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「蓮姫」
~蓮姫~番外編

いつかの誓い【壱】

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【壱】

 淘汰はふと過去を思い返す。
―――そういえば、こいつとの初仕事も賊退治やったなぁ……。
それは、もう遠い過去のように思えるかつての日だった。

***

 淘汰は父である黒淘(こくとう)と共に目的地に到着する。ここである仕事をする相手と会うことになっていた。これからペアを共にする人間と初の顔合わせでもあると、父も一緒に来たのだ。
 それが異例の事態であると、淘汰も分かっていた。
 だから、―――何故なのか、知りたかった。相手が誰なのか知りたかった。 父が同行するほどの、大切な相手らしい、その人物を。
 そうして現れた相手も、父が同行していた。―――そして、何故父が付いて来たのかを知る。 
―――白吹か……そりゃ、父さんもついて来るわ。 ……じゃあ、あのガキが俺の相棒っちゅうことか?
そう、見るからに子供だった。
 淘汰はこの時十七歳、まだ子供だが―――その淘汰よりも子供だった。
 「はじめまして、かな。 時雨淘汰君。 俺は白吹蓮、こいつが君のペアになる俺の息子だ」
蓮様は、その子供の頭をぽんと叩いて自分の前へと押し出した。
「お互いが親密になるよう……次期当主となるお前と、皇眞君の団結が大事なのだ。―――分かったな、淘汰」
父からも言われ、淘汰はその子供のほうへと視線をやる。

 「―――白吹皇眞、だ」
「時雨淘汰や。 ―――皇眞、な? お前、年上には敬語っちゅーもんを使うんやで? 分かっとるんか」
突然のタメ口だったため、少しだけ口調を強くして言ったが皇眞はあまり感情の篭もっていない瞳で首を傾げた。 本当に、不思議そうな顔で。
「すまないね、こいつは感情が欠落しているところがある。 君と接して人間性を取り戻して欲しいのも、あるんだ。 任せたよ、君に。 ―――皇眞、敬語は使用人たちが使うような言葉だ。 お前より淘汰君は経験を積んだ先輩にあたる敬語は当たり前だ。 分かったか?」
「―――…敬語、分かりました」
平淡な口調のまま、皇眞は呟いて淘汰のほうを見ずにどこか遠くを見ていた。

 「それじゃあな」
「じゃあ」
と、黒淘と蓮はすぐに消えていった。

 ―――…ってか、どないすればいいんや。 こんな訳の分からんガキと一緒に、仕事するんか!? てか、感情の欠落って何や!!意志の疎通もままならないっちゅーことか??

 頭を抱えながら、皇眞を見下ろしてまずは相手を知るところから入ることにする。
 「今回の仕事は賊を始末することや。―――まだ時間はあるし、余裕もあるっちゃある。 それやから、まずお互いを知らんとペアもくそもないやろ?」
「―――」
やっぱり無言で返ってくる。
 皇眞の目は―――全然人を信用していない、自分しか信じていない人間の目だった。 感情なんて一欠片もなくて、なんでこんな小さな子供がこんな目になるのか、淘汰は分からなかった。
 よほど、辛いことがあったのか。 それとも、まだ違う別の何かか。
 「じゃあまず歳な。 俺は十七、お前は?」
「―――」
「お前なァ、……これから俺らはずっとペアしていくんやで? 今で、そんな眉間に皺よせとって何が得なんや。―――何もええことないやろ。 ガキやからって容赦しないで、ちょっとは妥協したらどうや」
声を低くすると、皇眞は少しだけ不機嫌な表情になって「十一」と単語で返してきた。 どうやら、子供にしては我慢することや情緒の方面では大人らしい。 他の十一なんて、歯向かってくる真っ盛りの歳なのだが。
―――…感情、あることにはあるんやな。 こいつ、……ただ見せないだけか、見せ方がわからんって感じか?
腕を組んで、皇眞を見つめたまま淘汰は続けた。
 「刺客やってどのくらいや」
「二年」
「剣は?」
「刀と西洋の剣」
「―――場数は?」
「―――初めてに決まってるだろ。 ……でも、家に襲ってくる刺客なら始末したことは何回かある」
何回かの応酬のあと淘汰は、はあっとため息をつく。
 「つか、何敬語からタメに戻ってんねん!」
「―――お前が敬語使うに値する人間か俺はまだ分かってない。 認めた奴以外敬語は使わない。 信用はしないと決めてる。誰であってもな」
それは十一歳の言葉とは思えないもので、淘汰は黙り込んで、やがて頷いた。
「道理やな、お前のことは何となく分かったわ」
 
 とにかく、皇眞は―――人を信用はしない。 そして、“実践”はしているはずだ。どんな形であれ、だが。
 白吹の稽古は実践よりもキツイと父からも淘汰は聞いている。―――きっと、皇眞はそれをこなしているから……暗殺の仕事をすることに対して焦りも不安もないのだ。
 「今回の仕事は暗殺っていや暗殺になる。 暗黙して賊を殺すんやしな。―――暗殺の、刺客の約束事はわかっとるか?」
「―――口外禁止、仕事は黙秘すること。証拠は残さない」
「ほんま優秀な奴やなァ。―――そうや、それ護るんやで。 じゃあ、行くか」
「―――」
無言で答えた皇眞を、ため息をつきながら見やって淘汰は走り始めた。
 刺客ならではの速度、大木の上など刺客ならではの道で目的に行くが、それに皇眞は軽々とついてくる。 身体の大きさからくるメリットデメリットもあるが、それでも速さは追いついていた。
 不安な様子も、緊張した様子も―――“その時”が近づいているのに全然無かった。 
 淘汰は今までも、同じ歳の刺客とのペアに当たったりしてきたが―――青ざめながら任務をこなした者もいたし、途中で棄権した奴もいた、ぶつぶつとどうにかして止めるための言葉を言い続けた奴もいたりした。
 そんな奴より、全然マシだった。 マシどころか全然皇眞のほうがいい。

 「お前、これから人殺しに行くってゆうんに、怖くないんか?」
何故、そんなに平然としていられるのか不思議と問いただしてみる。
 淘汰も初仕事の時には緊張はした。自分の実力に自信があったため、不安にはならなかったが―――それでも、緊張はした。
 それすらないような顔をして、皇眞は後ろをついてきているのだ。
 「―――怖い?」
「―――怖くないんか、ほんまに」
「……怖いって何故思わないといけない?」
「はあ?」
逆に聞き返されて、淘汰は思わず声を上げる。

 ―――こいつ、まじで言っとるんか!? だとしたらありえへんあほか、ありえへんほど自意識過剰な奴やないか!!!

 「―――…俺が今まで見てきた奴はろくでなしやったんや。 怖いわ、不安やわで、だだ捏ねてなぁ。 お前は、そんな奴らより年下なのに、よく平然としとるもんやと思って聞いてみただけや」
「……怖がるなら最初から剣なんてもってないさ」

 やっぱり、十一歳の人間がいう言葉ではないと思った。

 「―――…そりゃ、また道理やな」

 同じ時期当主として、わかりそうなところはある。
 きっと小さな心で、壮大なる覚悟を決めて刀を持ち―――こうやって家の業(しごと)をしているのだ。 それが、悪に染まることだとしても国には必要なことだと、淘汰も分かってそれを受け入れた。
 こういう家柄の当主になるということは、悪を統べると―――そういうことだ。

 「お前、もっと感情知ったほうがいいと思うで」
「―――」
「情緒面でな」
「……黙れ、かす」
「―――まあま、これで怒りは覚えたな」
「うるさい、黙れ、死ね、かす」
「そうそう、まだガキでいいんやで。 無理して大人になることない。 ま、俺が見てやるときはそれでええ、っつうか、そのほうがええよ」
「お前むかつく!」

 余裕の言葉と本当にそう思っている感情が入り混じった。
 大人すぎていると心に毒だ。家柄、そうならざる終えなかったところもあるのだろうが。
 怒りの感情を表して歯向かってくる皇眞に若干の安堵を覚えて、淘汰は精々余裕そうに笑ってやった。
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