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「あなたとわたしのこいのはなし。」
Act3.まほろばの姫と暗殺者の恋

3.きみがすきだというおもいだけ。

 ←2.おまえをころせるわけがない。 →4.うばうのもうばわれるのも。
 そっと、唇が重なった。

 強い力で押さえつけられたまま、首にあったその手が頬へとうつった。

 「あぁ、馬鹿だな。――俺は、――本当に、馬鹿だ」

 自嘲じみた微笑みを浮かべながら、何度も顔を近づける――彼のひとに、ただ驚いていた。

 好きだ、と言ったこのひとの言葉。
 事実が呑み込めない。

 「――どう、して」
「――ん?」
「どうして、殺さないんだ?君は、わたしを殺すために近づいたんだろう」
わかっていたけれど、口にしてはいなかったことを言った。予想していた事実とは違塢結末になっていて、慌てながら。
 気づいていたんだな、と彼は笑う。

 「お前が好きだから」

 信じられるわけもない言葉を囁いて、彼は立ちあがった。

「何をしているんだ……!お願い、殺せ………!わたしを殺さねば、……お前も任務とやらを遂行できないんだろう!お前も危険な目に逢うんだろう!――殺せ!君になら、殺されてもいいんだ。ずっとずっと、………わたしがいないほうが、この屋敷も家族も、周囲のひとたちもうまくいくとわかっていたんだ。だから、わたしは、」

 今の惨状がどうなっているかはわからない。

 でも、目の前の彼が――暗殺を生業としている者ならば、仕事はちゃんとこなすだろう。だって、その証拠に、となりに落ちるクナイは血まみれになっている。目の前の彼にも返り血が飛んでいた。

 「なぜ?」
「え――、」
「お前も、俺のことを好きでいてくれているんだろう。なのに、なぜ殺せなんて言う」
「………っ」

 意味が、わからなくなってきた。
 リヒトは暗殺者で、わたしを殺しにきて。
 けれど、殺さなくて――わたしに好きだと言ってきて。
 わたしも彼を好きだとこぼしてしまった。
 だから、お互いがお互いのことをすきで――?

 けれど、たぶん――目の前の彼は。


 わたしの家族のだれかを手にかけていて。


 ……そして、わたしを殺さなければきっと彼が危なくて。

 「君は暗殺者だろう……!わたしを殺さなかったら君は……!」
「ミソラ、俺を心配してんのか?――たった数分前に、お前の家族を殺した俺を」
「――っ」

 君は、わたしを好きなのかわたしに嫌われたいのか、どっちなんだ。

 「……君の、好きなんて、信じない。……わたしのことを好きなの?ならなぜ、わたしに嫌われるようなことをそうやって言うんだ」
「――……」
黙り込んで冷めた視線をこちらに向けた彼を見つめた。

 そう、そうして、怒ってわたしを殺して。
 わたしを好きというのなら、嫌って殺せばいい。
 君の好きは信じない。
 ――殺せないも、信じない。
 君は嘘をついてわたしを殺そうとしているのだろう?――そう、言って。

 「とりあえず、こっから出ないとだな」

 話を無言で切り捨てた彼はそう言って、足枷の鍵をどこから入手してきたのか取り出して。鎖をわたしの足から取り払った。

 「お前が好きだというのは嘘じゃない。――信じてくれないなら、それでいいさ。でも、お前は俺が好きなんだろ?」
「――、」
「否定しないお前の素直さが、いじらしくて可愛くて愛しいと思ってる。前からお前はそうだもんな」
「そんなに死にたいなら、俺と来いよ。まあ、嫌だって言っても無理やり連れていくけど。俺もお前も、ここに居場所はもうないから」

 抱き上げられる。

 力の入らない足は、生まれたころから使っていない代償だった。こんなのないのも同然で。逃げることなんてできなくて。

 強引に、横暴に、――さらわれようとしているのに、どこか安堵すらしているわたしがいて。
 家族を殺された――?あの関係を家族とは呼ばない。わたしを蹂躙したのが父だというのも認めない。わたしを畏怖のまなざしで見つめ、一切しゃべろうとしなかった彼女を母なんて認めない。わたしを姉だと知らないきょうだいたちは、わたしを「神」だと思って話しかけてきた。
 彼らに、情があったのは「家族」という言葉へなのか、――それとも人間としてのそれなのか。
 けれど、彼らがいなくなって悲しむという感情はわいてこなかった。他人同様に過ごしてきたひとたちだ。


 だれかを、家族と同等の思いで愛したひとがいるというならば。


 「――、」

 抱き上げられたその腕は、いつもされているものと変わらない。


 いつもように、腕を回すのではなく。服を、掴んだ。


 どうせ、わたしには何もない。

 何かを持つことを許されなかったうつわだ。


 わたしが所有物なのだとしたら、かつての持ち主であった父は死んだ。――一日前は世話係だった彼が、わたしの持ち主になるというわけだ。
 君が好きだ。
 君に、捨てられたらたぶんもう居場所はない。


 きみが、すきだ。


 ごちゃごちゃした考えも悩みもすべて捨てていいというのなら、きっともう答えは出てる。どこへ行こうと、何をしようと、彼が裏で何をしていたとしても、怖くない。


 きみがすきだという想いだけ、唯一のわたしのもの。



 ――殺してやろうか?

 わたしが身体をうつわとして貸す神が、そう低い声で言った。はじめて、そう言ってきたのはわたしが父に蹂躙された日だった。

 ――お前が望めば、殺すことができる。殺してやろうか?娘を組み敷く男など、この世にいなくていい。神であるわたしがそう言うのだから、殺すことを許してやる。

 尊大なかみさまは、わたしにだけは優しかった。
 自分の徳にならないだれかの欲のため、という力の行使をしているわたしを――あわれだと言いながら、かわいがってくれた。

 ――はやく、この家を出ろ。機会はあるのだから。

 かみさまの毎回のような口癖だった。――神の力は自身には行使できない。だから、自分のために、足枷を壊すなどという行為はできないのだ。けれど、外に出ることがあればなんらかの機会はあるはず、と。

 自分のために力は使えないんだから、無駄だよ。

 わたしはあきらめていた。

 動かない足で、何をしても無駄なのだと。

 たぶんやろうと思えばなんだってできる。自分以外に力を行使して、逃げ続けることだって。――それをしなかったのは、わたしが死にたかったからだろう。
 死にたいと望んで、死ぬのが怖かった。
 恐怖して、悩み続けて、いろんなところで犠牲と不穏な噂は広がっていった。


 ――殺してやろうか?

 今度は、わたしに向かってそう囁いた。

 ――殺すというよりも、完全に、お前のからだをわたしのものにするというかたちで。お前はいなくなる。……耐えることに疲れたり、だれかのためになりたいと思ったときに、呼びなさい。

 かみさまはあるときそう告げて。

 力を使うたび、わたしの身体にはしるしが刻まれていって――それが、ひとならざるものへと近づけていく。わたしがわたしではなく「うつわ」である証拠。どうせ、そのときがきたら、わたしはいなくなる。

 わたしという「個」は消えるけれど、――だからこそ、彼らにとっては脅威であり殺さなければいけない存在で、父にとっては鎖を繋がねばいけない存在だった。


 ああ、どっちにしろよかったのかもしれない。

 いずれ消えるのならば、そばにいたいのは君だ。


 心が痛くなる。


 *


 ………すきだ。

 震える声で囁いた言葉に、――森の中を失踪していたリヒトが、ぽんぽんと背中を叩いてきた。

 「俺も」

 嬉しくて、胸が苦しくなる。
 けれど、きっと嘘なのだと思い込む。

 君が命令よりも優先してくれた想いだというのに、それさえも見ないふりをして。


 きっと、うそ。


 そう言い聞かせる。


 ああ、とても矛盾している。――心なんてもう、決まっているのに。


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