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「グランディア国物語」
Chapter3 わたしを繋ぐ声<ルシュド編>

思えるのだろう。

 ←ルシュド編おわりにつき、、、 →そうしてわたしは、




 ――数日後、安穏とはしていない不穏な空気の中――それでも、私の周りを流れる時間は緩やかだった。
 今、ルイカが何をして何を企んでいるのか分からない。ルシュドの見解では、ルシュドの攻撃でルイカは未だ戦いに出る準備が整っていないのだという。となると、準備を万全にするためにしばらくの時間を置いてこちらを襲ってくるはず、と。

 狙いは、わたしで。ルシュドの命、だ。

 戦うことは怖くないはずなのに、未知とも言える精霊との戦いだからなのか、少しだけ恐怖が襲う。


 【シア、不安か?】


 証を得て、契約をして、栄になって、心を通じ合わせたからか――彼に対して隠し事ができなくなっている。心の中、というよりも感情がつながっているようで。伝えようと思うと、感じ取ろうと思うと、――解るようだった。
 ルシュドはわたしよりもそれの扱いがうまくて、わたしの感情を読み取ってしまう。
 「ああ、……少しだけ、不安といよりも怖い、かな」
隠し事ができないと分かっているぶん、素直にルシュドに甘えられる。ルシュドはわたしのそばまで来て、頭を撫でると抱きよせてきた。
【俺はお前のおかげで力も増した、前より強くなっている。……あいつは数でおしてくるだろうが……フィリップも、サラもいる】
「ああ……そうだな」
【――お前の言っていた……家族へのあいさつ、もう行けるだろう。行くか?】

 わたしの頭に頬を乗せながら、静かに囁いてくる。

 「もう、わたしの身体は平気なのか?」
【ああ、――昼間はきついかもしれないが……、昼間のほうが会いたい奴らに合うのにも都合がいいだろう】
「わたしも辛いなら、お前も辛いだろう?」
【辛くてもお前のためなら行くさ。――フード付きの外套一式、お前のために用意させないとな】

 窓を眺めていた身体を反転させて、ルシュドのほうへと向いて彼を見上げる。

 【どうした】

 わたしの顔の横を腕が通り、わたしたちの部屋に日差しを入れていた窓をカーテンで遮りながら、ルシュドが問うてくる。
 低い声、穏やかな声。

 わたしだけに見せる低くて優しい声が、わたしの心を繋げる。
 ――命が削られ、悲しみながらもそれを誇っていたわたしを――死ぬのが怖くないと思っていたわたしを、それでも怖くなったわたしを、護って繋げ止めてくれた。
 あのままだったら、今ここにはないわたしの命。
 生きることができるということの幸せを、――わたしは今、精一杯感じている。
 与えられた幸せを、これからの幸せを、――大事にしたい。
 だからこそ、栄になってしまったのだとしても人間ではなくなってしまったとしても――それを誇るために、わたしは……かつての仲間たちにあいさつをしなければいけないだろう。


 「いいや、なん――」


 言いかけた言葉を、ぎゅっと強い戒めで遮られる。


 【何でもじゃ、ないだろう。……それだけ熱心な告白をしておいてよく「何でもない」なんて言えるな】


 掠れた熱い声が耳元に囁かれる。甘く掠れた声が、とろけるように耳の奥へと入り込んで、どくんと心臓が高鳴る。耳元に唇が触れて、首筋にキスが落ちた。
【少しは隠してくれ、俺がお前を襲いそうだ】
「お前のは冗談に聞こえない」
【――ふ】
軽い触れ合いとともに、ふたりで軽口を叩きながら笑い合う。
【すぐに用意させる。――一緒に来るか?】
「ああ」

***

 何故か久しぶりに感じてしまう人間が住んでいる世界。
 ここを別世界と感じてしまうのは、わたしの存在が変わってしまったからなんだろうか。見慣れた景色のはずなのに、見慣れている顔ぶれに会うはずなのに、緊張してしまう。
 「……ルシュド、これ、暑い……」
【脱いだら倒れるぞ。もう頭が痛い――お前は平気か】
「平気じゃない、けど」
日差しや明るいところに出るのがこれだけ辛いものなのかというのを今実体験しているところだ。頭も身体も何倍にも重くなったように感じるし、頭痛も酷い。何より気持ち悪さやだるさが襲っている。前、ルシュドが体調が悪くなって力が弱まる、と言ったのも頷ける。
 こんなままじゃ、力もろくに出せるわけない……。

 無意識のうちに身体が傾くのをとなりにいたルシュドに支えられる。

 【――大丈夫か】
【お前ら、ほら風】
サラが心配そう表情を歪めて、フィリップが指を動かしてゆるい風を与えてくれた。
「んん、ありがとう、――駄目だ、……まだ慣れない」
【――ッチ、――おい、フィリップ】
【――なんだよ?】
【こいつを抱えてろ。――風もな】
【そういうことかよ。はいはい、分かったぜ】
フィリップが頭を掻きながらわたしの肩を抱いて支える。すると、すぐにゆるやかな風が待って熱さが和らいだ気がした。
【熱いんだろ、大人しく抱えられてろって】
肩を貸してくれたフィリップがそう言って、フードの中の額に手を添えてくる。風が吹いて額が気持ちいい。
【おい、フィリップ。あまり触るんじゃないぞ】
【はいはい】
釘を刺すような不機嫌なルシュドの声にフィリップはそう笑いながら返事をするのだった。

*・*・*

 黒い外套を羽織った黒ずくめの彼と、同じく黒い外套を羽織って目深にフードを被る自分。彼はただでさえ辛い身体に鞭を打って、人にも姿がわかるようにしてくれている。となりにはサラとフィリップがいて――そのまま城の前まで来る。
「――誰だ、貴様らは!」
兵士たちはちゃんと仕事をしているようだ。知らない人物であろうルシュドたちを厳しい目で見やった。さっとフードを取って、兵士たちに微笑んでみせる。
「わたしだ。しばらく用があって、この地を離れていたが――準備が整ってな。王に会いたい。――用件を伝えてくれるか」
「レシア様でしたか、少々お待ちください」

 たぶん、だが。
 あんな唐突にわたしはこの人間の日常から去ってしまった。そうして、もう以前と同じようにもとへ戻ることはないのだと思う。人ではなくなり、彼らとの関係も大きく変わってしまった。
 もうわたしは、〝グランディア国軍の第二小隊隊長〟ではなくなってしまったのだ。

 【……悲しいか、シア】
「――何が」
【――もとの、ままではいられないことが】
「そのままだったら、わたしはもうこの世にいない。それに、わたしは〝ルシュドの栄〟のわたしを気に入っているんだぞ」

 そう、確かに。
 失ったものはある。けれど、それと同時に得たものもあるのだ。
 後悔はしない。――後悔などしたら、わたしを無条件で愛してくれた精霊たちに、申し訳ないのだから。

 「レシア様、お通しできます。――王が、王間まで来てほしいと。他の者たちも集めて待っている、と」

 「ああ、分かった」

 「この者たちは?」

 「……わたしの、旦那とその仲間だ」

 「え」

 「行くぞ」

 そう兵士に言うだけ言って微笑むと、ルシュドたちに声をかける。そのあと、城の中へと入っていった。
 【言っていいのか、あんなこと。俺は別に構わないがな】
フードを取りながら呆れたため息を零すとなりの恋人にふっと笑う。
「どうせ、わたしはもうここに長居できないからな。――あれで勝手に兵士が噂してくれるだろう」
【ほんと、良い性格してるよな】
わたしの言葉にフィリップがそう笑う。
「ずいぶんと強くなっている、わたしは、お前のおかげでな」
そう話しながら歩いていると、すぐにセザール様たちが待っている王間まで来てしまった。さあ、行こう。わたしは自分に向かって心の中にそう囁くと、開いた扉へと足を進めた。

***

 ビリビリとした緊張が肌を焼くような気がした。
 「―――っ!」
入った瞬間、照りつける光に目が眩んだ。
 わかっていた、つもりだが……。これは堪える。
王間は太陽の光を取り入れた窓の設計だ。昼間は燦々と光が輝いて、色とりどりの綺麗なステンドグラスが輝いている。横から、上から、と。以前は綺麗だったそれも、今は毒でしかないことが少しだけ悲しい。
「――ッ……ぅ」
【ばかやろ!これ被ってろ!】
【お前もだ!ルシュド!――シアを庇おうとするんじゃない!】
フィリップとサラが、わたしとルシュド以上に焦った声ですぐさまそう声を上げてくる。フィリップに光を遮るように立たれてフードをぐいっと戻されてその上からフィリップの外套をかけられた。
【俺は、まだ耐えられる。……だが、ここはまだ慣れはじめのシアには良くない】
苦虫を噛み潰したような顔でそう言ったルシュドと、ふたりの仲間になんとか笑みを浮かべた。身体中が痛くて、だるさが襲うが、倒れて意識を失うまではいかない。これも慣れだ、そう言い聞かせて――過去の仲間たちへと視線を投げた。

 彼らはそれぞれの表情をしていて。

 セザール様はなんだか辛そうな、サイラス様は思案顔で。師であるエメロットは穏やかに笑んでいて。――そして、父様は悲しそうな顔をして。

 「――久しいな、レシア」
「――ええ、お久しぶりです。セザール様。随分と身体も慣れたので、こちらにあいさつに伺ったのですが、……どうも、この部屋はわたしにはキツイようです」
「遮光できればいいが、ここではな。――俺の部屋に行くか、ついて来い」
セザール様は以前のような苦しそうな顔をすることもなく、そう微笑んでくれた。
 王間よりも狭いがそれでも広いセザール様の私室へと通される。そこでは完全にカーテンで遮光されて、部屋の電気がついて明るくなった。
 「これで大丈夫だろう」
「ありがとうございます」
礼を述べると、――しん、と沈黙に落ちてしまう。

 【シア、――話すんだろう?……もうお前を、軽々しくここへは戻してやれない。話して来い】
肩を抱かれて耳元で囁かれた。そうして、背中をとん、と押される。
 振り返った彼はいつものようなふっと笑んだ。行ってこい、とその瞳が言う。離してやれない、と正反対の言葉を言いながら。
 数歩、足を歩ませて今は仲間と言っていいのかわからなくなってしまった彼らの前に立つ。こういう気まずい雰囲気のとき、やっぱり便りになるのは今も信頼している師であるエメロットで。でも、今は養父でもあるのだったと今更ながら思った。
「レシア」
「――なんです、エメロット」
「おら、こっち来い」
にか、と少年がするような笑みでそう笑って、腕を広げてくる。
「なんですか、それ。子供じゃないんですけど」
「つっても、まだ十代だろ。いいから来い、レシア」
「――仕方ない……」
「頭くらい撫でさせろ。娘だろ」
そう笑って、がしがしと頭を撫でられる。名前を呼ばれるとどうしても逆らえないのだ。いつもと同じ笑みでそう言って、離れていた距離を感じさせない口調と言動でわたしに接してくる。すごいと思った。本当に。
「本当に、身体は大丈夫なんだな?」
「今は、なんとも。――陽に弱いのは、闇の精霊のそれになった代償です。本当に、身体は丈夫になった。前みたいに、発作で倒れることもない」
「ならいい。お前が無事に生きてんなら、たまにしか顔見せなくても許せるぜ。生きてれば、なんだってできる。会えるんだからよ」
そうして、また頭をがしがしと撫でられた。なんだか、泣きそうになって、やはり会ってあいさつをしに来て良かったと心の底から思えたのだ。背中に回った腕をまだ解かれない。
「……?――エメロット……?……早く離さないとわたしの後ろの男に腹に風穴開けられるぞ」
「俺ぁ、お前の親だぞー。父が娘を抱きしめて何が悪ィんだ」
「はー、そうですね。わかりましたよ」
そう大人しくしていると、しばらくして満足したように離れていく。やっぱりエメロットはどこまでいってもエメロットだ。

 「帰るのか、……もとの家に、レイシスやミリアと話すんだろ」
「ええ、話しに行きます。――そうして、戦いが終わったら、またあなたたちに会いに来たいと思います」
「ああ、そうしろ。……つか、俺もお前と一緒に行くぜ。またヒステリックになられても、お前が精神的に辛ェだろ?……あのふたりは俺には弱ェからなあ」
「よろしく、頼みます。エメロット」
「ああ」

 一生会えなくなるわけではない。けれど、会えるという機会が、数年後という頻度になってしまうことはわたしも、きっと彼らも知っていた。だからこその、「あいさつ」なのだろう。

 「おい、てめー」
エメロットが、後ろで姿を見せているルシュドへと視線を投げる。
「……すげー余裕そうに飄々と俺らを見てるけどよ、本当に、こいつを想ってんのか。護れんのか。……置いていったり、しねえか。……こいつの父親も母親も許されねヘマしてっけど、ちゃんと娘を愛してんだ。そいつらに、真っ向から理由を言おうっつう根性はもちろんあんだよな?」
仮だとしてもそれは正しく父親の言葉だった。
 ルシュドの空気が変わる。腕を組んで、殺気にも似た空気を放ち、首を傾ける。
 【俺たち精霊は、人間のように薄情ではない。簡単に裏切ったりしないし、嘘も言わん。――どれだけ想っていたと思ってる、どれだけ見てきたと思っている。……お前ら人間を敵に回す程度には想っているし、……護ってきたつもりだ、家族から、な】
 わたしがルシュドと出逢ったのは、まだ幼い頃だ。
 そうして、護ってきてもらった。――屋敷で暮らすことが苦しかったあの頃、逃げ場は彼のところだったのところだから。

 過去の時間には、わたしとルシュドにしかわからない時間が確かにあるのだ。
【人間風情が、と罵ってやりたいが……お前はレシアが認める男だからな。――――それに、】
視線を逸らしてそう言い、言葉を濁したルシュドがエメロットは口を開いた。
【お前は、リシャーナの契約者だ。――お前は嫌でも分かっているはずだ、間接的に、な】
疑問に思うことを――エメロットだけがはっとした表情で固まることを――ルシュドは続けて言った。
【どれだけ俺がレシアを想っているか、奪いたいか、護りたいか、それこそ命を懸けたいと思うくらいに、自分が死んでも護りたいと生きていてほしいと願うくらいに。まあ、俺は性格が悪い。――往生際も悪し、我儘だ。レシアの隣を生きるのは俺だと決めている】
「――!」
ルシュドの傲慢なようにも聞こえる告白を、わたしは喜んで聞いてしまう。けれど、それ以上に意味深なルシュドの言葉も気になるし、瞠目して黙り込んだエメロットも気になる。

 ――待てよ……?今、契約者って言った、か……?

 隣にいるエメロットが、取り繕うように笑った。

 「何もかもお見通しってわけかよ。……まァ、レシアが幸せになんならなんでもいいんだ。――家に行くか、アルザ家に」
にっと、いつもの笑みでエメロットが言った

 エメロットに何かを問うことはできなくなる。

 「はい」

 頷いて、サイラス様やセザール様の方へ視線を投げた。

 「ありがとうございました。――またすぐ来たいと思います。けれど、その次から……あまりここに来ることはできなくなるでしょう。今度、サイラス様のお家にも、ミランダ様たちにあいさつをさせてください」
「ああ、待っている。――ちゃんと、元気な姿を見せろ」
「はい」
サイラス様もそう笑って頷き返してくれる。
「王宮にも足を運ぶように。俺に姿を見せるのは、我が国の軍隊の小隊長であるお前の責務、だぞ」
「御意、了解しました」
セザール様もだ。――きっと国の王として、同じ精霊使いとして想うこともあるのだろうが、それも言わずにいてくれる。感謝してもしたりない。

 【行くのか、シア】
「ああ」
ルシュドの言葉に深く頷く。組んでいた腕を解いて、掌を差し出してくる。それに自らの手を重ねながら、返事を返す。


 こうして、彼らに別れをつけて――本題、とも言える自らの家へと足を向けた。
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