FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←痛刻の変革 【弐】 →【短編】痛刻の変革~Side蓮~
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【痛刻の変革 【弐】】へ  【【短編】痛刻の変革~Side蓮~】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「蓮姫」
第九章 痛刻の変革

痛刻の変革 【参】

 ←痛刻の変革 【弐】 →【短編】痛刻の変革~Side蓮~

※流血表現あり理解した上、下へどうぞ。










 「―――っ」
 皇眞は息を呑んで、荒く靴を脱いだ。 こういう焦っているとき、紐のある戦闘用のブーツは嫌だ。 どうにかなりそうな嫌な不安感が皇眞を急かし続けている。
「……くそっ…」
やっとのことでブーツが脱げて、皇眞は走り出す。



 玄関を過ぎて、部屋の廊下を曲がった途端、皇眞は嫌な現実を突きつけられ意識が遠のきそうだった。









 ―――血の、海だ。

 壁に血が跳ね、廊下は血溜まり。 乾いた血がついていて、時刻の経過を見せている。
 廊下に、白吹に仕える兵士たちの骸が横たわっていて、事態の悲惨さを物語っていた。
 「―――……お、前ら……」
小さな声で囁く。知っている顔しかいない白吹の兵士たち。刺客たち。 椎名の刺客たちもいる。

 家族も同然に、護りたいと思っていた自分にとっては庇護する相手だったのに。

 「……――ッ!」

 言い切れない感情を言葉にすることができず、


 それでも、


 まず最初に皇眞の脳裏に過ぎるのは、家族の姿だった。





 「―――とう……父様は……彩紅……母様……」
うわごとのように呟いて、再び、皇眞は走り出す。
 走りすぎる視界に知っている部下たちが映って、酷い悲しみを味わいながら。







 叫び出しそうな後悔と、


 どうにかなりそうな不安と、


 心臓が引き裂かれそうな悲しみが、




 襲う。






 「―――いない……、どこだ、父様……彩紅、……母様……!」



 そう叫びながら、そして、彩紅の部屋を視界に入れたとき、皇眞は目を見開いて固まった。
 身体中の血の気が引いていく。
 今、目の前で起こっているそれが“理解”できない。
 ああ、……息はどうやってするんだ?
 どうやって、考えればいい、んだ。
 嘘だ、こんなの。―――――――――――嘘だ。






 だって、――――――――――――――――――――――――――――――――あり得ない。




 

 
 あり得ない。







 「父、様……」






 
 あり得ない。






 「―――嘘、だ」















 ―――――――――――――――――――――――――父様ガ、死ンデイルナンテ。



 「……嘘だと言ってくれ……!」



 血まみれのそこに、がくんとそれの横に膝を落とし、皇眞は――自分でも見て分かるくらいに震える――手を彼へと伸ばした。もう、彼かも分からないそれに。
 あまりにも容赦のない、見せしめのような。
 腕が切断され、心臓を突き刺しされ、首元を深く斬られている父の姿。 あともう少し深ければ頭が離れてしまいそうなくらいに、深く斬られていた。
 あまりにも、無残な。
 誇り高き白吹を、父を、侮辱するような。

 「くそっ……父様……っ」

 吐き出せない悔しさを拳で床に叩きつけるが、それでも足りるはずがない。
 

 数時間前にあったはず。
 まだ彼から流れる血は、乾いていなかった。




 「父様……っ…」


 

 呟いた声はもう震えていた。すでに涙腺は崩壊していて、涙が流れる。
 今まで、泣いたことなんてなかった。 男になってから、例外はあったけど、大泣きなんてしたことがなかった。
 こんなに何も考えられなくなるくらいまで、声を上げてまで、悲しみに暮れることすらなかった。

 でも、
 今は、



 「父……様…ッ…」



 血だらけで死んでもなお、刀を放していなかった。
 きっと死ぬまで、誰かを護って。 父は父なりに、誇りを果たして死んだはず。
 その後悔は、自分が引き継ぐ。 遣り残したものも、引き継ぐ。

 だけど、こんな、


 「―――ッ…」


 上げそうになる声を、声を押し殺して、泣いた。けれど、涙だけがどんどんと溢れてくる。嗚咽だけを漏らして、声を押し殺して。
 一度声を上げたら、もう際限がない気がした。
 怒りと、悲しみと、悔しさと、憎しみと―――どうにか、なりそうになる。




 「っ……すい、ませんでしたっ……。 俺が、俺がみんなを護るはずだったのに……俺は、何も出来なかった……ッ。 こんなに、父様はみんなを護っていたのに……っ」


 
 震える声で呟く。
 後悔で、頭が痛くなる。

 「父様、……眠って。……少しだけ、待っていてください。すぐに、戻ってきます」


 泣いたまま、そう笑みを浮かべて父の頬に張り付いた髪を流しながら囁く。そうして、自分の来ていた上着を蓮の顔へとかけた。

 

 蓮の血で汚れた自分の手、服、―――その、全て関係無しに、皇眞は駆け出した。強く目じりを擦って、頬の涙のあとも拭う。部下の前では絶対に弱い姿を見せない、それが父から教わった白吹の鉄則だ。



 「……みんな、は……彩紅、母様……!!」


 皇眞は迷わず、蓮が護っていたと思われる傷ひとつない障子を開いて、奥へと進む。





 「皇眞様!!!」


 「―――!!!!」


 こちらへと来た使用人の女たち、そして数少ない男の兵士たち。


 「お前ら、生きていたか!!! 父様に庇われたんだな!? ―――お前らだけでも生きていてくれてよかった……彩紅と母様は!?」



 その言葉に、使用人も兵士も黙り込む。






 「それが攫われた……ようなんです……。 探しましたが、姿はなく……死体もなくて……」


 男の言葉と泣いている使用人たち。
 すいませんでした!!! そう言って、全員から頭を下げられるが。



 「―――…俺もすまない。………お前たちはよく頑張ってくれた。 お前たちが生きていてくれることだけで、俺は嬉しい。 共に白吹を立て直してくれ」



 皇眞は静かに言って、言葉の意味に気づいたように顔色を変えた。



 「蓮様……旦那様は!?」
その使用人たちの言葉に皇眞は、彼らをじっと見つめながら黙り込む。その視線と沈黙で、意を理解した彼らが瞠目して、それぞれの反応を見せる。――涙を浮かべ、口を覆う者。視線を逸らす者。何かに悔しさをぶつける者。
「―――――――――父様は誇りを貫いてあの世へ逝った。 家族と、お前らを護って死んだんだ。……本望だろう」
静かに言った皇眞に兵士たちも使用人たちは堰を切ったように泣き始めた。
「泣くんじゃない! 本当に泣きたいのは……皇眞様じゃ。 我々が泣いてどうするのじゃ!」
世話係だった歳のいった老婆が嗚咽を我慢しながら言う。 

 皇眞は微かに笑んで、やっぱり、と思った。―――やっぱり、彼らだけには、崩れるところなど見せてはいけない、と。
 
 「今この瞬間から、俺が白吹の当主だ。 異論はないな?」

 はい、と彼らは頷く。


 「白吹を支えられるのは、護れるのは、あなたしかおりません。 我ら、この命を預けます」
「白吹について行くと決めました。 それは、あなたが当主になったとしても変わりません」
「何があってもついて行きます」
残り十何人しかいない彼らは口々に言う。


 

 「お前たちにはたくさんの苦労をかけた。 そして、俺が当主になったあとも苦労をかけるだろう。 だが、一緒に白吹を支えてほしい。 俺に―――ついてきて、ほしい。 たとえ、“女”だとしても……」



 白吹の者たちの、残った古株の使用人と兵士たちだから知る白吹の最高機密のこと。
 それが自分自身。 




 「皇眞様は皇眞様です」
「―――あなたは他の男よりも強いくらいの実力を持っている」
「何があっても、私たちはついて行きます」



 それは、白吹の理念とする―――蓮もやっていたとこだ。
 白吹の当主の理念―――それは自分についてくる部下たちを仲間を命を懸けて護る。 そうすれば部下たちは恩を恩で返してくれる。
 そうして、場面場面でそれを通してきた蓮は部下に裏切られることは無かった。
 そして、自分も。
 だが、裏切ったものは部下でも容赦なく斬り捨てる。 蓮も皇眞もそういう性格だ。
 そうしてきたから、皇眞もまた―――誰にも裏切られず、篤い信頼を置かれている。


 「まずは部屋の掃除だ。 玄関から血を拭っていってくれ。壊れた家具やごみもまとめて、玄関のほうへと。―――。〝家族〟たちの棺も用意してくれると助かる……と連絡をしなければな。俺は、父様のところに行って、その準備をする」
 
 「あの、申し訳ありません、皇眞様。多分、地下に隠れている人数も多いと思うのです。 これだけの人数なんて僅か過ぎますし……」
「そう……か。 地下には俺があとで行く。あそこは食料もそろっているから後でも問題はないだろう。 お前たちは先に部屋の掃除をしてくれ。 女には酷だろう、まずは男たちが遺体を片付けてくれ。 主上に言い、安置所で、火葬させてもらおう」
「はい、分かりました」
「すまないな、各自再開してくれ」



 そう言うと、彼らは頷いてそれぞれの仕事へと取り掛かった。
 皇眞が、蓮がいる部屋に戻る中、みんなが空気を呼んで別の部屋から玄関を目指す。
 ひとりで蓮のもとへと戻ると、―――皇眞はまた膝を落とすように座り込んだ。

 気が緩むと否応なく、涙が決壊してしまう。

 「――――っ」





 ―――彩紅、母様……。


 生きていてくれ。
 お願いだ。



 死んでなんかいない、お願いだ。
 生きていてくれ。





 「…………父様…っ…」





 痛いくらいの憤怒、悲嘆、後悔、憎悪、不安、焦燥、酷く醜い感情が心を支配する。
 黒く塗りつぶされるように、全てが。




 悲しい、悲しい悲しい悲しい。
 そしてそれにも勝る苦しみと―――何故こんなことになったのか、と。
 そう思いながら、誉の顔と―――言葉が思い出される。
 共犯者もいるのかもしれない、それでも、あの男も加担しているのはきっと、確かだ。



 『覚えておくんだね。 俺の執念がどこまでか、そして君は後悔することになるよ。 俺は欲しいものは必ず手に入れる質なんだ』





 ――――ッ……誉!!!!!!!!お前なのか……!!!!!!!





 そして、こうなってしまった原因は――――










 わ   た   し   …   …   ?





 ――――……ッッ!!!










 「―――ッ……うああああああぁああッッッ!!!!!!!!!!」







 頬に涙の筋がいくつも流れる。



 ドスッ…


 言い表せない悲しみの感情が皇眞を支配する。
 過激ともいえる衝動のまま叫びながら、皇眞は蓮の刀を取って己の甲へと突き刺した。畳に貫通して突き刺さる刀、そして蓮の腕がなくなっているほうと同じ手の甲。




 忘れない、忘れない。
 自分は、この日を―――。


 感覚さえ可笑しくなってしまっていて激痛を感じないそこへ、もう一回甲へと刀を突き刺す。
 思考が鈍る。
 ああ、どうしたらいい。このまま、痛みで何かで繋ぎとめておかないと自分はどうにかなりそうだ。今すぐ、藍園寺に乗り込んで、跡形も無く壊してしまいそうで。きっと自分が息絶えるまで、ずっと。



 誰か、助けてくれ。




 「―――っ……っう……ぁあ」

 嗚咽を噛み殺しながら再度刀を振りかぶって突き立てる。


 ドスッ……


 

 三回目、甲に突き刺したときには酷く惨い様で真っ赤に染まり。

 その痛みと、その数の意味を―――睨みつけながら、皇眞は焼き付ける。
 そうしてその痛みで、動き出そうとする足をなんとか留めて。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――雨の降る日だった、その月に入って三日目のその日。











 白吹家は、“何者か”に襲われ前当主白吹蓮を亡くすという―――国中にも衝撃を与える出来事に襲われた。
関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
総もくじ 3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
総もくじ  3kaku_s_L.png 龍の愛した神子
もくじ  3kaku_s_L.png 東の君
もくじ  3kaku_s_L.png セツナ
総もくじ  3kaku_s_L.png あなたとわたしのこいのはなし。
【痛刻の変革 【弐】】へ  【【短編】痛刻の変革~Side蓮~】へ

~ Comment ~

急展開(ネタバレあり)

はい、……読んでくれた皆様、大丈夫でしょうか?
ここ一番の重たいシリアスなお話でした。

これからの話にいくプロセスとして、これは必要だったかと思います。

皇眞はここから本当の白吹の当主としていろいろなものを背負い、
また支えられていくのだと思います。

もうしばらくシリアスにお付き合いください。

NoTitle

こんばんは(^^)
う〜ん、かなりシリアスなお話ですね。
でも当主としての思いや、部下達の忠誠、お父さんの愛情、誉の執着等々いろんな人たちの心情がよくわかるから、辛いけど大切な場面なんだろうと思います。
与えられる物が大きいほど背負う物も大きいんでしょうけど、それにしても皇眞が背負う物は厳しいですね。

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【痛刻の変革 【弐】】へ
  • 【【短編】痛刻の変革~Side蓮~】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。