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「蓮姫」
~蓮姫~番外編

【短編】痛刻の変革~Side蓮~

 ←痛刻の変革 【参】 →出来るのだ。

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蓮姫本編の第九章痛刻の変革【弐】を既読の上、呼んだほうが内容が分かります。
大丈夫だよ、という方はスクロールを。







Side蓮

護るべきもの



「……あなた……っ、蓮!」

 悲痛そうな表情で己の名を叫ぶ、庇護するべき最愛の女がいた。

 血に塗れた、修羅場をくぐることを決めた、己を全身全霊で愛してくれる唯一の存在。

 まだ幼い娘を抱きかかえて、護るように立つ蓮に向かってただひたすら名前を投げる。

 戦闘を行い、近寄ってくる者は蹴り飛ばして距離を置いた。鬼神のような振る舞いで残虐に剣を振るう蓮に慄いたか、距離を置いた敵たちに笑みを浮かべた。

 「近寄ると、死ぬぞ」

 小型の爆弾を投げつける。
 部屋が壊れるほどまではいかないが、ここにいる敵の数名は葬れる力があるだろう。

 また慄きながら慌てる敵たちに目を細くして見つめ、後ろにある押入れを開いた。

 「入れ」

 有無を言わせぬ圧力で、押入れに妻と娘を押し込む。

 「蓮……!……嫌ですわ、蓮!」

 お嬢様な言葉は昔から抜けないのに、肝だけは据わってしまった雅姫がなおもそう叫んだ。
「とうさま……!」
彩紅もそれと同じように泣き顔でこちらを向いてくる。

 止むを得まい。
 今がどれだけ窮地の状況か。今ここで何よりも護らねばならないのは目の前のこのふたりで、そのためなら命など惜しくはない。
 もとより、最愛のおんなの意思すら捻じ曲げて行ってしまった今回の惨状だ。
 自らのせいで、命を落とす彼女を見るなど御免だ。

 「すまん、」

 それだけ囁いて、彩紅の口元に薬品を塗った布を覆う。意識を失った娘を、雅姫に押し付けて、そのまま押入れの奥へと追いやった。

 「嫌!蓮……っ!」
「雅……!」
「――っ……」

 こんなときにずるい、と雅姫が罵る。

 「こんなときに、……愛称なんて呼ばないで。わかっているわ、どうしようもないって。あなたは一度言ったら曲げない人だもの。でも……っ」
「悪かった、お前の望む男になってやれなくて。それでも俺はお前を愛していたぞ、俺が俺で在れるのは白吹の当主で在れたのはお前のおかげだ。……彩紅と、……桜姫を、頼む」
「ずるい……!……でも、あなたのことはわたくしが一番知ってるもの。あなたがわたしの望むひとよ。わたくしだって愛しているもの」

 後ろでは爆音が響く。
 断末魔も。
 煙があたりに充満して、炎を消す作業に刺客たちは追いやられている。

 一度だけ雅姫を抱き寄せる。唇を重ね合わせて、髪を撫でた。これが、最後だ。深く、もうこの感触を忘れないように、忘れさせないように。深く。申し訳ないという気持ちを込めながら、けれどもう引き返せないから。

 「―――っ」

 この口づけに応えていた雅姫が瞠目する。
 首筋に蓮が刺したその針に気づいたからだろう。ひとを眠らせる毒だ。こんなところで役に立つとは思ってもみなかった。
 自分の腕の中に落ちた彼女の髪を梳いて、寝かせると、――一瞬だけ彼女の顔を見つめてから、押入れを閉めた。

***

 思い出す。
 蓮が彼女に、――この罠を仕掛けると話した日のことを。

 彼女は泣きながら笑った。

 「あなたが大事なのは、白吹ですものね。……でも、嫁いできたときから覚悟はあったわ。あなたは皇眞を護りたいのね、この白吹を護りたいのよね」

 若い頃、互いの気持ちが通じたときに言ったのだ。
 俺の優先順位はきっと白吹だ。他の家とは違う、お前はそれを恐れと取るかもしれない。想いが通じてもどうにもならないこともあるかもしれない。それが怖いなら、傷つくのが嫌なら、ここで別れたほうがお前のためだ。
 それは脅しでも何でもなく、―――こうなることが訪れるかもしれないという示唆だった。
 現に訪れようとしている。

 「あなたは白吹の当主だから」

 「俺が嫌になったか。――お前を顧みずに、子供を護り、白吹を護る。……お前の気持ちを思いやれない俺が」

 そう眉を顰めながら言うと、雅姫が綺麗な笑みで微笑んだ。

 まだ雅姫と出逢ってなかったころ、まだ蓮が白吹の次期当主という立場だったころ――この柚蓮では「美しい姫」と名高い貴族の姫がいた。
 大人しい姫ではなくて、すぐ泣くくせに気丈に振舞う強がりで、怖いはずなのに大丈夫だと言い張って、振り払うように距離を置いた己のあとを傷つきながらもついてきた。
 ひとを殺したあとの血まみれの蓮と邂逅したとき、息を呑んだ彼女は、恐れたはずなのに、こちらをじっと見つめてきた。
『怖いだろう、俺を化物だと思っただろう。お前が追いかけて好きだという俺の正体は、血まみれの殺人鬼だ。これでも、お前は俺の手を取りたいと言うのか。俺なんかの隣に立って、周りから罵られたのか』
冷たい言葉を吐き捨てる蓮に、『それでも』と雅姫は叫んだ。
『それでも!わたくしは知ってる!……あなたが実は優しいってこと!わたくしに触れる手は優しいし、気遣いがあるもの!白吹のかたがたにも信頼されてて、家族のひとたちにも優しいもの!周りが知らなくても、……添い遂げたいと思ったわたくしが知っていればいいのよ……!』
やっぱり泣きながら、気丈に振舞う強がりで。
『なら、俺のこの手を取れるのか。今さっき、何人も殺した俺の手を。――豪奢な服で着飾ってるようなお前が住む世界とは真逆のところにいる俺を、納得させてみろ』
片手には血塗られた刀を持っている。刀身が紅い禍々しいそれだ。空いている血まみれた手を雅姫のほうへと向ける。
『……そんなことで、……あなたが手に入るのなら、わたくしは何だってする』
叫びながら、雅姫は蓮に抱きついてきた。自分がどれだけ誠意を見せられるか、手を取る以上のことをしてそれを示したかったらしい。
 誰の血で汚れたかきっと彼女にはわからないだろう。蓮だって把握できないほどの数を殺してきたのだ。そんな血で汚れきってしまった自分を抱きとめて、そうして奪うように唇をかすめ取った。
『あなたは知っているでしょうけど、もう一度言います。わたくしはあなたが好きです。どんなに反対されようとも、わたくしはあなたの妻になりたいのです。綺麗や美しいなんて褒め言葉よりも、あなたに馬鹿だ世間知らずだって言われながらあなたのそばにいれたほうが嬉しいんです。とにかくあなたのそばにいたいです。あなたが背負う罪を少しでもいいから一緒に背負っていきたいんです。罪に汚れても、それでも強く生きるあなたが好きなの』
反射的に抱きしめていた。―――罪を犯しながら人を殺し続ける自分が好きだと言ってくれる女はもう一生現れない、そう思った。
 そうでなくても傾いていた心が、一気に振り切った。

 そんな過去から、今の今まで――別れることもなく、波乱が起きることもなく、蓮と雅姫のふたりだけは、周りが何と言おうと頑なにお互いだけを見つめていた。
 周りが何を言おうとも、だ。

 「わたくしは、家族を大事にして優しくて強いあなたも好きなんですもの。あの子はまだ本当の意味で分かっていないけど、あなたは皇眞を大事にしている。彩紅だって、使用人の人たちだってあなたは護ってる。――わたくしのことも護ってくれてる」
「俺を優しいなどという馬鹿なお前だけだぞ」
「あなたは分かっていないんですもの、自分がどれだけ優しいか」

 泣きながら笑う。――他の男どもが欲しくて手に入らなかった美姫。今も、彼女を見る瞳が羨望の視線の男はたくさんいる。
 蓮の見た目は、決して綺麗や麗しいとは言えない。どちらかというと精悍や野性的という言葉が合うような男らしい外見である。それでも、綺麗とかいう類ではない別種の顔の整い方をしている見た目が相まってか、怖さが引き立つらしい。それに、筋肉質の身体だけが取り柄だし、目立つ傷は多くある。まめやら傷やらで綺麗なんて言える手ではないし、眼光だけは鋭くなった。体躯はいいし、背も高い。俗に言う「怖い見た目」の自分を、飽きることもなく雅姫は見つめてくるのだ。

 「お前を置いていく俺を許せ」
死ぬ、というその単語を言わないのはその優しさからか。その含みも心得たように、雅姫は微笑んだ。
「あなたのそばにいると決めたときから、そんなの分かってたわ」
泣きながら強がる彼女に「来い」と鋭く一言いった。嬉しそうに、彼女は笑って手を伸ばして腕の中に飛び込んでくる。
「かっこよくて強くて優しくて、不器用だけどちゃんと愛してくれる旦那様で嬉しい。あなたと一緒にいることができて、あなたとの子供が育つのを見るのはきっと幸せなのでしょうね」
「俺をそこまで誇大評価するのはお前だけだ」
体重を預けてくる華奢な身体を抱きしめてやって、なおもそう言い返す。
「頭では分かっているけれど、きっとその時が来たら怖くなるんでしょう。……だけど、分かってる、分かってるわ……。それまで、わたくしに思い出をちょうだいね。離れていても思い出せるくらいに、幸せをちょうだい。あなたをちょうだい。我儘よ、聞いてくれるでしょう?」

 別れを惜しんで、愛を乞うことが我儘だというのなら。
 己はそれを叶えよう。

 「何が欲しい」
力強く抱きしめて、低い声で囁く。怖いくらいの眼光で見つめているはずなのに、嬉しそうに彼女は微笑む。
「あなた」
なら、望むとおりにくれてやる。――腕を回してきた雅姫を抱きとめると、喰らうように唇を重ねる。
 強引で強い力なはずなのに、本当に嬉しそうにされるがままにされている雅姫。そこに確かな自分への愛があるからだと分かっているから、何も言えなくなる。そんなことを考えながら見つめていると、視線が合った彼女はまた嬉しそうに微笑んで。
 なぜ、こんな俺をお前は好きになったのか。
 何年と添い遂げても、彼女の好みがずれているとしか思えない。それでも、今のままの蓮を雅姫が好きだと公言するのなら、自分は自分のままでいられる。
 冷酷でいられて、裏の統率者のままでいられる。心は全て彼女に明け渡しているのだから、どんなに非道になれることか。しかもそんな自分を愛す者がいるのだ。
 その事実を想うと、――胸が痛くなるのは確かだった。

 す、と頬を親指で撫でてやる。

 「――……っ、れん……、……優しいのね、……」
「こんなことで優しいと思えるのか、安いな、お前は」
「ふふ、だって、あなた……絶対に他のひとだったら、……こんなことしないもの」

 頬を撫でた手を取られた。掌に彼女が口づける。
 お前だって俺が相手じゃなければこんなに乱れないだろう、と睨むと彼女は嬉しそうに笑って頷いた。

 「気づいてくれて嬉しいわ。……無粋な男に、誰が素肌を見せるものですか。あなただけよ、最初からずっと。ずっとずっと、好きなの」
誰でもなく血塗られた自分が好きだと言う。――誰よりも近くにいて、残酷な部分も、冷酷な部分も、黒く塗りつぶされた闇の部分も、――きっと嫌だと思った部分も――全て見てきたはずなのに。

 愛おしいと、思った。
 誰のものでもなく、彼女は己のもので。そうして、己が大事だと思うものは何をしてでも護る。
 それが理念だ。
 それが、愛情だ。
 それが、自分が誇るべき思念。

 「……雅、」
「んっ……ふ、……今日は、奉仕してくれるのね。……うれしい、」
「我儘、聞いてくれと言ったのはお前だろうが」
その愛称で呼ばれることを、彼女は何よりも嬉しがっていて。それを蓮も把握している。そしてそれよりも嬉しがる言葉も。
「雅、手を回せ」
「ぁあっ……ん」
「――――雅」
名前を呼び、耳元に唇寄せ――その言葉を囁いてやった。それを聞いた雅姫は嬉しそうに涙をこぼして大きく頷く。そうして「わたくしも」と蓮を引き寄せた。


***

 二陣、三陣と続いた爆音が止んだのち、――蓮は叫ぶ。

 「人質を取りたくば、俺を殺してからにしてもらおう。――だが、お前ら全員の人数でかかったとしても、最後の数名になるまで俺は死なん。俺のあとには、俺が育てた息子がいると思え」

 死なせない。
 大事なものを護るのは、――信念だ。
 そうして必死になっているのは己の意思なのだろう。

 唯一愛しいと思った女はやはり護りたいと思うものだし、そんな彼女との子供ならまた愛しい。何をしてでも護ってやりたくなるのは親心というものだろう。
 冷酷非道な闇の統率者の終わりが、こんなに人間らしいものだとは思わなかった。

 ――所詮、俺も人の子か。

 だが、それもいい。
 白吹、国のためにと生きてきたのが人生なら、――最期くらい家族のために、という我儘くらいは許してくれるだろう。
 皇眞が統率しやすくなるようにと全力で手は打ったつもりだ、さすが己の子とだけ合ってあれほど才能に恵まれた奴はいないと思う。自分がいなくても大丈夫だ、と思えるほどだ。

 すまない、だが、愛していた。

 雅姫も、桜姫も、彩紅も。

 ――俺は、愛している。

 そう思えるひととして残っている心を、冥途の土産として持って行けるだろう。

 ――それに、誇りだと言ってくれたしな。

 嫌われるという意図はなかったが、得てしてそうなってしまっただろう娘が、――自分の知らないところで大人になり、蓮の機微に気づくくらいに大人になったことを実感した。十分、土産にできるものを貰ったのだ。


 「俺を殺すのに何人必要だろうな?――試そうか」


 笑みで人を殺せ、白吹であることを誇りに。――自分が自分であることを誇りに。家族がそれを認めて誇りだと言ってくれるのならば、自分は喜んで汚れたそれへと落ちて行ける。

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~ Comment ~

衝動的に書いたよ(´;ω;`)

厳格だった蓮が、死に際こんなことを思っていたらいいな
厳しくて怖くて冷たい人だったけど、愛した女性だけは特別だったらいいな
と書いてみました。

愛した女性も、その女性との子供も
きっと蓮は大事で大切で愛していたはずです。
彼の言動の全ての根本にはきっと家族があったはず。


それと、
ヤクザみたいな怖い見た目で眼光で射殺せるみたいな、それでもかっこい精悍な男性と
か弱くて麗しすぎるお姫様みたいな容姿の女性の
組み合わせは、高宮大好きです。好み。
そんなふたりの甘いところも書けてよかった。

高宮でした。

おとうさん・・・///

なんですかこれ切ないんですけど・・・・・

切な過ぎて言葉になりません;;

まさに感動するラブシーン・・・!
ごちそうさまでした・・・!

ありがとうございます!こめ返、みいかさんへ

痛刻の変革はシリアスでしたので、
おとうさまにも報われてほしい高宮です。

感動してもらえたのならよかった・・・!
みいかさんの
いかついお父様とうるわしい母様を高宮は見てみたい・・・!
わがままです・・・!

ともあれ、切な系は胸に刺さるものがありますよね・・・泣

高宮
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