―――?」
「顔に出てるわよ。 もともと怖い顔をしているのに、もっと怖くなってる。 ごめんね、……こういう時に私なんて言ったらいいか、やっぱり分からないわ」
歪んだ悲しそうな表情をした珠愛はそう囁く。
 その響きは、―――何か別のものも含んでいる気がして、暁人は眉を寄せた。

 「珠愛…?」

 「―――ん、何かしら」
「いや、なんでもねェ」
自然に出た名前に、珠愛は首を傾げて答えてくる。 もうその時には笑みが浮かんでいて、さっきの表情が何だったのかは、暁人には分からなかった。

 「そうだ、あなたは口で丸め込めないの? 皇眞はよくやってたわよ。 蓮様には無理だったけど、その他の人なら全員!」
思いついたように珠愛は言う。
「いや、……それは皇だからだろ?」
「―――ふふっ…やっぱり、そうかしら」
珠愛との話には―――他の女にない和みがあった気がした―――その感情がどこからくるものなのか、分からなかった、が。

 「―――あ…」
珠愛が声を上げて扉を見た。
「皇帝が出て行ったみたい」
何の音もしないが、珠愛には扉が閉まる音が聞こえたようだった。 聴覚や視覚が以上にいというのも、刺客として生きる人間の特徴なのだろう。  皇眞にも、目の良さで驚かされている過去がある。
「―――また、いつか避難場所にさせてもらうわ。 ありがとう、あと……女なのに、いろいろ話してもらってありがとう。なんだが、不思議な気分だわ。 あなたは、周りが思ってるほど嫌な人ではないのね。それと、……苦しんでるってことも分かったわ」

 そのあとの悲しい笑みが暁人の脳裏に深く刻まれるのである。


 そうして、珠愛との接点が無くなりはじめた。
 後になって、暁人は気付かされる。
 他の女にない和みがあった気がした―――それを何故感じたか。 ……分からないのではなく、分かろうとしなかったことを。


 暁人という人間を―――外見だけで判断しないで、有益のために近づかず、―――自分自身を見てくれていた……自分は感情がないと言う彼女に、


 惹かれていると、いうことに。
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~ Comment ~

更新停滞申し訳ありませんでした!

少し帰郷しておりまして、更新停滞しておりました~

申し訳ありません!
頑張って小説書いてゆきます。

蓮姫番外編の暁人sideですが、
お楽しみください。
拙すぎて自分でもいやんなるんですが・・・

今は、「刹那」執筆中です~。

それでは!

たかみや
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