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「あなたとわたしのこいのはなし。」
Act1.ある龍と少女の恋

2.九尾と龍

 ←1.ある少女の憂い →3.とある龍の憂い

 わたしにはわからないことだらけだ。

 なぜ、あなたはわたしを助けてくれたのか。なぜ、あなたはあのとき殺してくれと嘆いたわたしを怒ったような目で見やったのか。

 「リウ、止まれ」
「――え……、」

 するどい声で名を呼ばれる。目の前で立ち止まった彼の大きな背中をただ視界に映した。

 (紅雅……?)

 呼びたくても呼べない名前。

 わたしにはわからないことだらけだ。
 なぜ、今もあなたは――なんの力も持たないわたしをそばに置いてくれているのか。これが義務というならば、それこそ置いていってほしい。義務ならば、あなたのそばにいることがどれほど悲しいか。
 決して可愛くもない。身体も綺麗ではない。むしろ内外ともに穢れてしまっているだろう身体なのに。
 それこそ神様にふさわしくない。
 傍目から見ても綺麗な顔をした彼に、見合う存在ではないのは確かだから。

 「どうし、たんだ……」
「黙っていろ」

 固い声に、ああ、と口を閉ざす。
 隠された彼の背後からちらりと前を覗く。――銀色の髪、鋭い目つき。紅雅と同じように美しい端正な顔をした青年が、こちらを見やっていた。

 (同じだ―――)

 説明されずともそれがわかった。

 彼もこの世界に住んで、世界の理を知る神様のうちのひとりなのだろうと。そしてたぶん、銀髪の彼は紅雅と知り合いだ。

 「――お前が女を連れて歩くなんて珍しいな」
「――黙れ」
「しかもお前、趣味変わったか?」
「―――ッチ」
舌打ちをする目の前の彼。

 銀髪の彼はわたしと視線を合わせる。ゆるりと視線を逸らして、その奥にいるわたしと同じように隠れる少女がいることに気づいた。
 きっと、わたしとは違う銀髪の綺麗な神様に愛されている少女。

 (わかってる。―――わかってる。わかってる)

 そんなこと、わかっている。
 この世界でも特別な神様だということも、人間とは別の存在なのだということも、街へ行って人とすれ違えば振り返られ、女たちは目を奪われる。そばにいるわたしを見返しているのも知っている。――そんなの一番わたしが知っている。わたしが一番、彼に釣り合わないということを実感しているのに。

 「―――ッ、」

 言われなくたって理解している。
 過去――男たちにつけられた傷あとが火傷のように痛んだ気がした。この痕だって、彼のそばにいられないひとつの理由。

 「銀羅!」
「―――、」

 銀髪の神の後ろで諌めるような声が聞こえた。後ろに隠れていたはずの少女は意外にも主導権を握っている様子で。

 (―――わかってる。わかっている。何の力も持ってないしかも殺してくれと頼んだ。一度死のうとした。過去を忘れられないまま綺麗な未来も描けないのに、それなのに、不毛なまま想っているだけだ。わたしはきっと彼の昔の恋人の足元にも及ばなくて、言葉も悪くて、身体には傷があって、もう綺麗ですらないのに。――神様を恋しいままなんて)

 それはもうほんの一瞬。
 銀髪の神様の後ろの少女が何かを言う前に、わたしは無意識に踵を返していた。

 (わかってる。釣り合わない。――何かを明かす勇気すらないくせに、何かを知ることが怖い臆病者だ。ほらだって、逃げてしまってる)

 そういっそ、このまま――捨ててくれたらいいのに。

 命を救ってくれたあなたを、優しさを知る度に好きになってしまっている心を、
 好きだった許婚だっていたはずなのに、それすらも塗りつぶして好きになってしまう心も。
 苦しいと、痛いと感じながらわたしはそれを抱えてしまっている。

 こんなに好きになってしまったのに、わたしはきっと――あの神様と少女のようにはなれないのだから。

 「――――リウ!」
「――ッ」
「次会ったら覚えていろ……ッ」

 何かを、彼らたちに殺気を向けて叫ぶ紅雅。
 それすら意識の端から追いやって、全力で走る。

 なんで逃げているんだろう。――きっと、無理なはずなのに。
 それでも逃げてしまいたいと思ってしまう臆病者のわたしを――追いかけてきてくれるその足音が死ぬほど嬉しくて、もう死んでもいいかなと思ってしまうのだ。



――Side out

 「――……本気だったのか」
「わかっていたくせに。――わたしと同じあの子の心苦しいくらいにあのひとだけだよ。記憶も光景も感情も全部流れ込んでくる強い想い。……わたしまで泣いてしまう」
「だってもどかしいだろ。お互いわかりきってんのに」
「勘違いしてるよ。あの女の子。――趣味変わったとか……いろいろ。とても悪いことしてると思う」
「――まあ、……変わってないよ。ていうか、今までのがカウントされないだろうな。本気じゃなかっただろうし……。あいつは何も言わないでそばにいて、苦しいときに抱きしめてくれるような奴が合ってんだ。あいつは何も言わないしな」
「案外友達思いなのね」
「――昔からの知り合いだから、少しだけ、な」



 「―――リウ!止まれ!」
「――ッ」
「リウ!」

 こんなときに、必死そうに、――いつもあまり口にしないわたしの名前をたくさん叫んで、いつもは寡黙なくせに言葉を連ねる様子に胸が痛くなる。

 耐えかねたような舌打ちが聞こえた――――――――――――――――刹那、

 目の前に赤い髪の男が立っていた。

 ぎらりと光る紅い瞳は真剣そのもので。なんだか泣きそうになる。また逃げようとするわたしの腕を掴んでくる。配慮なんてない強い力で。

 ひゅ、と喉の奥がなる。

 彼の目の前でこんなに泣いているのはきっと、最初にあったあの日以来だ。
 ぼろぼろと泣きながら、歪んだ視界の向こうで彼が怒っているのだけはわかった。

 「――何で追うんだ、」
「――質問の意味がわからない」
ぎりっと握られた手に力がこもる。
「……ッ、」
「ならなぜお前は逃げるんだ」
「――」

 嗚咽を漏らしながら、片手で涙を拭う。それでも流れる涙は止まることを知らない。

 「最初からわからなかった。――そもそもわたしを連れてる、理由が。わたし、は、あの、……銀髪のひとがいうように、――あ、なたにはきっともっと」
「―――俺にはもっと、釣り合う人間が見つかる、か――?ふざけるな。そんなのは俺が決める」
低い怒った声がわたしの言葉を遮る。わたしが思っていることを見透かすような言葉に息が詰まった。
「――なんで、あのときわたしを助けたのかもわからない。も、いい。――はなしてくれ……ッ!痛い……!」
「――んで、」
「………ッ」
「―――なんで、これだけ一緒にいて――俺もお前と同じ気持ちだと気づかない……!」

 腕を強く握られて、引き寄せられる。そのまま太い腕に封じ込まれるように抱きこまれた。

 「お前を連れてる理由なんてわかりきってるだろう。――お前が特別だからだ。もしかしたら生きているかもしれないお前の昔の男のところにも帰したくない。――お前を無理矢理自分のものにしたところでやっていることはお前を傷つけた奴らと同じだ。そんなことはしたくない。――言えずにいた。言わないままお前を帰すこともせずに、お前のことを好きだと言ってもお前が俺のもとに留まる保障なんてどこにもない――」

 ぎゅ、と抱きしめられる強さが痛い。
 背筋が粟立つ。―――嬉しさで、だ。

 「――きっと、俺たちはお互いにもっと言葉が必要らしい」

 「………っ」

 「お前は?」

 「………っ、」

 こんなわたしでいいのだろうか。
 釣り合わないと思い続けたのは、わたしだけだとずっと思っていたのは、――わたしだけだった?


 「息が詰まって苦しいくらい――好きだったんだ、ずっと」


 あなたにこの想いを伝えてもいいのならば。
 あなたがこんなわたしを好きだと言ってくれるのならば。

 わたしも応えていいのだろう。きっと。



 わたしの応えた言葉のあとに、ほっとするような長いため息を耳元で感じて、彼も不安だったのだ、と。このとき、彼も同じなのだと思えた気がした。
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