FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←思えるのだろう。 →愛しい彼の*
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【思えるのだろう。】へ  【愛しい彼の*】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「グランディア国物語」
Chapter3 わたしを繋ぐ声<ルシュド編>

そうしてわたしは、

 ←思えるのだろう。 →愛しい彼の*

 改めて、その扉の前に立つと――緊張する。どれだけこの屋敷が自分のトラウマで、それでも愛しかったところだったのだということが、重く感じられて。苦しくて、苦しすぎて、けれど、思い出も詰まった場所で。
 どういう言葉で言い表していいのか分からない。

 今はもう「訪問者」という立ち位置だから、ベルを鳴らす。
 すると、すぐに使用人が出て――そうして、その使用人が――父様が出てきた。

 「――っ……!」
父様自身が来た、ということだけでもびっくりしたのに、その後ろには母様と、ロイもいた。その驚きで一歩後退したわたしを、ルシュドが支える。肩を抱いた彼が囁いてくる。
「話すんだろう?シア」
優しく安心させるような声音に、ひとつ頷く。
「よく来た、レシア」
先に言葉を投げてくれた父様に感謝しながら、もう一度頷いた。
「はい、……ご無沙汰しております、父様」
「とりあえず、立ち話はいけない。……中に入りなさい。……エメロットも、そして今回は君たちも顔を見せてくれているようだしな」
父様が、ルシュドたちやエメロットを見ながら後に続けて踵を返す。
「……入りなさい」
母様が小さく言うのを、ぎこちない笑みを浮かべて首肯するしかない自分が情けないと思いながらも、黙ることしかできなかった。

 屋敷の中に入ると、ロイが嬉々とした表情で飛びついてくる。

 「……姉様!……姉様、なんでお嫁に行っちゃうの。違う家なんかに行っちゃったの。……僕、姉様のこと護るし、一緒にいるし、……もっと稽古をつけてもらいたいよ……!」
「ロイ、すまないな。――だが、お前はこの家を継ぐ男だ。……強くなって、父様と母様とこの家を護れるくらいにならないと、……わたしは笑顔で帰って来られないな。……わたしがいなくても、父様やわたしの養父のエメロットがお前を鍛えてくれるぞ」
「は――!?」
「本当ですか!?」
にっこりとエメロットに向けて微笑む。
「ね?……エメロット」
「てめ、おい……何こじつけようとしてんだよ。……ったく、お前の頼みならやってやるけどよ……」
ため息をついてエメロットは頭を掻く。
「だそうだ、ロイ。わたしは、エメロットに剣を教わったんだ。お前もきっと強くなれるぞ」
「姉様が……っ?本当ですか!僕強くなれるんだ!やったっ!」
「ああ」
「そうしたら、姉様、また手合せしてくれますかっ?」
「ああ、いつか。してやろう」

 無邪気にそう言うロイの言葉を笑顔で返事をするその姿はきっと、まさしく姉と弟の図なはずだ。けれど、その会話の内容の最後が叶うかどうかは数年後の話。
 それを、誰もが知りながらみんな言わない。

 「はやく行こうぜ。――レイのところ」
「はい」

 立ち上がると、ロイがわたしの隣にいるルシュドを睨んだ。

 「お前が姉様の……!結婚相手か!」
【……まぁ、そうなるな】

 精霊と契約して、栄になり、花嫁のようなかたちで精霊の世界に連れ去られる少女にも、「結婚相手」という言葉を当てはめていいかはわからないが。なにしろ、結婚式などのそういう類をしていないのだ。

 「む、むかつく……!」
【――】
「こら、ロイ。どこでそういう言葉を覚えたんだ?普段は使ってもいいが、こういう時はやめなさいと言っているだろう」
「……はい……」
「おい、普段はいいのかよ」
後ろでエメロットがつっこむのを笑顔で流した。

*・*・*

 空気が凍るような気がするのは気のせいだろうか。やっぱり、二人の前に立つと何を言葉にしていいのか戸惑って、どうしようもない。視線を逸らすと、後ろのルシュドが見えない角度で手に触れてきた。
 そんな些細な優しさが、気づかいが、嬉しくて――胸が痛くなる。

 ゆっくりと息を吐いて、まっすぐ父様を見る。

 「本当に、久しぶりだな。――座りなさい」
「……はい」
「全員座れるだろう。エメロットも座れ」
「おう、ほら、レシア」
エメロットに導かれるまま、エメロットが座った横にわたしが座ってそのさらに隣にルシュドが座った。
「後ろのふたりはいいのだろうか」
【部下だ、心配ない】
【俺たちのことは気になさらず。ついて来たくて、ふたりの後ろに従っただけですから】
ルシュドが簡潔にそう言うと、そのあとにサラが微笑みを浮かべて突き放すように口を開いた。
「そう、ですか……」
「父様、話しましょう。……彼らのことは気にしないでください、本当に」
精霊たちは未だこの屋敷や家族のことをあまりよく思っていないことは知っている。だからこそ、間に入って話を変える。

 「……」
やっぱり、再度沈黙が降りてしまう。
「……レシア、元気にやっているか。もう、身体の心配はないのか」
「はい。……彼のおかげで、生きていけます。もう、死ぬ心配はないですよ。安心、……?してください」
「ああ、安心だ。どこかで生きていてくれるなら、それほど幸せなことはない。……もう、子供が死ぬところなど、見たくはないから、な……」
わたしの言葉に、父様は深く頷いた。
「もうエメロットのところに、あなたはいない、のよね?」
「はい、……今は、彼のところに」
「――レシア。ことの顛末や、お前のやってきたことを、ミレイアに話した。お前のことも、お前が精霊使いだということも」
「そう、ですか。――今日は、あいさつに来ました。今までありがとうございました、と伝えに。頻繁には帰って来れなくなります」
ここに顔を見せることは、ないかもしれない、けれど。

 ゆっくりと頭を下げる。
 何はともあれ、――今まで暮らしてこれたのは、父様と母様のおかげであることは確かなのだから。

 「わたしは姉様と会えた。エメロットとも会えた。剣を教えてもらって、第二小隊の隊長にも任命された。たくさんのひとと出逢えた。何より、精霊たちに出会うことができた。……充実していましたよ、本当に。レシア・アルザとしての人生は」

 もうわたしは人間ではなくなった。立場も丸ごと変わってしまった。
 けれど、不幸だと思わない。

 「そうか、なら、良かった」
父様が笑みを浮かべる。
「……レイ、ミレイア。もうちゃんと考えられんだろ。お前らは親で、ちゃんと子供を愛してるはずだ。お前らはさ、特別な育ちだからちっとだけ感覚がずれてるだけで、間違っただけで、愛してるだろう?レシアを。――俺はずっとついててやれねェし、レシアがお前らより俺を慕っちまったのはお前らが甘かったんだぜ?……でも、今日で、終わりにしようと思ってるんだろ」
エメロットが大人びた笑みを零して、両親を諭す。

 彼らの過去に一体何があったのだ、と思うけれどきっと教えてはくれないのだろう。
 長い期間の絆を思わせる。あのお嬢様気質の母様でさえ、エメロットの話は黙って素直に聞いているのだから。父様もそれを神妙に頷いている。

 「レシア、今まですまなかった。たまには顔を見せてくれると嬉しい」
「レシア、……ごめんなさい。……ごめん、なさい」

 ふたりが頭を下げている光景をただ、唖然と見ているしかなかった。無意識に伝った涙を、隣のルシュドがゆっくりと拭った。

 わたしは、邪魔だったわけではないのだと。ちゃんと、愛されていたのだと実感できた気がして。嬉しかった。

 「――レシア、俺からもすまなかったな。今度からはちゃんと、こいつらとも向き合ってやってくれ。……あ、もちろん、養父の俺にもな」
「エメロット……」
ぐりぐりと頭を掻き廻すように撫でられる。
「ありがとうございます、……本当に」

 今までの積年のわだかまりが徐々に消えていくような気がする。
 あいさつをしに来て、本当に良かった。本当に。

*・*・*

 「精霊の仕組みは分からないが、君が――レシアの、夫という立場で間違いはないのか」
【そうなるな】
「君のことを、聞いていいか。素性の知らん男に、娘はやれない」

 けれどもう決まってしまっていることは、暗黙の了解なのだろう。けれど、ルシュドのことを知らなければいけないというのは一理ある。
 ルシュドもそう思ったのか逡巡したように口を開く。

【……精霊界の王】
「「――!」」
ルシュドの言葉に、わたしとサラ、フィリップ以外が瞠目する。
【闇の精霊でもある。――精霊界は人間界ほど安定はしていないのが現状、今も少々面倒事があるがレシアに被害を与えるようなことは絶対にさせない】
「……」
【それとひとつ、お前らに会ったら言いたいことがあったんだ。……こいつが泣いたことはなかっただろう、文句を言ったこともなかったはずだ。お前たちに何かを話すということも。子供のときからその相手が誰だったか教えてやろうか】
妖艶な微笑みは、全てを敵に回すことを厭わないような微笑みで。教えてやろうか、と言っているのにその先は言わない。その微笑みが答えだとでも言うように。
【だから俺は、お前たちに言うこともないしあいさつすることもない。護ってきたのは俺だと思っているし、それを変えるつもりはない】
「ルシュド……もういい」
【そうだな、俺が口を開いたら――人間の悪口しか言えない】

 ゆっくりとルシュドは立ち上がる。

 【サラ、フィリップ、お前はここへ残れ。俺は外で待ってる】
【ひとりで外に出るのは危ない。僕も行く】
ルシュドの言葉に、サラはすぐさまそう言って後について行く。

 「……大丈夫なのか……?」
「ええ、ここにいたらきっと不快な思いをさせると思ってのことでしょう。すいませんでした、……あのひとは悪くないんです」
「あ……まったくそのとおり過ぎて何も言えんと思っていたところだ。……ともかく、お前が嫌だと感じていたこの場所に、俺たちに会いに来てくれて嬉しい。……今日は、泊まっていくのか」
「ああ、いえ、申し訳ありません。わたしはあまり長い間この人間の世界にいることができないのです。もって数時間なので、すぐに帰らないといけない」
「――そう、なのか」
「あいさつができて良かったです。少なくとも、わたしがあなたたちのいらない存在ではなかったのだということが分かって。愛されていたのだと分かって、嬉しいです。歩み寄れなかった……歩み寄らなかったわたしも悪い。……申し訳ありませんでした、……これからもよろしくお願いします」
立ち上がってふたりに頭を下げる。
「謝らなくていい。――今度はいつ、帰って来るんだ?」
父様の言葉に、一拍の間を置いた後、口を開いた。

 「また、いずれ」

  いつになるかわからない。きっと、近いうちにある男との戦いが終わったら顔を見せに来るだろうがそれもきっと一瞬。そうして、その次からは極端に頻度が減る。――それを彼らにも、告げることはできなかった。

 わたしの微笑みを、目を見開いたまま父様が見つめていて。

 「………そうか」

 何かを理解したように、小さくそう頷かれた。

 【もう外へ出るか】
「ああ、出る」
後ろで立っていたフィリップの言葉にわたしは頷いて立ち上がる。ソファから腰を上げると、すぐさまフィリップの外套がかけられた。
【極力、陽には当たるなよ】
「分かってる」
先に外に出るように、とフィリップに促され廊下へと出た。
 「さて、俺も帰るわ。――お前らも成長して良かったぜ」
「お前は初めて会ったころから本当に変わらんな」
「そうね、……エメはエメのままだわ。私たちには本当に厳しいんだから」
「そりゃ、お前らにこう言えんのは俺だけだからだろ」
そんな大人たちの会話が聞こえ、エメロットたちも廊下へと出てくる。
【あいつらは知り合いなのか】
「たぶんな。わたしもあまり詳しいことは知らない。きっと、知らなくていいことなんだろう。……行くぞ、ルシュはどこにいる?」
【玄関だろうな】
フィリップとともにわたしは歩き出して、玄関へと向かう。

 【話は終わったか?】
「ああ、終わったよ。もう行こう、ルシュド」
【他にあいさつをしたい奴は?】
「ランザや、……隊の者たちにもしたかったけれど、そろそろわたしが持たない。……あの男との戦いに勝ってからでも、きっと遅くはないよな」
そう微笑みを投げると、ルシュドがふっと笑んだ。
【……そうだな、】
そう頷いたルシュドが緩慢に腰を屈める。目を細めたルシュドと唇が重なった。
「……不意打ちは、やめろ」
【不意打ちじゃない。………お前が可愛いことを言うからだろう】
「どこが!……ただ倒してからだと言っただけなのに」
【それは俺が勝つ、ということをと疑っていないんだろう】

 ルシュドが何が嬉しかったのかが分かった。驚きながらも微笑む。

 「待たせたな」
エメロットの声が聞こえて、返事をした後、――わたしはルシュドたちと共に陽が照りつける外へと出るのだった。
関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
総もくじ 3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【思えるのだろう。】へ  【愛しい彼の*】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【思えるのだろう。】へ
  • 【愛しい彼の*】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。