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「グランディア国物語」
Chapter3 わたしを繋ぐ声<ルシュド編>

いとおしく、

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 朝目覚めたら、日差しがきつく目に入ってきた。
 あまりにも目が眩んでぎゅっと目を瞑る。思えば、疲れ以外でなんだか身体がだるく感じる。重たい身体は、縛られているようで動きづらい。これも、人ではなくなったという証拠なのか、思い当たる節がひとつしか見つからなかった。

 わたしも……ルシュドと〝同じ〟になっているのか……?

 【眠れたか】
隣では、朝には刺激の悪い姿をしたルシュドが座っていて―――わたしの頬の手の甲で撫でた。
「……身体が重いんだが……」
「朝は〝俺ら〟はそんなものだ。―――それ以外で?身体は?―――……平気か」

 彼が何を聞いているのか分かった。
 わたしは自分の身体を気にしてみる。―――前のように、命が危険だと知らせる頭痛もあちこちからくる激痛も、命が削れるような感覚もしない。止まった。そして、以前のような健康といえる身体になっていることに気付く。
 ―――うそ、……だ、本当か。
 わたしにとって、あの使いづらい身体が〝普通〟になっていた。だから、そう考えると……いつもよりも動きやすいのかもしれない。

 「わたしの、変化に………人や精霊使いは気付くのか?精霊は……」
【精霊はまず間違いなく気づくだろうな。今も気づいているかもしれない、そしてそれと同時にその主である精霊使いも気づくだろう】 
「……そう、か」
【………どうした?】
「……精霊使いと恋仲に落ちるのは暗黙の了解でタブーだと伝わっているんだ。フローガにも前、そのようなことを言われた」
【その理由は、必ず行きつく先が〝栄〟だからだ。―――精霊が愛する者を永遠に繋ぐ……主ではなく恋人として繋ぐ方法は、それしかないないのだから。そうして、過去幾度となく女の精霊使いは、奪われてきたんだろう。国や王が嫌がるのも道理だ】

 優しくひたすらに優しくルシュドはわたしを撫でながら、そう語った。
 愛する者を繋ぐ、―――そうではなければ主従と契約からは逃れられず、それ以前に人間と精霊は共存することも叶わない。だから、好き合った同士は、禁忌だと理解し(しり)ながらその道を進むのだろう。
 精霊界では定例かもしれないが、人間界にとっては最大の禁忌とされることに。いや、それがいくつも重なって、『禁忌』と呼ばれるものになっていったのかもしれない。
「さて、何を言われるか……想像が出来過ぎて怖い」
それでも、とわたしはルシュドを見上げる。護ってくれるんだろう?と。ルシュドはニヤリと不敵な笑みを見せてから、わたしの額に自分の額をつける。何かを確かめるように、落ち着いたように穏やかなに、絶対の自身を持って。
【ああ、護ってやる】
「………あぁ」
その言葉にわたしはふっと笑んで、ルシュドから離れて着替えを始める。

 もう、元になど戻れない。
 わたしは、〝栄〟になることを―――人ではなくなることを、自ら選んだのだ。
 死にたくないという気持ちからかもしれない、ルシュドとずっといたいという気持ちからかもしれない。それがどんなに愚かなことだったとしても、間違っているなんてことは思わない。
 思っては、いけない。

 ―――わたしがルシュドを想う気持ちも……嘘ではない、ルシュドがわたしを想ってくれる気持ちも本当だ。

 大丈夫。
 わたしたちは平気だ。
 ちゃんとセザール様とも相対せる覚悟はあるし、ルイカとも―――――――――――――戦える。

*・*・*

 報告の時間がやってきた。いつも通りに国軍の隊の長であると分かる軍服に身をつつみ、王宮へと歩いて行く。
 王間の前まで来ると、門番がわたしに向かって敬礼をする。
 「レシア様、御用ですか」
「ああ、昨日の件で王に報告が。セザール様も知っておられる、大丈夫だ」
「了解いたしました、すぐに開けますのでお下がりください」
門番の二人はそう言うと、扉を左右へと開けていく。
「―――あ、……指揮官殿……サイラス様もいらっしゃったのですか」
「………サイラス様……?」
後ろを振り抜くと、ところどころに傷の手当のあとが見られるサイラス様が立っていた。だがその顔は昨日の大怪我など片鱗も見せないくらいに平然とした顔だ。
「……大丈夫なんですか、こんなところへ、来て……」
「まあな、痛手を負ったが次からは今回のようなヘマはしない。報告だろう?……事後すると言っていたからな、来た」
「ちゃんと気をつけてください、サイラス様。あなたは仮にも指揮官なんですから」
「分かってる」
サイラス様と話しながら、わたしは王間へと入った。

 入出早々から、険しい顔のセザール様とフローガが待っている。
 ―――これは、もう、知っているな……。
 やばい、と直感的に思った。フローガは未だによくは知らないから置いておくとして、セザール様は何を言う以前に王であるし、多少なりとも恩はある人だから無意識のうちに緊張をしてしまう。
 ………どうする、か。
 考えるが、考えても答えが出ないことを知っていた。

 険しい顔をしたセザール様は不機嫌そうに口を開いた。

*・*・*

 「レシア」
「―――…」
「俺が何を言いたいかは分かるだろう?」
低い声は怒りをわたしに知らせて、自然と身が硬直する。
「お前は自分が何をしたのか分かっているのか……!」
静かに怒る、とはきっとこういうことなのだろう。目の前にいるセザール様を見つめながらわたしは他人事(ひとごと)のようにそう思った。
「そんなことよりも先に、昨日の件の話です」
「お前は……!」
何か反論しようとしたセザール様の言葉を遮るように先日のルイカの一件を話す。

「闇の精霊、ルイカ。上級精霊で、精霊界の王である闇の一族の異端者。―――残忍で、非道だがそれでいて強い。フローガの精霊のニーチェでさえ瞬殺、わたしの精霊二体もすぐに倒れました。互角かそれ以上に戦えるのは今のところわたしの精霊であるセザールしかいません。人間など、もってのほか。精霊使いでさえ危ういです。これは、国潰しにもなりかねない問題なんですよ」

「分かった、考える。―――だが、お前のことも言うぞ。……お前のしたことは、精霊使いのタブーだ。―――それに回りまわって、そのルイカと戦える戦力も失うということになるんだぞ」
きつく睨んでくるセザール様。

 何故やってしまったんだ、とその瞳が語る。
 お前にそんなことをやってほしくはなかった、この国に居てほしかったと―――言葉にならない思いが伝わってくる気がした。

 「……―――」
「……何か言え、黙っているということは認めたということなのか」
セザール様がそう言う。
「せっかく面白い奴だと思ってが、見損なったぜ、お前」
続いて隣にいたフローガがそうきつく罵った。
「おい、お前……何かしたのか」
となりにいるサイラス様が怪訝そうに心配そうに小さく聞いてくる。
「まあ、そう、ですね」
曖昧に微笑んで、サイラス様に小さく返す。
「わたしにとっても、もう覆らない大事なものを選ぶために……少し。―――誰が何と言おうと、もう、……嘘でも否定はしたくないんです」
囁いたその言葉に、サイラス様は目を見開いて押し黙った。わたしはすっと視線を逸らして、セザール様とフローガのほうに向けた。


 「あなたやフローガに何と言われようとわたしは後悔しない、ここで『してない』なんて言ったら、彼への冒涜に他ならない。だから、言う。……わたしは、セザールを好きになった。だから、〝栄〟になった。―――……もうひとではなくなるが、ルイカは倒す。この国を潰すことはさせない。だけど、わたしの人生はわたしのものだから、自由に生きたい。それが何よりのわたしの望みでもある」


 強く言った言葉は、誰が返すこともなく空気の中に紛れていった。
 セザール様は未だ険しい顔で、フローガは苛立ちを隠せない様子で、サイラス様は何のことか意味が分からないとこちらを見ていて、それぞれが違う反応を見せていた。
 「それは、認めるということなんだな」
「……はい」
セザール様の言葉にわたしはしっかりと頷いた。
「――――」
「セザール様!何故黙ってんですか!レシアは罪人になったんですよ!………セザール様!」
何も言わないセザール様にフローガは痺れを切らしたように舌打ちをして、わたしのほうを見た。それは完全に〝敵〟を見る目だ。炎が彼の手を舞って、大きくなりはじめた炎が放たれようとした。

 わたしは、腕で顔を庇って―――ルシュドの名前を呼ぶ。
 黒狼も体現して、―――もうどうなるのか、と危険信号がなったとき―――それは起こった。

*・*・*

 腕で隠した視界の向こうで、大きな力を持つ気配がざあっと一斉に現れたような感覚がした。あまりの力の大きさにぞわりと鳥肌が立って、その凄さをわたしに教える。
 誰かに肩を抱かれる。それはもう誰だかははっきり分かっていて、その温かさに心底ほっとする。
 身体を委ねるように少しだけ体重を預けて、わたしは腕を下ろすと同時に目を開けた。

 そこには恐ろしいほどに驚く光景が映っている。

 主人であるフローガの放とうとしていた炎を、その契約した精霊であるニーチェが素手で粉砕していたのだ。フローガと相対するように経ったニーチェは彼のすぐ目の前にいた。
 そして、わたしの目の前には―――わたしを庇うように、セザール様の精霊であるミスリルとレオナルドまでいる。もちろん、サラとフィリップは攻撃態勢に入っていて、―――そこに現れることのできる精霊全てがわたしを護るように立っていた。

 「何でだよ、ニーチェ!!」

フローガの怒号が響く。
【ごめんね……、でも、もう……レシアは簡単に死なせるわけにはいかない存在になったんだよ】
炎を粉砕した手を握るようにして、フローガに囁くニーチェ。
「―――は、……何で」
【〝栄〟は精霊の王の妻のこと。―――〝栄〟は精霊に数倍の力を与える。王の〝栄〟は王を強くすることのできる唯一の存在、繁栄を呼ぶ宝。これは俺たちが生まれる何百年も前から決められた理なんだよ。君たちにとって、レシアは敵になってしまっても……俺たちにとっては幸せを呼ぶ宝に彼女はなってくれたんだよ】
ニーチェが訴えるように言って、再度【ごめん】と呟いた。

 【―――――――人間の国、グランディアの国王―――、お前に、精霊の王として言おうか】

 わたしの肩を抱いて引き寄せるようにしていたルシュドがそう言う。それは、わたしの近くにいたときには感じさせないような王らしさで高貴な雰囲気を放っていた。よく見ると、その服装ですら王族のものだ。
【……こちらとしても、人間との関係を崩したくはない。過去歴史の中、幾度となく精霊使いの女は精霊に奪われてきただろう。その中でも数回、王が相手の女もいて、その度に人間と精霊は―――交渉をしてきた。……ルイカは危険だ、この国をも滅ぼすだろう。だが、狙いは俺とレシアという存在。この国にいないと分かれば、この国を襲ってくることもない。平和と引き換え、どうだ、安いだろう?】
悪役のような台詞でも、ルシュドは簡単に言うと分かっている。ルシュドは自分の望むことが叶うためならどんな手段でも取る。そしてルシュドはわたしと共にいることを望んでくれているから。
―――だから、信じられるんだろうな。
わたしを抱きしめるこの強さだけは嘘ではないから。言葉は嘘でも、態度は全てが本物だ。

 いとおしい、実感する。
 わたしを護ろうと、全力でそばに置こうとしてくれる彼が。

 【……というのは建前だ。……王の言葉としてはそう言って脅したほうがこちら側としては有利に物事が進む。―――だが、そんなことをしなくても、俺はこいつを奪う。こいつは俺のものだ。たとえ誰が相手だろうと構わん。……こいつをこの世界に引き止めて死なせるよりも生かしたいと思うのは、自然な感情だろう?……ルイカも殺す、あいつにレシアは渡さない。お前にも、病にもな】
その傲慢なほどに。だが、我儘な言葉が涙を流すくらいに嬉しい。

 好きだ、好きだ好きだ好きだ、すきだ。


 ルシュドが。


 酷く、この上なく、――――――――――――――――――好きだ。


 グランディア―――しいてはこの付近の国一番の権力者に等しい彼にでさえ啖呵を切った。
 ということは、人間の世界からということにもなる。
 そこまで言ってのける彼が、羨ましくて、そして凄いと思う。そして、そんな彼がわたしは好きだ。
 その強さが羨ましく、尊敬できて、いとおしい。

 【と、いうことだ。我が世界の王は傲慢で名高い極悪人だからな】
フィリップもその仲間だと言わんばかりに面白そうに悪どい笑みを浮かべて言う。
【………理由はなんであれ、シアを〝栄〟にしていなければもう死んでいた。〝栄〟ということは誤算だったろうが、お前らだって……レシアが死ぬことは恐れていただろうに】
サラがそう冷たく言う。サイラスは死という単語に一気に顔を険しくして、セザール様は何も言わずにいて、フローガも言葉を詰まったように顔を逸らした。
【――――――セザール、考え直して……仲良くする道だったあるはずだよ。……レシアはいい子、心がきれい。立場が変わっただけで、それを罪とするのは浅はかな考え。ごめんね、セザールが悲しくてもこれはずっとずっと続く、理。レシアのおかげで、王の力が強くなった。世界もきれい、たくさん増えたの】
【そうだ、―――〝栄〟は精霊界の存続と平和にとってもなくてはならない存在。……セザールにとっても彼女は思い入れのある存在のはずだ、それをお前は罪人にできるのか】
ミスリルが普段とは比べ物にならない大人しい口調でそうセザールへと語りかける。それに重ねるようにそれまで押し黙っていたレオナルドも言った。
【―――そういう、ことだよ。……これは契約すら超えて護らなくてはいけないことなんだ。……これが精霊で唯一逆らうことのできないことでもある。ごめんね、言うことができなくて―――…君に、レシアが〝栄〟になったと言ったところまでは、良かったんだけど……】

 自分が護るべき存在だと決めて契約をした精霊使いと、自分の種族の理と―――契約する精霊たちがその狭間で葛藤するのは十分に理解できる。どちらにつくか、決まらないようで決まっていることも。そして、ルシュドはそんな彼らの気持ちすら関係なく―――使えるものは使うということも。

 たぶん、ルーチェたちは知っているのだろう。

 【こんなところで、こいつの仲間は殺したくはない。―――異論があるなら、聞いてやる。だがその前に、自分が王として何が一番大事か考えることだな】

 ルシュドの冷たい声が響いた。
 殺したくはないと言いながらその手はいつでもここにいる全員を屠れる力を持っている。それを、〝栄〟であるわたしが与えたのだ。

 セザール様は黙っていた。
 何かを考えるように、そして、わたしに視線を向けてくる。
 「お前は、……生きることができて、幸せなのか」
唐突な質問にわたしはびっくりしながらも頷いた。
「少なくとも、過去や、死を前にして覚悟を決めて生きるよりも。―――……死が隣にある不安を抱えながらいることがない、今は……思ったことがないくらいに幸せです」
「………」
「目が覚めたとき、いつも間近で感じていた死の感覚がなくなった、わたしはきっと、大丈夫だと思いながら死を恐れていたのでしょう。それでも、今は、明日を迎えることを幸せだと、思えるんです」
「そう、か……」
わたしの言葉に小さく首肯するセザール様。

 「連れて行け―――。だが、ルイカを倒すまでは、レシアは預けるだけだ。……レシア、お前も……ちゃんと大事な人間に別れを告げてから発て」

 何かを決めたその表情はしっかりとした強い意思が込められていて。
 セザール様はわたしにそう言ってくれた。
 「セザール様ッ!?何言ってるんですか!」
「いい、黙っていろ、セザール。民との比重も考えろ……王としてはこれが最短の平和への近道だ。……そして、俺は、……レシアを罪人にするよりも、こいつにずっと幸せに生きてほしいと思っていた。……仕方がないと言えば、仕方がないのだろうな」
「セザール様……」
彼の言葉にわたしはただじんわりと心が温かくなるのを感じた。

 ―――ありがとうございます……。

 心の中で呟いて、わたしはルシュドを見上げる。ルシュドはわたしの意思が通じたようにふっと笑んで、腰に手を回す。
 【お前たちはもう戻っていい。契約した人間はお前らにとっても特別だろう。―――だが、こいつに何かあったときはすぐに帰って来い。レシアが死ぬことはあってはならない】
ルシュドがそう言って、フィリップとサラも頷く。
【分かってますよ、……いつもはあっちにいるんですし……たぶん、分かります】
ルーチェも顔を引き締めてしっかりと頷いた。
【……わかったよ、協力する。当たり前だよ】
【ああ】
ミスリルとレオナルドも頷いて、―――三人はそれぞれのところへ帰って行った。

 そしてそれに次いで―――ルシュドの腕に抱かれる。闇が取り巻くように視界を塞ごうと地面から伸び、わたしは闇に飲み込まれようとした。

 「ルーチェ、ミスリル、レオナルド!……〝栄〟がこんなこと言ったら悪いかもしれないが、……わたしのことはいい、自分の契約者を大切にして。その分、わたしは強くなる。それにルシュドを信じている。だから、……もしこの国が危険なことになって、彼らが危険な目にあったら、自分のしたいようにすればいい」

 わたしはそう言って、ちらりとセザール様とフローガを見た。
 何かを確認する前に逃れるようにルシュドのほうを向く。
 【それでこそ、お前だ】
ルシュドが不敵な笑みを浮かべ、よりいっそうわたしを抱き締める。
「行くぞ」
【ああ】
闇に視界が覆われた直後、わたしは闇に飲み込まれるようにして消えていた。

*・*・*

 ゆらりと感覚が歪む感覚がして、次に目を開けたとき――そこには美しい世界が広がっていた。辺り一面に広がる自然、建物や家という人工物がない分、木々や花々が清廉に並んでいる。
「きれい、だ……」
【――これも、お前が栄になってからだ。ルシュドの力が余裕を持てあますくらい、上がった】
【すげえよな、これでルイカとも優位に戦えるってもんだぜ】
共にこの世界に戻ってきたサラとフィリップがそう言った。
「……ルシュド……」
【何だ?】
「――別れをちゃんと言わせてくれるか?」
控えめに頼んだその願いにルシュドはゆるりと笑んで、髪を撫でてくる。
【ああ、ちゃんと。――だが、まだお前の身体はあちらに馴染めない。少しだけ、ここに留まれ。――今はルイカのことがあるから、俺の傍を離れるな。城の中だったら、そのふたりを連れてなら自由にしていい】
頭から頬に手が移動する。ルシュドは触れ合いを続けながらそう言った。
「分かった」
頷くと、ルシュドはぽんぽんと頭を叩いて――一息つく。

 【おい、シア。驚くなよ】
「え?」
【いずれ分かる。――お前はいつもやるみたいに堂々としていればいい。それと俺がいいというまでしゃべるなよ】
「――あ、ああ」
次々と言ってくる忠告にわたしが戸惑いながら頷いていると、フィリップが「うーん」と腕を組む。
【頂けないのはその服装だよなァ。軍服で、他の精霊の前歩けないぜ?】
【それもそうだな】
フィリップの言葉にサラが頷いて、少しの思案顔のあと口を開いた。
【ルシュド、シア。――しばらくここで待っていてくれ。お前の家に行って、僕とルシュドが服を取ってこよう。――ドレスアップ用の服でいいのだろう?お前の家にも少しはあるだろう】
「だが、今、わたしは……」
【分かっている。お前の養父になった師の家だろう?こいつがいるからな】
【俺は結局小間使いかよ。っち。――ま、シアのためだしな。――行ってくるわ】
サラとフィリップがそう言って、光と風を纏ってふたりとも消えていく。

 ふたりきりになって、――盗み見るようにルシュドを見やった。

 セザール様が着るような王の服装だ。軍服にも似たそれに、金の装飾。外套だって驚くほど凝っていて、外套にしていいのか迷うくらいに綺麗なものだ。手には革の手袋をはめているし、――いつもより数倍気品溢れて近寄りがたく思える。
 だが、それを――似合うと、自然に受けとめているわたしがいるのだ。

 王なのだ、と実感する。

 【どうした、シア。――さっきから、見られている気がするが】

 腕を組んで、わたしを視界に映していないのに――そう、ルシュドは言った。

 「……別に、見ていただけ、だ」
【物欲しそうにしているように見えたけどな】
「――違う!ただ、綺麗だと思っ……――!」
そう言いかけて、カマをかけられたと気づく。目の前に移動してきたルシュドから視線を逸らす。
【シア――】

 逃げようと思っても、恥ずかしいだけで。きっとわたしは、この声に囚われている。
 昔も、今も。

 ゆっくりと視線を戻す。――ふっと、勝ったといっているみたいに不敵な笑みを浮かべたルシュド。彼の指が顎に触れて、上に傾けられる。そうして、唇が重なった。

 「――ん」

 【……シア、ここはすぐに戦場になるだろう。お前を狙って、俺を狙って――ルイカは必ずやってくる】
「……ああ」
【あと一週間は余裕があると見て、大丈夫だ。……俺が力があげた手前、死にには来ない。十分に準備をしたあと、殺しにやってくるだろうな】
「わかった」
キスの間合い、物騒な言葉がつらなる。
【――は、】
「……ん、…ふ」
深い口づけの最中――呆れた声が飛んだ。

 「おい、おい。ふたりとも、――時と場所は選ぼうぜ」

 呆れたフィリップの声が聞こえる。

 「はい、シア」
サラに渡された洋服を手に取って、それを着る。黒い色は、闇を統べるルシュドに合わせてなのだろうか。全て整えたあとに、再度ルシュドたちの前へと姿を見せた。
【綺麗だ、――シア】
「……ありがとう」
【いとおしいシア、――俺の栄。――誰にも渡したくないとお前をここまで奪ってきたが、それでも俺は満足していないようだ。……それでもお前はきっと俺を好きだと言うのだろう】
語るようにルシュドがそう言う。

 罪悪感のようなものの中に悲しみや、苦しみ――けれど、それ以上の愛が伝わるから。

 「そうだ、それでも……お前がわたしを好きでいてくれることが、大切にしてくれることがわかるから――好きだと言えるんだろう」

 いとおしいと思う。
 手放しくないと、全身全霊で叫んでくれる彼が。
 この、精霊が。

 【お前を、愛している。――俺とともに、修羅の道を】
「ああ、歩もう。――人間から罵られることになろうとも」
【いとおしい、俺の栄。――シア】

 抱きしめられる。
 愛している。

 きっと、どんなことが待ちうけていようとも――このいとおしいと想う気持ちは消えることがないのだろう。
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~ Comment ~

dadaさまへ!こめ返です!

見てくれているでしょうか、見てくれていると嬉しいです。
このコメント・・・

dada様!コメントありがとうございます!
読んでいました!
やっとゆっくりすることもでき、ストックもたまってまいりました。

本格的に再始動いたします!

ぜひ、お立ち寄りの際はひとこと添えていただいたら嬉しいです。

高宮も気長に訪問をお待ちしております。
感謝です、ありがとうございます。

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