FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←2.いとおしきこの大地 →4.暗殺者の願い
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【2.いとおしきこの大地】へ  【4.暗殺者の願い】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「あなたとわたしのこいのはなし。」
Act2.とある少女と男の恋

3.拾った少女と拾われた男の関係性

 ←2.いとおしきこの大地 →4.暗殺者の願い


 「なぜだ……!なぜあなたが愚かな人間に加担する……!」

 力を浴びせながら、彼は叫んだ。

 「――人間どもは……!我らからあの方を奪い!我らを統率するあの方を死に追いやった……!あなたが一番人間からすべてを奪われただろう……!あの方はあなたの父で……!そして、あなたから恋人さえ奪った!なのになぜ、あなたは人間側に組する……!」

 龍は、慈悲深い。そして自らの一族を誇りに思っている。
 龍であることを誇りに思い、人間を護り世界を維持することに誇りを持っていた。仲間を何よりも大切にして、その存在を尊敬して重んじる。それが龍の一族だ。
 仲間を、信頼していた人間に殺された衝撃はすさまじかった。
 そして、その龍が――一族を統べる王であったことも、災いだった。一番尊敬すべき王を失った龍たちは、人間たちを見限った。

 いや、この大地の人間たち、を――か。

 「それでも、父とミヤビは、この大地を愛していた。最期の最期まできっと恨むことはしなかっただろう。――わたしは、あのふたりに報いるために旅をしている。この大地と人間たちを殺すのなら、わたしはあなたたちを追い払わねばならない」

 ぼろぼろになりながら何を言う、――男は泣きながら笑って力を放つ。身体が宙を舞って、地面へと転がった。
 アビが苦痛にゆがんだ声を上げる。
 アビ――、だめ、アビが怪我をした。

 「だい、じょうぶ」
「ばかやろう……!お前のほうが大丈夫じゃないだろう。腕を斬っただけだ。……お前は?平気か……?」
「……はは、お前がそんなに慌てるなんて。おち、つけ」
苦笑して、ゆらりと立ち上がる。アビを後ろへと押しやって、――同族を見やった。

 「父を尊敬してくれていたシエンよ。ありがとう。――お前のその怒りはきっと、父への愛だろう。すまない。わたしはお前を殺したくない。――ここは、わたしに免じて去ってくれないだろうか。このあたりに放っていただろう模造品もわたしが始末した」
ゆらり、とシエンは本来の姿へと戻った。紫色の綺麗な龍だった。
【愚かな。――王と、ミヤビ様のために我らの敵になるというのですか、姫様。どんなに愚かでも、我々にとってあなたは信頼すべきそして絶大なる強き龍。スピカ姫、あなたは人間に騙されている。はやく、我々のもとへと戻ってください。人間への報復は終わりません、何があっても】
怒りが伝わる。方向の先、紫の炎が木々を焼き、あたりが一瞬にして荒れ果てる。
「―――………ッ戻りなさい!」
銀色の髪が光る。――銀色の龍になったその姿で、シエンの攻撃を防ぐ。
【同胞よ。――どうか、空へ帰りなさい。お前まで死ぬことはない。お前まで、人げ現に命をくれてやる必要など、ないのだから】
強い言葉で語りかけ、頭でこづく。
【帰りなさい。――わたしがあなたを殺す前に、あなたが、わたしを殺す前に】
わたしの言葉に、シエンは涙を浮かべて咆哮する。

 そして、夜空に飛んでいく紫の龍を見送った。




 そのままの龍の姿では、湖に入ることはできない。――ここにあるクリスタルは、治癒の力をこの湖に付加させたのだと聞いている。
 ひとの姿に戻って、ばしゃりと湖の中に落ちた。

 「―――スピカ!」

 名前を呼ばれて、ふっと微笑む。
 湖から抱き上げられて運ばれる。腰ほどの低い高さの湖は、薄く光を帯びていた。湖の中にある岩場に座らされる。
「……大丈夫か?」
「お前は、気持ち悪くないのか。……龍に、なったばかりなのに。ひとには、龍は恐ろしいものなのだろう」
わたしのすべてを知ってもなお、となりにいる彼。
「お前はお前だろ、スピカ」
あけすけもなく好意を示す彼の潔さに苦笑する。
「傷は、治ったか」
「あぁ」
「――すまん、力を使いすぎた。抱き上げて、湖に入れてくれ」
わたしの言葉を聞いて、湖にわたしをおろすアビ。ぼろぼろの体が、ゆっくりと再生していく。肉がただれ、そがれ、斬られていたところも治っていった。
「ミレニアの力……、あぁ、お前も死んだのか」

 何度、何度―――同胞の力が発揮されるクリスタルの在り処を見つけてきたか。それは同胞の死の数を意味するもので。
 涙しながら、それでもわたしはひとびとを恨み切ることはできない。

 「スピカ」

 「なんだ?」

 「お前、憎くねえのか。――お前の仲間を殺し続けている俺ら人間に。あの龍が言っていたように」

 悲しそうな声を出して、らしくない。アビはそう言って、わたしを見つめてきた。
 「でも、それは我々も――人間に同じことをしている」
「けど、その発端をつくったのは俺ら人間だろう?!」
「………、」
「恋人も、父親も殺されたんだろう」

 なぜ、そんなに苦しそうにお前が言うの?

 ゆっくりと、近づいてきたアビがこちらを見下ろす。黒いコートをこちらへとかけて、視線を逸らした。身体の傷は治ったが、攻撃で損傷した服までは治せない。どうやらあられもない姿になっていたらしい。

 「――憎いだろう。お前だって泣いていた……はじめて、会ったとき」
「お前だって、龍を恨んでいただろう?わたしを、殺そうとした」
「――っ」

 連鎖はどこで断ち切るのだろう。

 この憎しみの連鎖は。


 見つめあう。沈黙の時間が少しだけ苦しかった。
 「――……そんなことを言うのなら、わたしとともに旅を、するな。わたしがひとを助けるのも、龍を助けるのも、そして同胞を殺すのも、わたしの勝手だろう。……そもそも、わたしは……お前にこんな姿を見られたく、ないんだ」
 ぼろぼろになっても再生する醜いからだ。
 ちからを未曾有に扱えるからこそ、おかしな再生をくりかえす気味が悪いすがた。
 肌に交じる銀色のうろこは、決して美しいわけではない。
 自信がまぎれもなく龍であるというしょうこ。

 「―――ッ」

 唐突に腕を掴まれた。
 強い眼光で睨まれるように見つめられ、はっとしてその瞳を覗き込んだ。

 「許さねえ……離れるなんて、置いていくなんて許さねえからな。一緒に来るかって言ったのはてめえだろうが」
「気まぐれだよ」
「―――っ……ふざけんなよ。………なんで、そんな話になるんだ。聞いただけだろう、人間が憎くないのかって」
「――だってそれは、……旅をしてきたお前なら、答えをわかってくれていると思っていたから。……お前に、肌を見せるたびわたしは苦しくなる。お前が憎む龍の姿そのものだから。――いつか、お前に軽蔑される日が――」
「そんな話がしたいんじゃねえよ。―――違う、……違う!」

 ああ、わたしも、そんな話がしたいんじゃない。
 じゃあ、なんの話がしたいのか。

 アビの握る腕が強くなる。
 ゆっくりと再生の音をミシミシと立てて、治っていくその腕を掴む腕が。己を龍いたらしめる鱗が肌にはあった。

 「――………お前だって、人間が少なからず憎いだろう。俺も、その人間だ」
「――……それなら、わたしだっていつも同じことをお前に対して思ってる」
アビは首を横に振った。見下ろす眼光が苦しそうに歪む。いつも不愛想で無表情な顔が、今は、違う。
「俺はお前をお前として見ている。龍なのは関係ない――」
ゆっくりと腕を口もとに持っていったアビが舌を浮かす。――音を立てて鱗の皮膚に口づけて、舌は這わせる。ざらつくはずのそこを。――悲鳴を上げて抗うようにした腕をたぶん全力の力で押さえつけられた。
「―――っ、なに、を」
泣くなよ、アビは苦しそうに囁いた。

「お前に、愛されたい。――お前が憎む人間で、あっても。人間であることが、恨めしい。同じ時すら歩めない。――お前に愛されたいと我儘になっている。かつてお前が愛した龍と同じように愛してほしいと、ありはしないとわかっている。――期待するから、こっちをあんな目で見んな。優しくすんな。簡単に心を許すんじゃねえよ」

 息を呑んだ。

 はじめて、彼の言葉を聞いた気がした。


 龍でなければよかった、彼と同じようにことを思っていたことが怖かった。わたしにはやるべきことがある。けれど、アビと離れがたいのも本当。――そしてそう想う感情の中に、あってはいけない感情が含まれていることに気づいていた。
 長いこと生きてきた。
 あってはいけないとわかっている。
 何より、かつて愛したひとがいるというのに。お前はわたしを愛してくれていたのに、わたしは幸せになっていいのか、と。きっと、お前は「そうしてくれ」と笑うのだろうけれど。
 お前が思い出に風化する寂しさがあるのに、目の前の青年を愛することを止めることはできなくて。


 憎まれたくない、と愚かな心は思うようになっていった。


 龍であるということを実感するだろうその姿も、皮膚の鱗も、――傷の再生でさえ、見せたくない。


 ひとに愛されたいなんて、なんて不毛な。



 それでも、愛されたいと。




 愚かな願いを龍であるわたしは思うようになっていった。
関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
総もくじ 3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【2.いとおしきこの大地】へ  【4.暗殺者の願い】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【2.いとおしきこの大地】へ
  • 【4.暗殺者の願い】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。