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「グランディア国物語」
If Story1 わたしの君にうたう歌<エメロット編>

懸想

 ←Scene2 「休めるときに休め」 →始り



 夢の中のわたしが前世(まえ)のわたしだと理解してから、わたしはどちらがどちらなのかわからなくなった。

 わたしはレシアだったし、リシャーナだった。
 けれど、この胸に残る言葉にできない感情は前世(まえ)から持っていたものだった。

 それでも、わたしはわたし。


 自分でもわからないところで、わたしが考えていたことは前世(まえ)からの延長だった。


 「―――い!おい!」
「――ん?あ、あぁ、ランザうるさい」
「はぁ、何だよ、何回も呼んでるのにお前が返事しねぇからだろうが」
 この男は同じ隊に所属する副隊長でもあり、戦闘でバディを組む男でもある。そうして、わたしのおじでもある男だ。
「どうした?――最近、――あ、あぁ」
言いかけたところで納得したようにランザは言葉を切った。
「そんで、どうなった?」
「今日なんじゃないか、婚約」
「すごい他人事だな、オイ」
呆れたように、となりでため息をつくランザを横目で見やってため息をついた。

 サイラス様――彼は姉を好きだったはずだ。
 姉のために毎日通い、話をして、帰っていく。
 あの日のわたしはまだ前世を思い出していた頃、――幼い恋だった。


 彼のことは好きなのかもしれない。


 彼に会うと苦しくなるのは確かだ。――これは、レシアとしての感情か。


 「――お、……レシア。今日お前、婚約の話し合いがあんじゃねえのかよ」


 前から現れた人物に、びくりとして目を見開く。
 「………え、エメロット隊長……?おい、レシア、知り合いかよ……?え?」
「……知り合いだ、小さい、頃からの」
「自分の師に対してなんだその距離ある発言はよ!」
ぐりぐりと髪を撫でられる。俯いて、黙ったまま、されるがままにされる。
「師……?お前そんなこと一度も言ってなかったじゃねえか」
「………言う必要ないだろう」
すげなく返すと、エメロットのほうを見やる。


 「婚約の話は昼過ぎからです。そこからは申し訳ないですが、早退させて頂きます」


 彼の名はエメロット・ファミリア。
 軍の小隊では一番力があり、権力が上とされている第一小隊の隊長を任命されている。自他ともに認める軍人である。地位で言ったら、軍の中ではサイラス様の次に高いと言えるだろう。古株ぞろいの第一小隊を率いており、そうしてわたしの剣の師でもあった。


 そうして。


 「………そうか、」
それだけ言って、他は何も言わずに優しく髪を撫でられる。




 ぎしり、と心臓が痛くなる。



 婚約などしたくない、と言ったら目の前のひとはどうにかしてくれるのだろうか。

 「すまねえな、これから仕事あるんだ」
「なら早く行ってください。こんなところで油売ってる場合じゃないでしょう」
「お前と話すのは余計なことじゃねえだろう」
「―――あなたのことだからどうせ、部下を待たせているんでしょう」
「っやべ、そうだったわ。……じゃあな、―――――あまり、無理すんなよ」

 くしゃり、と再度髪を撫でたエメロットの手が離れた。



 ―――っ。


 ぎしり、とまた胸が軋む。



 エメロットの走る後ろ姿を見送った。
 大人になっても、彼はときどき大雑把だ。貫録だけは増したのに、時間にルーズだったり、それなのに些細なことに気づく。
 だからこそ、誰からも頼りにされるのだろう。


 無意識に胸の辺りをぎゅっと握った。――痛い。


 誰かのことを想ってどきどきするのも恋なのだろうけど、誰かのことを想って胸が痛くなって息がしづらくなるのも恋のはずだ。

 走る後ろ姿を黙って視線で追った。
 白髪の、不思議な銀色に近いような白い瞳もあの頃と変わらない。



 撫でる手の強さも優しさも、仕草もあの頃と変わらない。



 あなたにまた会うために、あなたの近くに生まれる命になったのだろう。
 だからこそ、わたしはレシアとして生まれ、あなたの記憶を覚えている。




 どうにかしてほしい。


 君のことを忘れられないわたしを。
 君のことを好きすぎるわたしを。



 「………っ、」



 振り切るように踵を返す。

 「仕事をするぞ、ランザ」
「ああ」



 わたしはあなたを師として見れない。



 わたしは君に懸想している。あのときから、今もずっと。


*・*・*

 「ではランザ、わたしは帰らせていただきます。あなたたちにも申し訳ないことをします。隊長であるわたしが先に抜けるなど。今回のことは、また次回埋め合わせをしましょう」

 ランザと招待の少年少女に声をかける。

 「えっ、じゃあみんなで昼食しましょう!」

 キラキラと目を輝かせて言う隊員である少女、ミラ。

 「いいですよ、奢ってあげます。また今度」
「わーいっ、レシア隊長とお昼~!」
「お前、隊長に迷惑かけるなよ、まったく!」
ミラをとなりのアーサーがそう諌めているが、可愛いものだ。
「アーサー、いいのですよ。ランザも、ロトもエルも一緒に、今度テーブルを陣取りましょうか。それでは、今日は失礼しますね」

 軍での表の顔を貫き通すと、第二小隊の執務室を出て城の外へと向かった。

*・*・*

 ギリギリに言っても文句を言われるだけだろう。

 わたしはリシャーナであるほうが強いから、母様と父様のことを想うと少しだけ複雑だ。
 レシアへの待遇の酷さは言い知れないものがある。前世の記憶を完全に蘇らせる前は、たぶんわたしは母様も父様も少なからず憎んでいたと思う。
 今、この現状を客観的に見れているのは、わたしがリシャーナであり――親の若い頃を、リシャーナの記憶を通して知ってしまっているからだ。
 そうして、前世の記憶を通して――長い時を生きてしまっているような感覚に陥っているからだ。

 (ミレイアもレイシスも知っているんだもんな)

 心臓がズキリと痛くなり、小さく呻く。吐く息は荒く、また命がほんの少し消えていくのを感じた。わたしの魂は、この世界に留まれない。
 本来あるべき量の魂のかけらを持っていないと、この世界の理から外れてしまうのだ。
 たぶん、今のわたしは――量で言うなら、三分の一以下の寿命と言うことだ。姉様が生きていたころは、この世界に――わけられたとしても――魂はすべてちゃんとあったということだから何の弊害も現れなかった。
 けれど今は、ミリアとともにわたしの魂もこの世界とは別の輪廻の底へと渡ってしまった。
 だから、わたしはこの世界の理から外れているのだ。

 くらり、と視界が歪む。


 目と瞑って眩暈に耐えた瞬間、視界が一変した。


 「………っ、」


 以前のわたしが見ていた世界。こうして、心臓が痛くなるたびにときどきこの瞳は以前に戻る。まだ、わたしの魂は、役目に囚われ、わたしを苦しくさせるのだ。
 この世界は未だ黒い。
 あらゆる生命のあるものの生気の光は黒く淀んで、――真っ黒や灰色や、色の濁ったような暗色が放たれている。

 「やめて、」

 いつまでも、わたしの目は世界の黒に囚われ続けているのだ。

 「これ以上、わたしを減滅させないでくれ。世界(きみ)も辛いだろう。……悪い考えを持つ者たちが溢れれば溢れるほど、本来は綺麗な生気のはずの自然も感化される。――世界(きみ)はそれに穢される」

 過去、一度は吹き返したはずだ。


 この灰色の世界をまた見るのは辛すぎる。


 ああ、と脳裏に浮かんだのは――エメロットの顔だった。


 きっと、君の周りはあの頃みたいに綺麗な光で包まれているんだろう。黒い世界を見るのは恐ろしい。もう身体に影響を受けないはずなのに、怖くて仕方がない。


 君の、そばにいたい。


 美しい世界の、そばに。



 助けて。



 息が苦しい。



 もう、わたしは死にたいなんて思っていなよ。


 助けて、エメロット。



 この黒い世界で唯一何よりも輝いていた君のひかりを、わたしに見せて――――安心、させて。




 「……エ、メ………」


 あれ?わたし―――そう思った時に遅くて。

 ふつり、と意識は途絶えた。
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~ Comment ~

こんばんわ、エメロット編です

1話のお話とまとめてお話します。
今までのグランディアを読んでいるかたがたならわかるでしょう。
エメロットさんです。
セシリアの師匠です。
まあ、はい、作者の完全な趣味ですが、

『――エメロットは過去精霊使いでリシャーナという精霊と契約をしていた。そしてリシャーナはサラの前の生命の精霊だった』

ということは決定していました。
そこにセシリアのあれこれが付加したようなかたちです。
わたし的にはエメロットの過去がかけて嬉しいですが。
そんなこんなで、これを見ている年上好きのひとたちに捧げます笑

それでは!

高宮
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