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「グランディア国物語」
If Story1 わたしの君にうたう歌<エメロット編>

面影

 ←Scene4 「だから、なに」 →書き終わったーー!!!

―――――――――――――――Side Emerotto


 バン、と力任せに壁を叩く。通路を歩く客人がこちら向いてひそひそと話したり、眉を寄せていたりしているが、そんなものは気にしない。
「エメロット、あんまり気負いしないほうが。――はやく仕事終わりにして早馬飛ばしましょう」
「うっせえ……」
「――……」
自分が率いる第一小隊の副隊長であるラクの言葉を一言で切り捨てる。


 黙っていられない訳があった。


 エメロットの中で燻るどうしようもない不確かな事実。
 けれど、それは限りなく真実で。


 だからこそ、焦った。


 いつからか、―――お前の目はかつて、自分の腕の中で光となって消えた恋人と同じになった。

 仕草が、――時折見せる行動が。

 何より、その視線が――遠い昔、自分を見る彼女の視線そのもので。
 子供のような歳の少女に、ぞくりとした感覚を。

 (さすがにやべェと思ったけどなぁ、あん時は――)

 しかも友人の子供である。それに弟子として育てていた子供だ。――子供、子供、と思い続けて、それでも、時折感じる違和感は拭えなかった。

 確証はない。確かめる術もない。

 聞けば、彼女は答えるのか。


 そんなこともわからない。


 でも、彼女の瞳はあの頃と何も変わらない何かに耐えるような、劣情を抑え込んだかのような瞳でこちらを見つめる。


 一度、そうだと思うと気づきはじめるということはよくある話だ。

 思い込みかもしれないけれど。


 それでも、――エメロットは彼女に恋人の影を、見てしまうのだ。

*・*・*

 ある快晴の日。――思えばあのとき、エメロットは確信したのだ。


 その日以前にも、レシアがエメロットのところへとふらりとやってくることがあった。痣やら何やらはないものの、浮かない顔をしてエメロットのもとへやってくるレシアのことを最初は――レイシスとミレイアのいるあの屋敷が嫌だから来るのだと思っていた。
 自分が目をかけている少女が、友人である親たちに恵まれない扱いを受けているという事実が――歯がゆく、――そして何も言わずにいる旧友である自分が苛立たしかった。


 「親には言って来たのかよ、オイ」


 十一歳になった彼女は、子供ではない笑みでこちらを見上げる。その、黙ったままの笑みがエメロットに否と告げた。
「そうか、……まあ入れよ」
ぐりぐりと頭を撫でるエメロットに、かたちだけの笑みをレシアは浮かべた。
「………すい、ません。エメロット」
「大丈夫だ」
「――すいません、」

 その謝罪の意味を、―――まだエメロットは知らなかったのだ。


 「この前も来たよな、どうしたんだ?」
「――あなたの、そばだと、大丈夫だから」
途切れるような小さな声で、レシアはそう囁き――有無を言わせぬ笑みを見せて、中に入っていく。伴侶もいないひとりきりの大きな屋敷にあるリビングは、小さなレシアが来ても広すぎるほどだ。
「やっぱり、」
「――あ?」
「いえ、なんでも」

 やっぱり、こちらを見て――消えりそうな声で吐息を漏らしたレシアの顔は、子どものものではない。十歳そこらの少女ができるような笑みではなかった。

 「なんか飲むか?」
「はい、お願いします」
「お子様が飲むものねえけど、前来たときはなんだっけな。コーヒー飲めたかァ、お前」
「ミルクと砂糖入れてください」
「ねえよ、んなもん」
「ならそれでいいですよ、飲めますから、たぶん。とりあえず、申し訳ないんですが……カーテン閉めていいですか?」

 座っていたソファから降りたレシアは、ゆったりとした足取りでカーテンの前まで歩いて行く。ちらり、と恐れるものでも見るようにカーテンをめくり、さっと閉めた。その横顔は酷く嫌そうに歪んでいて。

 記憶の中にある彼女が一瞬だけ見えた、ような気がした。

 (何考えてんだ、俺……)

 「外がどうかしたのか」

 何故、自分は動揺している。そんなことを考えながら、レシアへ対して自然に口が開く。

 「ええ、少し。それにしても、エメロットが仕事ではなくて、よかったです。……玉砕覚悟で来たつもりだったんですけど」
「ガキが玉砕ってよ」
苦笑しながらエメロットは言うが、一瞬だけレシアは目を見開き――取り繕うように笑った。
「……ふふ、それくらい言っても平気でしょう?」
「いや、知らねえけど。まぁ、そんなこと言うような歳んなったんだな。他のガキの奴らも、もっとガキっぽいし」


 ふふ、と笑いながらレシアはこちらを見やってから視線を逸らす。


 「わたし、おかしくなってしまったのかもしれませんね」


 自嘲混じりの言葉に、疑問に思う反面ずきりと胸が痛んだ。笑っているはずなのに泣きそうに見えるのは何故か。
「おい、どうした。レシア、お前なんか――」

 おかしい、―――そう言いかけてやめる。おかしいと零した相手にそれを繰り返すのは何か違う気がした。

 「いえ、気にしないでください。わたしはここに居させてもらえればいいので、エメロットは自分の好きなことをしていてくれれば」
コーヒーを向かいにいるレシアのほうへ渡してやる。
 そのまま、執務室から持ってきた資料と読書用の本を数冊、目の前の脚が低いテーブルに並べると、ひとりの時間を過ごしていた。


 時折、――レシアのコーヒーを啜る音が聞こえて、そうして見つめられている気配もしたが、こちらへ来たときの常だったから何も言わない。
 時計の音、たまに風がガラスを揺する音。


 そう言えば、遠い昔に似たような時間を過ごしていた。
 あいつと、特別な関係になってから多々あったゆったりとした時間で。自分は国へ仕事を逐一教えるために書類をつくっていた。あの頃の旅では、リーダーとなる人物はシリュウであったが、エメロットも特別な仕事をいくつか請け負っていたからだ。
 コーヒーを飲みながら、資料作成を文句をつけながらやるエメロットを、精霊の恋人は苦笑しながらそばで見守っていた。

 (……ねみィ……)

 昔の記憶は痛くて切なくてそれでもいとおしい思い出だ。忘れろ、と誰もが言うが――それでも忘れらない記憶だった。
 だんだんと眠くなってきて、――いつしかエメロットは意識を失っていった。



 ――――。
 ――――――――――――。

 まったくあなたは、そんな恰好でも眠れるのね

 かつての、記憶の中の、――恋人が苦笑するような声が聞こえた。――気がした。

 「――エメロット、……エメロット、寝たんですか」

 声が聞こえる。

 「……エメロット……?」
「―――ん、」
「……!……エメロット……、起きて、ますか?」

 自分の名前を呼ぶ声が、戸惑った様子でエメロットに問うてくる。浮上した意識はまだあやふやで。

 「寝てる……のね、………疲れているの、かな」

 どこか安堵したようなため息がこぼれた。

 「……あなたは、……やっぱり、座っていても眠れるのね……」

 囁くような声に内心どきりとした。気配で感じるレシアの距離も近い気がする。ふわりと、毛布がかかる感触がして――慌てて、寝たふりを決め込んだ。

 そっと、―――本当に、そっとだった。

 目をつぶり、寝たふりをしているエメロットの頬に微かに触れる感触。触れるか触れないかの距離だったが、確かに触れるその手が、震えている。
「あぁ、馬鹿ね……わたし……。――何してるの」
その手と同じように震える声で、自嘲しながらぱっと手を放した――レシアのはずの少女。

 動揺が隠せず、目を瞑っているのでさえ努力が言った。身体を動かさないように。――実は起きていた、などと言える雰囲気でもなくなった。

 「あなたは、信じるかな」

 「あなたの生きる世界のためなら後悔はないと確かに死んだはずなのに、こうして目の前にいるなんて。わたしのことも、この先のことも、……あなたのことも。見苦しいほど、未練がましい」

 震える声のふり幅が振り切る。

 「……目を開けてるあなたに言うのは怖いから、眠っているあなたに言うのよ。卑怯でしょ。わたし、かわってないのよ、死にたくはないけど、逃げたがりなとこ……全然変わってないの」

 衣擦れの音がした。レシアはしゃがんだのだろうか。

 「――もうあの頃の役目はないはずなのに、わたしの目にはたまにあの頃と同じ光景がうつる。だから、あなたのところに来るの。ごめんね。逃げたがりなくせに、あなたに会う理由を自分でつくらないと、あなたのところにも来れないの」

 「何年経ってもわたしの目には君は……っ頼りになって優しくてひたすら格好よくしか映らないよ。レシアじゃなかったら、もう少しっ……違う出会い方もできたかもしれないけれど……レシアじゃなかったら、きっと君のそばにもいられなかった」

 「眠っている君にこんなことを話しても……っ、何も、意味がないのに。――昔から、わたしは、本当に、」


 ああ、お前だったのか。


 なんの疑念を抱くこともなく、すとんと理解することができた。


 嗚咽を噛み殺しているはずの彼女を抱きしめたくなった。
 何も考えず、強く。


 もう泣くな、と言ってやりたかった。


 「本当に、馬鹿だな。―――わたし、」


 走っていく音がする。リビングを出る音がしてから、ゆっくりと瞼を開ける。――動悸が止まらない。


 本当の確証はないけれど、ほぼ確信に近い。


 (レシアが、………リーシャ……?)


 何故、その過程などエメロットにはわからない。けれど、目の前にかつての恋人がいるという事実だけは本当だった。


*・*・*

 あの頃の衝撃は忘れない。けれど、その次の日から、レシアは鉄壁の笑みでなかったことにしていた。いや、エメロットは眠っていた。これは「なかったこと」になっているのだ。
 だから、思い込みかもしれないと思うようになった。
 寝ぼけていただけなのかもしれない。
 あれは夢だったのかもしれない。
 そんなことすら考えてしまうくらいの長い年月が経って。


 けれど、視線も言葉も仕草も――リシャーナにしか見えなくなって。


 だんだんと、レシアにリシャーナの影を重ねるようになった。


 レシアには悪いと思う。
 レシアはレシアなのかもしれないのだから。


 だからこそ、確かめる術はなくなっていった。


 今でも悔いる。何故あのとき、目を開けなかったのか。逃げたがりだった彼女を、あの頃のように強引に引き止めて、何故説き伏せてやらなかったのか。
 もし、レシアがリシャーナなのだというのなら。一番リシャーナのことはエメロットがわかっている。逃げたがりのあいつが安心するまで、言葉にして行動で示す必要がある。それでも逃げたがるあいつのそばにいて、引きとめてやらなければいけない。そうして、安堵して心を許して甘えてくるあいつを、死ぬほど甘やかしてやるのだ。
 それが常だった。
 死にたがり逃げたがりで面倒のかかる奴で、仕方のない奴だったけれど――あれほど可愛くて、大事にしたくて、手元においておきたい女はいなかった。


 (リーシャ……)


 お前が昏睡の中で、自分を待っているというのなら――エメロットは早く戻らなければいけない。レシアのもとに。


―――――――――――――――End.
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~ Comment ~

おじさまsideです・・・

エメロット編のエメロットさんのsideになります。
彼はこのようにして、ずっとこう思っていたというのが明らかになりますね~
彼はずっとずっと亡きリシャーナ(かつての恋人)を想い、
ずっと喪に服しながら、他の女には目もくれず一途に思っていたわけでした。

どうしてもエメロットさんを幸せにしてあげたがったので、もう少しお付き合いくださいませ。読んでらっしゃるおじさま好きに捧げます・・・。ぐああ。

高宮
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