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「蓮姫」
~蓮姫~番外編

暁人side 万年蝋の姫 ~【参】~

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 会うことができないまま、本家に戻ることになる。 あのまま、関係は少しぎこちないまま―――縁談の話は持ち出されていないから、あの反抗は少なからず効果はあったようだ。
 「―――…ッチ」
舌打ちをして、書類を決裁していた手を止める。
 それでも、良かったなんて言葉は言えない。 もう、この感情を知ってしまったからには、初めてと言えるくらいの自分から出た感情はよくよく考えると皇眞に若干感じていた感情に似ている。
 皇眞とはそれ以上の進展なんてなかったし、なくてもいいと思ったが―――珠愛とは。

 「……女々しいのは嫌いなんだよ。 行くっきゃねえか」

 散々女嫌いだと言っておいて、一緒になるのも嫌だと言っておいて―――「珠愛が好きだ」と言う俺を彼女はどう思うのだろうか。
 ―――とにかく、会うか……。
 もともと散々悩む性格ではないのは確かだ。 
 この仕事がすべて終わったたら、会いに行こう。―――暁人はそう決意すると、また筆を持った。



~side syuai~
 なんて馬鹿らしい望みを持ってしまったんだろう。
 私の世界は皇眞ひとりでよかったのに。何で私は、あのひとが気になってしまったんだろう。 惹かれてしまったんだろう。
 不思議なひとだと思った。
 感情がうまく表現できない私の悲しみを感じ取って、助言をした。 皇眞のためを思うのなら、ちゃんと休めと。皇眞が心配なら、なおさら、毅然な態度を取れ―――と。
 ―――そのとおりよね。
そう思った。
 いくら感情がないと言っても、私はまだ甲珠よりかは感情に恵まれているみたいだった。 だから、分かったのだ。 自分の中に芽生えた“それ”に。
 気付かなければよかった。
 でも、もう遅い。

 皇眞ひとりだけだった世界に入り込んできたその人は、珠愛の中で色鮮やかに存在感を放っている。
 
 「―――珠愛、何があったの。 皇眞が目覚めたのに、浮かない顔だね」
 珠が後ろからそう言ってきた。 家では、一緒にいることは少ないが、お互いに何かがあると分かってしまうのが双子の嫌なところだと思う。
 縁側に座っていた珠愛の横に甲珠は腰を下ろした。
 「皇眞が目覚めてくれたのはすごく嬉しいわよ。 なくなっていた世界が戻ってきたんだもの」
珠愛は呟いて、ぼおっと外に視線をやる。
 つい昨日皇眞は目を覚まして、すぐに珠愛と甲珠は部屋を追い出されていた。 皇眞には二人が自分のために無理をしていたことを分かり切っていたみたいで、そっけない態度にも優しさを感じた。
 だから、珠愛と甲珠は家に帰って束の間の休息というものを味わっている。
 「確かに白黒だった世界に色は戻ったね。 皇眞が息をしてくれていないと、俺は駄目だって実感したよ。 その場所が皇帝の隣だとしてもね。 俺は、皇眞にしか愛を感じられないから当然なんだろうけど」
「悲しくないの?」
「このくらいの痛みはなんともないけど……、愛しているからこその痛みなんだし」
「何か、深いことを言っているわね」
双子の兄の言葉に珠愛は呟いて、膝を抱え込んだ。
 甲珠のことは分かる。―――生まれる前からの片割れなのだから。 自分よりも、刺客という使命に追われて感情を無くしていった。 それでも、皇眞に対してはいろいろ感じて、考えることができると嬉しそうに笑った。
 だから、甲珠と皇眞がくっついて、その傍にいれれば珠愛も幸せだと思っていたが。
 だけど事態は変わって、それでも甲珠は皇眞を想って現在に至る。
 叶わない恋を甲珠はしているのだ。 ―――それでも、彼が幸せなのは珠愛も分かっている。
 「それで、何があったの? 皇宮で、でしょ」
どうやら、甲珠には敵わないみたいだ。 珠愛は少しだけ黙り込んで、そのあとしゃべりだす。
「皇眞だけの世界で良かった。 皇眞だけの世界で十分だったのに、私……好きになってしまったらしいの。 好きになっても、意味のない人を。 恋なんて知るんじゃなかった」
珠愛の呟きに、甲珠はくすりと笑った。
「協力してあげたいけど、それは俺の苦手な分野だな。 でも俺は、報われなくても皇眞を好きになってよかったと思ってるよ。 俺の場合は特殊だし、依存しないと生きてゆけないからかもしれないけどね」

 好きになってよかった、そう思える日はくるのだろうか。

 「その分だと相手は、皇眞の仲間のどちらかになるね。 ……藍と烏摩のどちらか」
「―――」
甲珠に顔を覗き込まれる。
「藍? 烏摩? ――――――烏摩だね」
何故か表情で分かってしまったらしく、甲珠はそう頷いた。

 「俺は今のままで十分幸せだから、いいけれど―――珠愛、君は幸せになっていいんだよ」

 それがどんな結果になろうとも。
 甲珠はふっと笑んで、思案顔の珠愛を見つめた。 しばらく黙ったままで隣に座る双子の存在はやっぱり自然で珠愛を落ち着かせるものだった。
 ―――幸せに……か。 私は、刺客なのに幸せになってもいいのかしら。
 
 たとえ、それを、拒んだとしても。
 拒み切れなかった皇眞のように、私も彼を求めることになるんだろうか。




 仕事が終わり、暁人は珠愛を探すために皇宮に行き、歩き回っていたが何日経っても会えなかった。 そこで初めて、珠愛は遠い存在なんだと思い知らされる。
 女は嫌いだ、なのに何故珠愛だけは―――こんなにも。
 特別、というのは恐ろしいほど自分を変えるのだ。 だって今、こんなにも自分は焦燥を抱いているのだから。
 「皇に話すわけにもいかねえしな」
 ため息交じりに呟いた。
 女嫌いと言っていたから、なんとなく他人には言いづらい。それに珠愛は皇眞の大事な部下で従兄妹であり、かつては許嫁でもあった人物だ。
 そんな人を好きなりました、なんて言えるはずも―――。

 「いや、……なりふりなんて構ってられねえのかもな」

 早くしないとどこかに行ってしまいそうな気がする。 そのなる前にこの手で。
 
 ―――捕まえてやる。

 なんとなく、皇眞を手放せないといった皇帝の気持ちが分かる気がした。

***

 「―――皇」
すぐに見つけた皇眞は―――初めて会ったときからはかなりの変貌を遂げている。 やっぱり皇眞も“女”だったんだなと思わせる容姿だ。
「ん―――、どうした、暁」
「話があんだ」
一言で簡潔に言う。 皇眞の後ろにはかなりの怖い顔で牽制してくる皇帝の姿がある。
「―――別にやましい話ではないですよ、皇帝。 だから、そんな顔で睨まないでください。 かなり迫力ありますよ」
「お前が言えたことじゃないぞ」
暁人の言葉に皇眞はくすくすと笑いながら言い返してくる。
 暁人も自分の顔つきが悪いことくらいは承知しているが、―――皇眞は知らないのだ、自分以外の者に向ける皇帝の視線がどれほどに違うか。

 ―――差別の領域だよな。

 内心呟く、声には出さず、だ。
 「―――聞きたいことがあるんだ。 少しいいか」
「……何かあるのか、わかった。 主上、行ってくる」
「ああ、手短にすませろよ」
「分かってる」
手短に、その単語がかなり強調されていた。 皇眞は苦笑したが、その言葉は多分暁人に対してである。
「なるべく、早く返します」
そう言うと、月夜は視線を机の書類へと戻した。 どうやら許可は取れたようだ。


 「で、話って何なんだ」
「珠愛に会いたい」
単刀直入に言った暁人の言葉に、さすがの皇眞も目を丸くして言葉を失くした。 だが、すぐに首を傾げて問うてくる。その表情は少しだけ固いが、興味を持っているようなものだった。
「何故……?」
「―――珠愛に会いたい、話がしてえ」
「……最近、珠愛が笑わなくなった。 お前が原因か?」
とたんに険しくなった皇眞の表情。 ―――なんだか、親に娘さんに会わせてくださいみたいな展開ではないか。
「だとしたら、尚更俺は珠愛に会わねえといけねェな。 話がある」
「―――要件を言え。 いくらお前でも、珠愛はわたしの大事な存在だ。 要件を言わないと会わせることもできんな。 ―――それに、皇宮(ここ)へ来ないのはお前に会いたくないからじゃないのか」
その厳しい言葉に、暁人は黙り込んだ。
 確かにその通りかもしれない。 だが。
 
 「好きになった」

 「―――――――――――は?」

 暁人の唐突な言葉に、皇眞はそう呟く。

 「だから、好きになったって言ってんだよ。 ―――珠愛が」
「……女、嫌いなんじゃなかったのか」
「……お前が昏睡してる時だ。 いろいろあった、んで、好きになった。 ならないと思ってた、けど、いつもとは違ェんだよ。 居場所、教えてくれ」

 告げる想いに、皇眞は面食らいながらも―――はあ、と深いため息をついた。
 緊迫した雰囲気の中で、皇眞が―――他人の真剣な気持ちが分からないはずがない。 そこに関しては信頼を置いているし、何より仲間としての関係もある。
 「分かってるよ、暁はこんなことで冗談なんか言わない。 というか、女嫌いのお前が人を好きになれたのなら、俺も嬉しいんだがな。 相手が―――珠愛っていうのは、俺も驚きだぞ」
言いながら、何かを言おうと視線を泳がす皇眞は―――やはり、珠愛の父親みたいだ。 絶対に母親ではないのは確かである。
「本当に好き、なのか」
「俺は冗談は言わないって言ったのは、お前だろ。 俺、女々しいのキライなんだよ。 だから、正面突破することにした。 だから、お前に聞くのが一番手っ取り早いだろ」
「ある意味、一番の最短ルートだがな。 ―――他の男だったら、殴って戦闘不能にさせているところだな。過去も何回かあった。 だが、お前なら……」
皇眞は呟いて、暁人を見る。

 「お前は珠愛が刺客ということは分かっているな? あいつはわたしの腹心で刺客をやめることができないということも。 感情の起伏がないということも―――まあ、わたしが言えたことでもないんだがな」
そうやって笑う皇眞は以前よりも格段に感情が生まれている。 いいことだと思う。 それを、珠愛に対してもやってやりたいという感情が芽生えているのだ。
「―――…それに、わたしに対してしか…」
「感情がないって……? お前に依存しないと生きられない、か?」
先に続けようとしたそれを阻むように、暁人は言葉を重ねた。 皇眞は目を見開いて、暁人を見つめてくる。
「―――……そうだ。 それも、お前に話していたのか……。 お前、珠愛に好かれてるな」
「―――――――――――――は? おま…、今ものすごいこと暴露してねえか……?」
驚きながら呟かれた言葉に、暁人も驚きの言葉で返す。
「……過程での話だ。 そっちの意味の好かれてるかは本人しか分からないだろ。 ―――だが、珠愛の中でお前が“特別”なのは確かだな。 刺客は普通は自分のことを自分から話すことなんてありえない。 ―――俺は、いろいろあって、普通じゃなかったがな。 それに、珠愛と甲珠はその色が強いから。 あいつらのことを全部知っているのは、……今はわたしくらいしかいないな」
その言葉に、全身の毛が逆立つような感覚がした。
―――やっぱり、俺は―――…

どうしようもなく、珠愛を捕まえたいみたいだ。

「ずっと、ずっと考えながら待っていたんだ……」

皇眞がふと呟く。
 「わたしは、珠愛と甲珠の人生を歪ませた諸悪の根源だからな……・。 あいつらの普通を奪ったのはわたしだから。 許嫁なんかにして、―――甲珠のことは一生わたしが背負うんだ。義務でも何もなくても、わたしは甲珠を家族だと思っているし、大切にする。 だけど、……珠愛はわたしが居なくても生きてゆけそうだ。 だから、暁、ありがとう。 あいつを好きなら、わたしを越してみろ」

 それが、皇眞の承諾の言葉なのだと悟る。
 そして、皇眞が思っていた思いも。 いつか、許嫁の存在がいると言ったときに翳る表情の本当の意味はここだったのかと理解する。
 皇眞も皇眞なりに、珠愛と甲珠が大切だから、―――悩んでいたのだ。 ずっとわだかまりを持っていた。大切な存在の人生を歪ませてしまうことを憂いながら。

 「ああ、―――だからまず、珠愛に会って話す。 つうか、好きだって言わねえと何も始まらねえだろ? 俺のせいで会わないなら、俺から会いに行ってやるまでだ」
言ってのけると、皇眞は嬉しそうに笑う。
「そうだな、そういう奴は俺も好きだぞ」
―――俺になったぞ、こいつ。
何かが、変わったのだと暁人に緊張が走る。

 「珠愛を幸せにできるか」
「ああ」
 「護れるか」
「ああ」
 「感情を戻してやれるか。 “俺”からの依存を無くさせられるか」
「やってみせるさ」
 「他の女に移ったら、“俺”と甲珠が黙ってないぞ」
「他の女が嫌いなことに変わりはねえよ」
 「あいつは椎名の家に居る。 甲珠も一緒だがな、行ってみろ。―――椎名の家がどこにあるかは知っているだろう、一人で行けよ」
「お前ってやっぱり意地が悪ぃな」
「俺だって珠愛を奪っていかれるのは嫌なんだよ。 わかるだろ、なんか親みたいだな」
「それ。俺も思った」
「―――じゃあ、その親に便乗する。 ―――気に食わないから一発殴らせろ」

 その次に満面の笑っていない笑みが浮かび、―――ガツンと暁人の頬に彼女の女とは思えない拳を見舞われた。

***


 赤い頬と、唇が切れたのを代償に―――暁人は椎名の家を探すために、椎名へと向かう。 
 かなり痛い頬を我慢しながら、走って皇宮を出る。

 だから聞こえるはずもなかった。




 「―――ふっ…、まだ珠愛のことが分かってないな、……お前は。 ―――珠愛が自分のことを話すこと自体、お前を好きじゃないとありえないんだよ。 一番自分を黙秘してるのは、珠愛なんだからな……」


***
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