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「蓮姫」
第九章 痛刻の変革

痛刻の変革 【伍】

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 月夜たちがいるところに戻ると、皇帝である彼を見た。

 「……もう、法律は決まったのか」
皇眞は月夜へと視線を向ける。
「ああ、決まった。 制定だ。 ―――これでお前がもしばれてしまっても、法律が護ってくれる。 俺も、暁人も、皇宮ではできるかぎりのことはする」
月夜がそう言った。
「………それよりも先に彩紅の捜索だ」
翳った表情のまま皇眞は囁く。 その声音は憎しみを漂わせるもの。
「……だが、」

 「―――皇眞様! ……蓮様の部屋にこんなものが……鍵がかかっているのです。 ……この下にこの置手紙が…」

使用人の女がそう言って、皇眞に木箱とその手紙を渡す。 
「―――……すまない、れんか」
「いえ、では」
その使用人の女は使用人の中の副頭であるひよりの娘である。 れんかがいなくなると、皇眞はその置手紙を見下ろした。

 皇眞へ。

 男性特有の少しだけ悪筆な文字で、そう書かれている。それでも、ちゃんと丁寧にしたためたのだろう走り書きではないもの。
 ―――父様……、あなたは覚悟していた……?
こうやって死ぬことを。
「―――…――…とうさま」

 わたしのせいで命を落としたというのなら、わたしはあなたに何を償えばいいのだろう。

 暗い影を落とした瞳で、皇眞は置手紙の中に挟まれていた鍵で木箱を開ける。

 そこには、三つの手紙があった。

 ひとつは「皇眞へ」
 ひとつは「遺言状」
 ひとつは「皇眞へ譲渡するもの」

 全て蓮の直筆で、そう書かれていた。

***

 手紙を読み終わり、皇眞は月夜たちと皇宮へと戻る。

 
***
 

 遺言状                      

 ここに我が娘、白吹桜姫を白吹の当主にし、白吹蓮の跡を継ぐことを記す。  
 白吹蓮が継続していたもの、所有していたもの、全てを白吹桜姫へと譲渡する。
                   
 白吹蓮 
                    


 「もう、これで、正式に俺は白吹の当主か……」
皇眞は父の悪筆な字を眺めて、小さく呟いた。
「……お前、それ…」
「何だ」
暁人が呟く。
「だから……、その名前」
「白吹桜姫……―――わたしの名前だ」
皇眞は最後のほう声質を変えて、暁人に答える。
「は……」
「今更、もう遅いだろ。父様が遺言に書いてあるということは、ばれる可能性があるということなんだろうな」
女の声のまま、呟いてその遺言状を木箱へとしまう。

 正式に書かれたそれは立派な用紙に書かれていて、綺麗な封に入れてあった。 本当にちゃんとした遺言状なのだ。それに少しだけ胸が痛んで、泣きそうになった。

 お前に譲渡するもの。

 次に見た手紙はそれが書き出しだった。きっと遺言状と対になって、蓮が詳細を書いた手紙なのだろう。



 お前に譲渡するもの。

 遺言状は見ただろうか。
 そこに書かれているものは正式なものであり、誰に何を言われても無視をしろ。それが真実だ。もう、これを読んでいるときにはお前が白吹の当主になっている。
 ひとつ、白吹の当主に代々継がれるピアスだ。
 それはお前のものになり、お前が次の当主に継がせるまで誰かに譲渡することを禁じる。

 ここからは、当主としての言葉ではなく俺の言葉だ。お前に譲渡するものは、考えてみたら色々ある。だから、ここに書き記す。証拠が残るように。
 白吹の家。仲間。部下。俺の残したもの、俺が築いてきたもの。全てお前に譲渡したい。
 そして、白吹の理念。お前に小さい頃から植え付けてきたそれは、今もお前にあるだろうか?
 その理念もお前に譲渡する。 
 この意味、お前は分かるな?
 そして、お前に俺が使っていた刀を譲渡する。
 男が使うものだから、お前には少し扱いづらいかもしれん。だが、お前の二刀流の型は西洋の剣よりも日本刀のほうが合うだろう。切れ味も使い勝手も保障出来るものだ。
 お前に使ってほしい。
 その他に、俺が持っていた武器……その全てもお前に譲渡しよう。好きに使ってくれて構わない。だが、ひとつだけ願うことがあるとすれば、上記に記した俺の愛刀は誰にも渡さずお前の手の内にあってほしい。
 
 お前がここに書き記したものを、有効に使ってくれることを俺は切に願っている。

 白吹蓮



 次の手紙を読んで、皇眞はやっぱり……と、それを確信した。
 父は覚悟していた。死を予期していた。そして、これを書いたのだ。

***


 そして、最後の手紙を見たときに、皇眞は泣くのを堪えるのに苦労した。

 人前では極力泣きたくない。絶対に。弱いところなど、見せられない。当主になったら尚更だ。
 ひたすらに強く気高く。強くある。
 弱音など自分に一切明かさなかった、父のように。

***

 

 そうして、皇眞は再び皇宮へと戻っていった。
 白吹家は信頼できる部下と仲間たち、そして甲珠と珠愛に一旦は任せ、雅姫の世話も頼まなければいけない。

 ―――それから数週間が経ち―――
 
 法律改正を柚蓮国内に、告知。
 男子社会に、女子も進出して良いという内容の改正だった。こうして、柚蓮は兵士・官吏共に、女子の受け入れを開始し、社会に出る女子も日に日に増えることとなる。


 そして、その中で皇眞は―――。
 数日後を目処に、皇帝と烏摩の助けを借り―――白吹本家の内装を一変。
 皇眞は正式な白吹の当主となり、前代未聞の十代という若さの当主就任だった。だが、その血筋と特優隊という強さの確固たる証拠。その威厳、高貴さ。白吹という名の威力と裏表の隙の無い脅威さにより、それは暗黙の了解として承諾することになった。



 そして、皇眞は自身から明かすことにしたのである。


 自分が“女”であるということを。



 ―――敵側の目的を裏返すために。そして、蓮の言うとおりに、自分自身として強く生きるために。
 まだそれができるかは分からない。
 きっと不安になる。

 だが、蓮は期待してくれている。

 皇眞は自分自身を恨み、憎しむ気持ちは消えることなどないだろうが、それでも生きるのだ。
 この不安定な世界の中で。

 ―――父様、……わたしは……。


 今まで隠してきた“自分”で、父様が護ってきてくれた“自分”で生きてみようと思う。

 その手紙は、父らしい書き出しで始まった。 最初に「皇眞へ」とやっぱり丁寧に書かれている。あの厳格な蓮がこれを丁寧に書いて、真剣に考えているところを想像すると笑ってしまうが、それも泣き笑いだ。
 
 父は最期までやっぱり父だった。
 偉大な“白吹蓮”だったのだ。 
 


 「―――父様……」

 殺風景な部屋に、何個かものが増えた。
 一つ目は机の上の父の手紙が眠る木箱。 そして、父の愛刀と刀数本。

 それだけだが、十分だと思った。

 「とうさま……」

 自分を苦しいほど痛めつける悲しみはかなり大きいものなのだとしばらく経ってから自覚する。
 形見となってしまったそれを見て、今自分は泣いているのだから。





 皇眞へ



 これは、俺が俺としてお前にやる手紙だ。 誰にも見せぬように読んでくれ。



 お前は何故、こうなってしまったのか、今はまだ真相を掴めていないだろう。
 これから話すことは真実だが、決してお前のせいではない。 それだけは言っておく。
 これは全て俺がしたことで、俺の責任だ。

 俺はお前を護るために、お前を男の皇眞として教育し、今までを過ごしてきた。
 理由は白吹の後継者がいなかったということもある。 だが、女としてのお前の存在を周りが道具として見るのが許せなかったということもあるのだ。お前は嫡子の長女で、白吹の一番の権限を持つ子供になるからな。
 だが、お前を俺の理由で、白吹の当主としての意見で、皇眞として育ててきたことを後悔したこともあった。
 そうしてこの前、お前が皇眞に自分の意志でなると言い、俺を誇りと言ったが、俺は心底嬉しかった。
 
 俺はお前を、息子で、娘だと思っている。
 皇眞も、桜姫も、俺は誇りに思っているんだ。
 死んでも尚、それは後悔しないだろう。 これからやろうとしていることの後悔も全くない。


 だから、この情報が入ったときに、俺は苛立った。 当主としてではなく、お前の父として。
 藍園寺が、桜姫を狙っているという情報だったからだ。
 もとより、酔狂な奴だと思っていたが強行手段でのお前を奪うという情報だった。 それはもう、藍園寺がお前に接触したときだったから、焦ったのを覚えている。
 そして、藍園寺は東宮と手を組んだ。 
 これは、白吹の刺客が集めた情報だから、間違いはない。
 藍園寺か東宮の刺客がお前の身を狙うかもしれない。
 俺はそれだけは何としてでも避けたかった。
 お前は自分の意志で当主になると言ってくれ、そしてお前は皇帝と結ばれている。 お前が皇帝と好き合っているということは様子を見ても、わかっていたからお前の幸せだけは奪いたくなかったというのも本音だ。
 俺が二家に対してやったことを簡潔に話す。
 まず、両家に「本家に皇眞がいる」という偽の情報を流し、本家へと刺客を仕向けさせる。 お前はその時には皇宮にいるはずだ。 絶対に出くわすことはないだろうと確信している。
 そして数日後にここへと来るだろう。 お前を奪いに。
 藍園寺の目的はお前の身柄で、東宮の目的は俺とお前の命だ。 両家は利害関係だけだろうが、侮れない相手だ。
 皇帝にこれを今言わないのは、俺も所詮は人の子で……国よりも娘のほうが大事だったということらしい。
 今まで当主として生きてきた。 死ぬ理由くらい娘のためでも罰は当たらんだろう。
 
 きっと最悪の事態になるだろう。 そのつもりで俺はいる。
 もしかしたら、俺も予期しない、思わぬ事態になってしまうかもしれない。

 後悔はしない。


 だが、もし後悔するのだとしたら、……予期せぬ方向へと行き、お前の手を煩わせてしまうことだろう。


 

 お前に重荷を背負わせるになる。
 お前に、憎しみを感じさせ、復讐を教えることになるかもしれない。
 だが、それを消せるよう少しずつでいいから努力してほしい。 決して、憎しみに支配されないでほしい。
 お前は器用だが自分には無関心だから、できないかもしれない。
 それでも、お前には努力してほしい。 少しでも、幸せに生きれるように。

 俺の勝手で、お前を振り回す……良い父親になれなかった俺を許せ。


 だが、お前には大切な人ができた。 仲間もいて、家族もいて、部下もいて、友もいて、護りたいものが見えてきただろう。
 何が必要で、何が駄目なことか分かっているはずだ。
 お前は泣いているだろうか? 悲しんでいるだろうか?
 だが、それでも、前へ突き進め。
 今度は、皇眞ではなく桜姫として表に立つことになろうとも。



 どんなことにも負けないように強く育てた。
 お前には感情が欠けているところもあるが、人を惹きつけるものも持っている。

 

 この手紙を読んでいるときは、俺がいない時だ。
 だから、尚も俺は言う。


 お前はお前の手で強く生きろ。 悲劇を乗り越え、強く育て。 誇り高く、気高くあれ。

 桜姫、お前を愛し、祈り見守っている。 


 父より
 

  
 
 
 
 
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~ Comment ~

もう少しで

第九章・痛刻の変革、これにて終わりです。
次回は第十章へと進んでいきます。話も佳境になり、もう少しで蓮姫も終わりになることでしょう。
もうしばらくお付き合いください。
よろしければこれからもコメントをくださると嬉しいです。

蓮姫も決着に向けて、覚悟を決めました。

次はグランディアをこーしんしようかなぁ……。

高宮でした。

NoTitle

拍手の方のコメントにも書きましたけど、私の亡父もかなり厳格だったので、皇眞のように思っていた時もありましたけど、自分が親になって初めて厳しくすることがどれだけ難しいかや、その裏にある父の愛情を理解できた気がします。
皇眞も厳しく育てられたからこそ余計『最期に国ではなくて娘をとった』なんて言われて、たまらないでしょうね。生きてる間にいろいろ話したかったでしょうけど、切ないですね。

dada様へ拍手こめ返!

拍手のコメのほう、ただいませ読ませていただきました~!
気が付かなくてすいませんん!!泣
最近忙しくてチェックする暇があまりなかったものですから…!
今度からはこまめにチェックしますね!

いや、誤字の指摘もありがとうございます。
時間がありましたら徐々に修正させていただきます(^^)
いや、わたしの書いているもので逆に不快にさせてたら申し訳ありません。無理して読まないでくださいね!汗
高宮の作品に無理して読む価値はありません!はい!笑
コメントは嬉しいです、大歓迎です///駄文の励みになっております///

そして、以下拍手こめ返をまとめてさせてもらいます~

短編のほうですと、本編でさらわれてるのは彩紅だけなんです。
はい。わたしの文章表現の力量が足りませんでしたね・・・笑
書き直します・・・笑
(子供のほうが人質にしやすいからっていう)
なので雅姫は無事なわけですね。
あの戦いの合間にあった数分を短編で書いてますので、
インスピレーションで申し訳ありません 汗

ルシュド編のほうも、だんだん甘くなってゆきます。
楽しみにしていてくださいませ。

蓮姫はこれから・・・そうですね、戦いに入っていきますね・・・
シリアスで申し訳ないのですが・・・でも必ず報われます!

すいません!これからは拍手もちゃんと確認いたしますね!
不快にさせてたら申し訳ありませんっ(>Д<)泣
読んでくださっていたら幸いです。
更新がんばっていますー。

高宮

こちらこそ(^^:

こんにちは。
こちらこそ忙しいのに何カ所もチェックさせてしまったようですみません(><)
言わないでもいいかな〜と思ってたんですけど、もし他にコメントされた方がいたらと思ったので、あえて書かせてもらいました。
すみません(><)
でも悪いことを書いちゃったかと気になっていたので安心しました。
だから高宮さんももう気にしないでくださいね(^^)
短編の?は続きを読んで納得できたので、次を待ってれば良かったなと反省してたところでした(^^;
表現力がないなんてとんでもない!
心情が伝わってくるからここまで共感できるんですし、私の事はそこまで深刻じゃないので、全然不快なんかじゃないです。
不快どころか、主人公がどうなっていくのか楽しんでます。
これからも読むのを楽しみにしてますね〜(^^)/
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