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「グランディア国物語」
If Story1 わたしの君にうたう歌<エメロット編>

成就

 ←Scene3 「ねえ、貴方は……」 →連携とかいろいろ(フォロワーさんたちに向けてですね~)
 君とともに歩くと、君のひかりの魅力に気づく。

 そんな光のそばにいるだけで少しずつ、君に惹かれていく自分がわかる。

 ともに過ごしていると、エメロットという人物が――男女問わず信頼を受ける性格なのだと改めてわかった。シリュウとレイシスもエメロットを信頼しているようだし、ミランダとミレイアも彼の言葉には妹のように従っている。

 何より、君から放たれる光は今も――黒い世界に影響されていない。

 普通はこんなに世界が穢れていたら煽りを喰らうものなのに。

 君のひかりは君の心の有様を体現する。
 君の心は強くて綺麗で、優しいものなんだろう。
 そんな君に惹かれている。
 わたしにしか見えないそのひかりは、君が何より強く優しい人間だと証明するもの。わたしにしかわからない、君に惹かれる理由。

 『おい、どうした?大丈夫か』

 くしゃりと、ごつごつとした手が頭にのり撫でられる。

 【今日は、ここで野宿か】
『あぁ、そうなるな。――目的の隣国も近くなってきたし』

 エメロットとエメロットが紹介した仲間たちと旅をするようになった数ヶ月がすぎた頃。
 目的の国まであともう少しというところの森だった。もう、この森林は隣国の領土ということだが――。

 正直、今わたしは死にかけている最中だと思う。


 エメロットと最初に会った頃、あれだけ死にたいと強く願っていたはずなのに。
 今もこの黒くて灰色の闇の世界を酷く嫌だと思うのに。
 それでも、死ぬのは惜しい―――そうに、少しだけ思ってしまっている。


 だから、後ろめたくて言えないのか。


 君に、本当のことを。


 けれど、わかってほしいと心のどこかで願ってる。――死ぬなと、死んでほしくないと、――君がもし、そう言ってくれるなら――わたしはたぶん、この嫌な世界でも生き延びたいと願ってしまうのだろう。

 【少し、休ませてくれないか。……】

 人に姿を見せているだけでも、今は辛くなってしまっている。
 上位精霊であるため、力は強いはずだ。

 たぶん、この森林のせいだろう。
 森は、朝だというのに――わたしの目には真っ黒に映る。木々や地面さえも、色が浸食している様子で、もとの色が何かさえもわからなくなっている。
 黒い光が霧のように辺りをつつみ、空気まで淀んでいる気がした。
 生命を司るわたしにとっては、とても息がしずらい。

 この森の生命は、とてもじゃないが生きている気がしないのだ。

 『おい、お前ら、休むかそろそろ?』
『私もう足がたいへんなことになってしまってるわ。エメロットが言うなら、休憩できますわね』
『おう、俺が言うから休んでいいぞ。レイシス、面倒見てやれよ』
『お前はそういつも投げやりな……』
ミレイアの言葉に、エメロットが声をあげて頷き、レイシスが天を仰ぐ。
『まあ、夜通し歩いてきたからな。昼も歩くとすれば、今休んでも平気だろう』
シリュウも頷き、あたりに休憩の準備を始めた。

 『……リーシャ、』

 いつからか、君のわたしへの呼び名は愛称になっていて。


 君の声はどこか優しくて温かい。


 『こっち来い。俺らは別なとこな』
くしゃりとまだ撫でられる。強引なくせに優しい手つきで腕を引かれた。
『あ!……エメ!またリシャーナ連れてく!いかがわしいぞ!わざわざ見えないところでなんて!』
『はは、まァ、逢引な』
【―――エメロット!何する!休憩ならここでいい】
『ここじゃ駄目だろ。来い』

 逃げようとしないためか、太い腕がぐっと肩に回って連れて行かれる。

 『――やめておけ、ミラ』
『どうして?』
『――リシャーナに問いたいんだろう。どうも何か隠している節がある。――リシャーナのことを俺たちよりも気にかけている分、エメは心配なんだろう』
小さく語る声ですら、わたしには届いてしまう。

 【―――っ】

 人間にすら隠し通せないほどわたしは弱っているのだろう、それがわかってしまって、なんだか泣きたい気分になった。

*・*・*

 ふたりきりになった瞬間、他人に見せるための力の供給を解いて深い息を吐く。

 『お前、無理してるだろ』
【………】
『やっぱり人間に姿を見せてるはつらいんじゃねえのか』
【……本来なら、大丈夫だ】

 あまりにも痛そうに話すからついこぼしてしまった。わたしはどんなときだって、君に弱い。

 『ちゃんと話してくれよ。そばにいんのに、となりでお前がつらそうにしてんのを黙って見てなくちゃいけねェ俺の気持ち考えろよ』

 君はとても辛そうに、自分のことのようにそう声を荒げるから。

 錯覚してしまいそうだった。

 『…………話してくれよ、頼むから』


 手を引かれる。気づいた瞬間に、わたしは彼の腕の中にいた。頭に手が周り、押し込むように抱きこまれる。視界一面にあった黒い景色はなくなって、見えるのは彼の胸元だけ。溢れる白い光に息を吐く。
 君は少しだけ震えながら、わたしを強く抱きしめる。

 『俺は、何をすりゃ……お前を生きたいと思わせられるんだ。どうすりゃ、その辛そうな顔をやめさせてやれる。――――お前を、好きになっちまった俺はどうすりゃいい。なァ、リーシャ……!』

 君の溜まった想いを吐き出すような、切ない声を聞いたとき。
 ぶるりとわたしの身体に震えが走った。

 驚きと、嬉しさと、途方もない喜びに――震えは歓喜でも走るのだと初めて知る。


 【………もう、死にたいとは思っていないよ。あなたのそばは居心地がいいから、死ぬのが惜しくなってくるくらいだよ。生きたいと思えているわ。――あなたの、となりなら】
君の心臓に耳を傾ける。――きっと、緊張しているのだろう。いつも余裕ありげな彼の五月蠅い心臓が、今の彼の様子を知らせていた。
【わたしもあなたを好きになった。――君の綺麗な魂だけじゃない、君のその優しい性格に惹かれたんだ】
このとき、きっとわたしも混乱していたんだろう。素の口調さえ自分では気づかずに、エメロットが不思議そうにこちらを見下ろしていたことも気づくことはなかった。
【――だから、あなたに、本当のことを話すことができなかったの】


 君が好きだ。
 君がたまらなく好きだ。
 惹かれた君のその優しさに報いることができたなら。
 君もわたしのことを同じように惹かれてくれているというのなら、それだけでこの黒い世界に在れる。
 わたしが見限って諦めてしまった世界でも、君のために、役目を果たそう。


 君が、途方もなく好きだ。


 【あなたがわたしを好きだと言ってくれるなら、……わたしも生きたいと思える……。本当のことを話すよ。聞いてくれる……?エメ、】

 素直に呼べずにいた君の愛称を、囁く。

 『ああ、全部、……全部聞いてやる。話してくれ。聞かせてほしい。お前のことを、全部』

 強く抱きしめる力に安堵する。

 わたしに想いを告げてくれた今も、君から放たれる光は、夕焼けのような温かい色で。



 それが、どうしようもなくいとおしかった。


 【まず、あなたはわたしが契約した契約者。――あなたが「生きろ」と言った願いは成就された。あとはあなたがわたしの願いを聞くわけだけれど……これはもう少し取っておくわね】
『あぁ、ゆっくり考えろ』
腕を放して離れようとしたエメロットを留めて、そのままにさせる。額を胸元へとつけて目を瞑った。
【このままで聞いて、】
そう囁いたわたしを『お前なぁ』と恨めしそうに呟いて抱き込んだエメロット。それでもその通りにしてくれる彼は、わたしを恋人として扱ってくれているらしい。嬉しくて、くるくすと笑みをこぼした。

 精霊にはあまりないその大切にする感覚が嬉しかった。

 【……わたしは、精霊界でも上位の精霊というのは前に話したね。あなたは稀に見る強い精霊と契約ができる強さを持った精霊使いだったということ。そうして、わたしは〝生命の精霊〟……教えていなかったけれど、あなたもわたしと同じ力を使えるのよ?契約をしたからね】
『生命……、』
【そう、精霊はこの人間の世界を維持するためにあらゆる役目を背負って生まれてくる。わたしはその中枢を担う上位の精霊。わたしは、ひとびとの命を見ることができ、命を終えた清き楽しいを輪廻へと還すこと、そうして人間界のあらゆる命あるものの生命を維持することが役目】

 けれど、と――わたしが囁くと、エメロットが疑問符を浮かべた。

 『どうした……?』
【わたしは〝生命の精霊〟として恵まれた才を持っていた。みんなは羨ましいと言うけれど、わたしはそうは思わない。……わたしは歴代の生命の精霊たちには見えないものが見えている。――生命の色、生命のひかり、たぶんひとびとの生気……生きる糧をひかりに纏わせた……オーラのようなもの……それが見える】
『ああ』
何も言わずに相槌を打つ君を優しいと思った。
【………昔は綺麗な世界だった。白や、黄色や、オレンジや、金色や……世界は美しい色とひかりに包まれて、わたしはこの役目を幸せだと感じていた。けれど、いつからか……人間は欲を覚え、悪いことをどこか考えるようになっていった。戦や、内乱、ひとびとの心は荒み、――わたしの見ている人間の光は灰色になり、黒く染まり……そうして、その闇色の穢れは……自然に、大地に、広がっていった………】
『今、見ている世界も、か―――?』
【ああ、黒いよ。灰色で、――わたしは、〝生命の精霊〟としてそれにもろに影響を受けてしまうから……だから、こんなに弱っているんだよ。死にたくないと生きたいと思っていても、世界が荒むだけわたしの息もしづらくなるというわけだ】

 どうしてそんな大事なこと言わねえんだよ……ッ、そう怒鳴るエメロットに、ふっと笑った。

 君がそうに悲しそうな声を出すからだよ。

 【だって、君のそばにいたいと思ってしまったんだから、仕方ないじゃないか……】
『精霊の世界に戻って、体調を戻すとかできねえのか』
【どうなるかわからないかな。……わたしは、もう罪人だしね。あちらに行ったら殺されるかもしれないね】
くすくすと笑いながら、そう零す。
「笑いごとじゃねえだろ!どういうことだ……!」
【死のうとしてここにいたわけだから、あの辺りから職務放棄していたし……仕事仲間たちにも無断で音信不通になったし……おまけに人間に恋してしまったから。――あぁ、今さら別れるなんて言うのはなしよ?精霊と人間の恋は禁忌だって知ったくらいで、やめるほどの気持ちなんて言ったらわたしあなたを殺すわよ】
冗談めかしく笑ってやるが、冗談は通じないらしい。エメロットが吠えるように言う。
「そんなことでお前を諦めてやるか!そんなことより、お前の命のほうが問題だろうが……!」

 禁忌なはずだったけれど、それを「そんなこと」で片づける彼。


 やっぱり君はすごい。
 君のそういうところがたまらなく好きだ。


 【ひとつ、あなたに良いことを教えるわ。――この世界は黒く染まっているけれど、強い魂はもとの綺麗な光を保っている。――エメ、あなたは誰にも影響されない白い光を放っている。そんな魂のそばにいるとわたしも元気になれるよ。……そして、あなたのひかりは周りにも良い影響を与える。あなたはとても強く優しい性格。あなたが違うと嘘をついても、あなたのひかりがそれを証明する。わたしに隠しごとはできないんだよ、エメ】
『……俺の光……?』
【いわゆるひとの発する生きる力というものだね、生気といったりするけれど、あなたたちにはオーラとか言ったほうが通用するかしら?】

 君はわたしの世界を白く染める。

 黒い世界から美しい世界に。

 君の強い白いひかりに、影響されて――景色が白に染まっていく様を見れるはわたしだけ。


 そんな特権も、あるのだとつい最近知った。


 『とりあえず、一瞬でもいい元の世界に戻って元気になってくれ。俺が心配すんだよ』
【……そう、だね。……そうするわ。あなたのそばにいられなくなるのは、わたしも嫌だから。明日の夜、わたしを呼んで。……そうして、そのとき、……みんなにもわたしのことを教えないといけなくなるわね……】

 今、旅の途中にわたしが消えて明日戻ってきたら――誰だって不審がる。それにシリュウたちはわたしが何かを隠しているということも知っているのだ。


 【せっかくあなたと思いが通じたというのに、離れるのは不安だな】
『俺のこと、よくわかってんじゃねえのかよ。そのオーラとやらで』
【明日の夜、……わたしを呼んで。……飛んで行くから】


 君と見つめ合う。

 少しの沈黙のあと、見つめ合い、目を閉じた。


 重なった唇のあたたかさを――わたしは噛みしめて。


 とどまっていた黒き世界から姿を消した。

*・*・*

 【ごほっ……ごほッ……っ】

 倒れ込む。
 今、自分がどこに戻って来たのかもわからなかった。精霊の世界に戻ってきて気が緩んだのか、すべてが不安定になっている気がする。
 どれくらい時間が経ったのだろう。そんなに経ってはいないはずだ。

【おい、】

 声が聞こえた。仕事では上司でもある友人だ。――彼は冷酷だと有名な男だが、わたしはそうは思わない。しいていえば素直になれないだけで、たぶんわたしのように――好いた相手には尽くすのだと思う。なんだかんだ言いつつ、近くにいるわたしの前にも現れるのだから。

 【大丈夫か、リシャーナ】

 フィリップの声もする。

 【お前は馬鹿か。――人間に姿を見せ続け、何日も居つづけられると思っているのか。それも、お前には苦痛でしかない――お前曰く〝黒い世界〟である人間界になど】

 たぶん、わたしは無様に倒れている。死にかけの状態だ。

 【今の……わたしは、罪人、か。それとも、逃亡者か……どちらだ……】
【フィリップに頼んで様子を見たりもしたが、自殺行為だな。別に、何にもなってない】
【仕事を放って、って不満言ってる奴もいるけどな。精霊界(この世界)じゃルシュドがルールだろ?】
ルシュドに続き、フィリップがくっと笑う。
【………もう、死にたいとは思っていない。………相変わらず、わたしや君たちの護ろうとしている世界は護る価値もない黒のまま、だが……】

 君たちには見えないでよかったと思っている。――きっと、全ての精霊が護ることを諦める光景が映っているのだから。

 【けれど、……わたしはまたあそこに帰らなければいけない。……君たちにはすまないと思っているけれど、わたしは、契約者のそばへいなけれ、ば……】
【死にかけでよく言う。――フィリップ、運べ】
【りょーかい】
 フィリップの風によって身体が浮いた感覚がした。そのままフィリップの腕に落ちる。
 【―――っ……もう、死のうとは思わない。ちゃんと仕事はして帰るから】
【帰る?――……仕事をするなら何も言わん。だがな、……上辺だけの回復で、人間の世界に無理に留まることが俺たちにできると思っているのか。こまめに帰って来い。そうでなくても、お前にとっては死にに行ってるようなものだろう】
【君にしては、ずいぶんと心配してくれるんだな】
【そりゃそうだろ、リシャーナ。あまり意地の悪いこと言ってやるなよ。お前だって一番部下なんだしよ】
【確かに、お前の頭は大事だ】

 はは、と乾いた笑みをこぼす。

 【すまないね、本当に。――ちゃんとやっていない仕事は終わらすよ。……それに、わたしはもう罪人なんだよ。……まさか人間を愛すだなんて、本当に、……長く生きていると何が起こるかわからないものだね……】
【―――――何を、馬鹿なことを】
【君たちもいずれわかるだろうよ。……似たもの同士、こうして集まってしまったのだから。思い知るだろう、わたしたちは誰かを大切にしたいと思うと、どうも……何かを犠牲にする節があるようだ】

 それが精霊だ。


 精霊は、歪んだ愛を捧げることしかできない。どうしようもなく大切な想いだからこそ、何を引きかえにしても叶えたいと思って、しまうのだ。
 そうして成就したその願いに身勝手に幸せを覚え、対価にする。
 精霊とは――人間の願いを変えるために自らの望みを要求する――ひとびとは神などと敬うが、そんな存在とはほど遠い、悪魔のような存在だ。

*・*・*



―――――――――――――――――――Side Out


 【ルシュド、ミスリルが話があるって――】
【ミスリルっていやぁ、……シアとも話してみたいだし、あれだよな……?シアの国の王の……精霊だったはずだ】
サラが連れてきたミスリルを見やって、フィリップがそう言った。
【王じゃないの、セザールはセザールだよ。グランディア国の王だよ!――今日は、そのセザールからあなたたちに伝えたいことがあるって言われたから伝えに来たんだよ】

 ミスリルは少女の姿をしたまま、地面に足を降ろして羽をたたんだ。

 【――ここからは真面目に話すから、ちゃんと聞いてね】

 ワントーン低くなった声に驚きながらも、ルシュドたちは眉を顰めた。――嫌な予感しかいないのが怖い。

 【――たぶん、ここ数日レシアからの呼びかけはないよね?たぶんそういうこともあったろうから気にも留めなかっただろうけれど、……今、レシアは眠っているよ。今の現状だと、昏睡と言った方が正しい気がする。……とてもとても深いところに……、例えるなら、意識が別のどこかにいってしまっているような感じ】
【何だって……?】
サラの言葉にミスリルが続ける。
【たぶん人間の病とかそういう類には該当しないとミスリルも思った。だから、セザールの頼みを呑んであなたたちに伝えに来た。そうして、質問したい。……レシアの今の状況はどういうこと?あなたたちにもわからないこと?とにかく、あなたたちにも見に来てほしい。今のレシアの状況を】

 ミスリルたちにはお手上げなんだよ、――とても心配している様子でミスリルは表情を歪めた。

 【それじゃあ伝えたから。――もしよかったら、セザールのところに来てくれると嬉しい。セザールもミスリルも、レシアのこと心配している。――……話はそれだけ、……じゃあ】

 ミスリルは小さく会釈をすると、羽を羽ばたかせ光になって消えた。あの様子ではセザールに、伝えに行ったのだろう。
【俺たちもすぐに行くぞ】
低い声で呟いたルシュドの言葉に、サラとフィリップも頷いた。

*・*・*

 執務室の電話が鳴った。古めかしいデザインをした装飾のあるそれを、手に取る。

 「―――――王、レシアの容体は?」

 焦ったような声が向こう側から聞こえた。
 内線から繋がれたその相手がエメロットだというのは伝えられたが、それにしても。

 「――おい、まず一声がそれか、お前はまったく」
「……うるせえですよ、ごたくはいいんで教えてください」
焦ったような声で、冗談すら長くエメロットは初めてな気がした。

 「――………今は深い昏睡状態といったところだ。誰の呼びかけにも反応しないし、無理矢理置こうとしてもびくともしない。人によって反応が違うかという話になってレシアの知人に呼びかけてもらっているが、全然駄目だ。――お前も心配なら、早く帰ってきてやれ。……知らなかったが師だったんだろう?」
セザールの言葉に、沈黙が返された。
「――……エメロット……?」
「仕事片付けたら、速攻で、帰る―――!」

 しぼりだすように、唸るように、低い声でそう言ったエメロットに驚いて返答をするのを忘れた。そのまま、ガチャリと音が切れる。
(どうしたんだ……?いつものエメロットらしくもない)
普段とは違ったエメロットを疑問に思ったが、弟子である彼女が危険な状態だからだろうと解釈をすることにした。

*・*・*

 【……命の期限が迫っているということでもない。……以前と同じように魂が消えていくのはそうだが、それは僕が遅らせているし、補ってる。進行は遅くなっているはずだ。……何で……】
サラがレシアの額や胸に光を浮かべた手を当てて癒しながら、呟いた。
 ルシュドとフィリップも、昏々と眠り続けているレシアを見下ろす。
【お前は………、どうしたんだ……?】
髪を梳くように撫でて、息を吐く。
【心身的な問題なのか何なのか……だけど、人間がかかるような病気の気配もしないし……】

 サラの声が遠くで聞こえる。

 他者の呼びかけも聞こえないくらい深くに意識が堕ちている――それが指すことは何なのか。

―――――――――――――――――――end.
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