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「蓮姫」
第九章 痛刻の変革

痛刻の変革 【弐】

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 「こんなに忙しい時に名家に集まってもらってすまない」

 名家の人間。 
 紀城伊織、烏摩暁人、時雨淘汰、が揃っていた。藍園寺誉は逃亡中、東宮はもとより来ない貴族の人間だ。
 だが、白吹が来ていないのが何故だか分からない。
 この場合は当主である蓮のほうへ連絡が行くはずなのだが。

 そのために、白吹現当主蓮の子供である皇眞のもとに呼び出しをかける。

 そうして、連絡のかかった皇眞だが――まったくもって、心当たりがないのだ。

 「蓮は何故決議に来ないのか分かるか?」
「―――…いえ、…俺には……」
月夜の問いに首を振りながら、思考を止める。――ふと、嫌な予感がした。



 『まだ俺に護らせろ』


 蓮は、皇眞にそう言った。それはどういう意味なのか、悪い意味なのではないのだろうか。
 まだ、自分を、家族を、白吹を狙う奴がいるということなのではないのだろうか。
 考えすぎか、いや、けれど……。
 ――何か、悪いことが起ころうとしているのではないか。父はそれを覚悟していたのではないか。
 いや、絶対そうだ。と皇眞は血相を変えた。

 「―――父様…?」

 嫌な予感が過ぎる。それは、嘘であってほしいと願うもの。

 何か起こることが分かっていなければ、きっと父はあんなことは言わない。あんなに優しく笑わない。厳しさだけが取り柄のような人だった。
 それを貫こうという姿勢だったのも分かっていた。蓮という人の性格も皇眞は分かりきっている。
 そう考えていくと、悪い方向にしか答えを導き出せない。

 「皇眞、どうした」
訝しげに月夜は言った。
「顔色悪いぞ」
暁人も、そう呟いて。
「……何かあったんか?」
ひとりだけ妙に勘の鋭い淘汰の声。
「何かあったら、話を聞くよ。皇眞くん」
伊織は蓮にはない笑みでそう皇眞に問う。彼は蓮のことを古くから知る人物であった。

 「白吹の事は平気ですよ。素吹は抜きですぐに法律の制定をお願い致します」

 皇眞は頭を下げると、踵を返す。

 「どこ行くんや?」
淘汰が皇眞に問う。
「――――――……あなたたちは名家です。白吹も名家。―――俺はまだ人間を信じられない、そういう人間ですから」
にっこり、と――この期に及んでも、笑顔で「信じられない」ととっさに言う自分は何なのか。私情とは割り切った次期当主としての言葉かもしれなかった。

 けれど、一瞬だけ悲しそうに顔を歪めた仲間や義兄たち、月夜たちを見やって――一瞬だけ黙り込む。

 「………それでも父様が信じたあなたたちに言いたいと思います。―――白吹が、危ない……、まずは戻らせていただきます。確認を、して、話はそれから、で」
ゆっくりと、淡々と、表情を変えずにそう言った。
「何でそんなに冷静なんや……」
淘汰以外も思っていたことだ、皇眞ははっとと空笑いをしたあとにギロリと淘汰たちを睨んだ。その瞳は、酷く暗い。何かが狂いそうなくらいに。


 「―――今、理性が外れたら、……俺は敵を皆殺しに行きますよ。 それで自分も死にます。 ―――…冷静にならないと、自分が壊れるんです。 ほら、義兄さんも暁も、主上も知ってるでしょう? 俺は、“欠陥品”なんです」


 暴走、のことを揶揄していた。自嘲したように、切羽詰まったように皇眞はそう吐き捨てる。

 今でも、何かが狂いそうになっている。
 こんな時に、一番近いであろう結果をはじき出す自分の頭が忌まわしくて、発狂しそうだ。
 焦燥と不安が襲って、早く戻らなければとそれだけしか考えられなくなる。

 ――……許しませんよ、……

 そんなこと、許さない。
 父であるあなたが、そんな――……。


 皇眞はその刹那にいなくなって、その場はしんっと澱んだ雰囲気だけが残った。

***

 皇眞は服もそのままで皇宮の外へと飛び出る。
 もう人なんて関係ない。 一人で皇眞は走り始めた。
 「―――甲珠!!珠愛!!」
皇眞は空へと叫んだ。

 だが返答はない。

 双子の仕事は、皇眞を影から護ることだ。今までずっと返事をして姿を現さなかったことなんてない。

 ―――やっぱり!!!!

 嫌な予感が確実なものになろうとしていた。 皇眞は唇を噛みながら、どこに吐き出せばいいかわからない不安を胸へと溜め込む。 
 発散の仕方がわからない。 心臓がどんどん痛くなってくる気がした。
 
 「甲珠! 珠愛! お願いだから、わたしの前に来てくれっ……」

 気が動転していた。
 皇眞は自分が素の一人称を使っていることすら気づいてなかった。

***

 家の前まで来てしまう。 ここまで来るのに数十分かかったが、馬を使うということが脳裏に浮かばなかったくらいに自分は焦っていたらしい。刺客の〝足〟で本気で疾走したため、馬に劣らぬ速さで家まで帰ったのだが。

 焦っているに決まってる。
 冷静を装わないと、理性を保っていられないくらいに自分は今、おかしくなっている。
―――父様、母様、彩紅……!
澱んだ空気が、―――静かすぎる家が、おかしいと思った。誰のあいさつもない閑静な。

 ぽつ… ぽつ…

 「―――っ…!」

 ―――雨……!

 皇眞は苦い顔をしながら空を見上げる。―――何故、こんなに不安な時に雨なんて降ってくる!!! 
 嫌な予感の上に嫌な事が重なる。 
 だから、雨なんて嫌いだ。 みんな、みんな、……嫌なことを一緒に連れて来る。


 皇眞は門番のいない自分の家に、舌打ちをする。
 勘が冴えるというのは、時に嫌な事も勘付いてしまうから嫌だった。
 門が締まったままのため、皇眞は助走をつけて塀を飛び越える。 刺客を担っている皇眞にはこれくらいのことは朝飯前だ。

 
 家の中が暗い。

 誰もいない、誰の気配もしない。

 嫌な――










 

 ―――嫌な予感が過ぎった―――
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