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「あなたとわたしのこいのはなし。」
Act1.ある龍と少女の恋

1.ある少女の憂い

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 ずっとあなたを見つめてきた。
 ひたすらにあなたの背中を見つめてきた。とてもとても短いようで長い時間。あなたを心から想ってしまうしまうくらいには長い時間。
 見つめてきた背中はいつかの出逢ったときと変わらず、この胸を痛いほどに締めつける。

 「―――どうした」

 わたしの異変に気がついたのか彼はこちらに首を向ける。前を歩く彼の姿。森の中を明るく照らすような赤い髪に、紅玉の瞳。
 低い声、一見怖い顔が眉を寄せて若干の懸念を見せた。

 「別に、何でもない」

 視線を逸らして、それだけを呟く。そっけない声になってしまったのも、不機嫌そうな表情になってしまったのも、後悔しながら。
 出逢って、ふたりだけで行くあてのない旅を続けて一年が経とうとしている。それなのに、可愛い反応ができない自分自身が恨めしい。

 ああ、恨めしい。
 彼が自分を見ていないときにしか、焦がれるように盗み見るしかできない。直視するにはこの感情は大きすぎて。けれど、心の中に抱えておくには重たすぎる質量にまで増してしまった。
 見ているだけで泣けてくる。
 きっと、この持て余す恋情が大きすぎて、だ。

 わたしは、神様に恋をしている。
 自分でも笑ってしまうような不毛で、どうしようもなく苦しくて、それなのに捨てたくないと思ってしまう恋を。



 出逢ったのは一年ほど前だったろうか。
 今まで生きてきた全てを奪い去られた上での出逢いだった。

 わたしはなんの変哲もない普通の村の少女で。どこか遠くの村で話を聞くようなことが自分の村で起こるなんて一瞬でも考えたことがなかった。
 山賊に襲われる街を見て、―――女少女が襲われて、男たちが殺されていくのを見ながら、わたしも捕食されるひとりだった。食料は根こそぎ奪われて、見かけのいい女はただの性欲のはけ口になる。――そんなどこか遠くの村で聞く悲劇の話が、自分の村に当てはまるなんて。
『逃げるぞ馬鹿!』
早く逃げろ、行きなさい!―――父さんと母さんが必死の形相で叫びながら、わたしと妹を家の裏の玄関から追い出す。そのあとのふたりの生存は知らない。泣き叫ぶ妹を知ったしながら、わたしは駆け出す。

 ――けれど。

 捕まえられる。だって、わたしは不思議な力も持っていない。貧しい村に住んでいる剣も力も持っていないただの少女だ。貧しいだけで、何も持っていない、ただの。
『おねえ、ちゃん……!』
この世の終わりだと言うよな悲痛そうな声で泣く妹の声を聞いて、死にもの狂いで叫ぶ。怖くてもどんなに屈辱的でも苦しくても気持ち悪くてなんでも耐えるから。好きにしてくれていいから。
『やめろ妹に触るな!――なんでもいいッ。好きにしてくれていいから!妹だけは!』
こんなときでさえ陳腐な言葉しか叫べない無力な存在で。
『うっせえな叫ぶんじゃねえ女が!』
『―――ッあぁ』
『おねえちゃん!』
刃物が身体に突き刺さる。妹が叫んだ。
『おい!てめえ馬鹿か!――お前はすぐ頭に血がのぼりすぎなンだよ!』
『――ッチ。俺はこっちの女のほうが好みだ』
『きゃあ!』
妹の髪が引っ張られるのが視界の端で見える。
『俺はこの姉ちゃんのほうが好みだな。―――ったく、すまねえなァ。あいつは乱暴で頭に血が上りやすいところがある馬鹿でな。痛いだろう』
そんな一見気遣うような言葉を吐いておきながら、鎖骨あたりにできた切り傷に舌が食い込む。
『俺は優しいぜ――?』
『―――やめろ……ッ。……リエカ!リエカ!』
妹の名前を叫ぶ。
『おねえ、おねえちゃん――いやああっ、きゃあああ、いたいいたいいたいおねえちゃんたすけて』
『おねがいやめておねがい。――おねがい。いもうとをたすけて……ッ』
『あーあー。あいつは乱暴モンだって言っただろ。かわいそうになァ。俺は優しいからな。お前を殺したりはしねえぜ』

 となりで起こっている光景を自分の目に移すことはできなかった。それでも視界の端に映ってしまう光景を泣きながら理解する。やめておねがいなんでもするから、妹にひどいことをしないで。やっぱり、ありきたりでけれどそれだけしか言えなくて。やっぱり無力な存在のまま。

 神経が壊れてしまったかのように。

 自分の身体を這う忌まわしい手も。感触も。すべてが無に消える。

 男が――わたしのすべてを貪ろうとした瞬間、男の顔が一瞬にして炎に包まれる。叫んだ男が飛び退いてわたしの身体から離れる。次の瞬間、身体全身が燃え上がり一瞬にして消え去った男を茫然と見やる。となりの男も同様で。けれど、動かない妹がいる。


 救ってくれた男は―――炎のように燃えるような赤い髪をした紅眼の男で。その手に炎を纏い、身体から火の粉が飛び散っていた。




 家族を失った妹を失った。

 自らを龍だという男が本当の姿を見せてくれたのもその直後。

 帰る場所もない。待ってくれてる人もいない。妹がそばで辱めを受けて殺される瞬間を見せられて、何もかも失って凌辱されかけた。
 生きる意味がない。
 殺してくれ、少女とは言いがたい口調で頼んだわたしに――彼は眉を寄せたのをおぼている。何かを言いかけてやめた瞬間も。逡巡したのちに、赤い龍になって彼は無理矢理わたしを連れて飛んだ。

 来い、と――怒ったように言った声を覚えている。

 行先はどこかの森の湖で。

 (それからわたしはずるずると一緒にいることになってしまった)

 死にたいと思っていたはずのに、ずるずると引きずれられるようにともにいていつしか、死にたいとは思わなくなってしまった。
 となりで凌辱されながら死んでいった妹のことだって心に刻まれているのに、何よりあの村には関係を持った許嫁もいたはずなのに。
 それなのに。

 (矛盾している、あってはいけない。みんなに申し訳なさすぎる)

 いろいろなものをたくさん残してきているのに、わたしだけが何かを得ようなんて。
 何かの感情を抱くなんて。
 それが、この世界の神様であることだって。
 貧しい民で、しかも得体の知れぬ山賊に凌辱されかかった汚い女で、しかもその身体には傷あとも痣のあとも残る――そんな女が、〝神様〟のそばにいること自体が。

 (なんて不毛で―――、……なんて)

 滑稽なのだろう。


 そばにいることすら釣り合わない。
 あなたを好きになってしまったからこそ苦しい。苦しすぎて涙が出てくる。わたし自身が一番、あなたに見合わないということをわかっているのに――それでもあなたを想うわたしの心が腹立たしい。
 それは自分ですらどうにもならない想いを抱えているということだから。

 昨日のことのように思える全てが一年前の過去になってしまっている事実。乗り越えなければいけないと思うのに、今もわたしはあのときの恐怖に囚われたまま。

 けれど、あなたのそばからは離れなければいけないと思っているんだ。
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